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講義13:【国会】国会の地位と権能|衆議院の優越・国政調査権を徹底解説

行政書士試験の憲法は「人権」と「統治」の2本柱で構成されていますが、統治分野の中で最初にして最大のテーマが「国会」です。

「国権の最高機関」という地位の意味や、複雑な衆議院の優越(再可決は3分の2以上?過半数?)のルール、そして国会議員の特権など、暗記すべき数字や要件が多く、正確な知識が合否を分けます。

今回は、国会の地位・組織・権能から議員の特権まで、試験で問われる重要ポイントを整理して解説します。

1. 国会の地位(憲法41条・43条)

憲法41条は、国会を「国権の最高機関」であり「唯一の立法機関」と定めています。

(1) 「国権の最高機関」の意味

これは国会が内閣や裁判所よりも法的に上位にあることを意味するわけではありません(三権分立)。
通説(政治的美称説)では、国民を代表する国会が「国政の中心的地位を占める」ことを強調する政治的表現にすぎないと解されています。

(2) 「唯一の立法機関」の意味

ここには2つの意味が含まれます。

  • 国会中心立法の原則:国会以外の機関は立法を行えない(例外:議院規則、最高裁規則など)。
  • 国会単独立法の原則:国会の議決だけで法律は成立し、他の機関の関与を必要としない(例外:地方自治特別法の住民投票)。

2. 衆議院の優越(超重要!)

衆議院と参議院の議決が一致しない場合、衆議院の意思を優先させる仕組みです。試験では、この「要件」の違いが頻出です。

(1) 衆議院の優越まとめ表

項目 衆議院での再可決 両院協議会 自然成立の期間
法律案 出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立 任意(開かなくてもよい) 衆議院可決後60日以内
予算 (再可決の制度なし)
衆議院の議決が国会の議決となる
必要的(必ず開く) 衆議院可決後30日以内
条約の承認 同上 必要的 衆議院可決後30日以内
首相指名 同上 必要的 衆議院指名後10日以内
💡 覚え方のコツ

「法律案だけが特殊」と覚えましょう。
法律案だけは「再可決」が必要で、両院協議会は「任意」、期間は「60日」と長めです。
それ以外(予算・条約・首相指名)は、必ず両院協議会を開き、それでもダメなら衆議院の議決で決まります。

(2) 衆議院のみの権限

  • 予算の先議権(60条1項):予算は必ず衆議院に先に提出しなければなりません。
  • 内閣不信任決議(69条):参議院には認められていません(問責決議に法的効果なし)。

3. 国会の権能と議院の権能

(1) 弾劾裁判所の設置(国会の権能)

非行のあった裁判官を辞めさせるかどうかを判断するため、国会議員で構成される弾劾裁判所を設置します(64条)。これは裁判所ではなく国会の権能です。

(2) 国政調査権(議院の権能)

各議院(衆・参それぞれ)は、国政に関する調査を行い、証人の出頭や記録の提出を求めることができます(62条)。

  • 性質:議院の活動(立法など)を助けるための「補助的権能」と解されています。
  • 範囲:司法権に対しても、裁判の公正を害しない範囲(立法目的や予算審査など)であれば調査可能です。

4. 国会議員の特権

議員が活動しやすくするための3つの特権があります。

(1) 不逮捕特権(50条)

国会の会期中は、原則として逮捕されません。
例外(逮捕される場合):

  1. 院外における現行犯の場合(国会法33条)
  2. その院の許諾がある場合

(2) 免責特権(51条)

議院で行った演説・討論・表決について、院外で責任を問われません。
※民事責任・刑事責任を問われないという意味です。

💡 地方議員にはあるか?

地方議会議員には免責特権はありません(最大判昭42.5.24)。国会議員だけの特権です。

(3) 歳費受給権(49条)

国庫から相当額の歳費を受けます。裁判官と異なり、「在任中減額されない」という保障はありません。


5. 実戦問題にチャレンジ

問1:衆議院の優越
衆議院の優越に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 法律案について、参議院が衆議院と異なる議決をした場合、必ず両院協議会を開かなければならず、意見が一致しないときに初めて衆議院での再議決を行うことができる。
2. 予算について、参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院は参議院がこれを否決したものとみなすことができる。
3. 条約の承認について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、両院協議会を開いても意見が一致しないときは、直ちに衆議院の議決が国会の議決となる。
4. 内閣総理大臣の指名について、衆議院と参議院が異なった指名の議決をした場合、法律案の場合と同様に、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再議決すれば、衆議院の指名した者が指名されたものとなる。
5. 法律案について、参議院が衆議院の可決した案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に議決しないときは、自然成立となり、衆議院の可決した案が法律となる。
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正解 3

解説:

1. 誤り。法律案の両院協議会は「任意」です。開かずに再議決することも可能です。

2. 誤り。予算の自然成立期間(30日)が経過した場合は、「衆議院の議決が国会の議決」となります(否決とみなすのではありません)。「否決とみなす」のは法律案(60日ルール)の場合です。

3. 正しい。条約承認において両院協議会が不調に終われば、衆議院の議決が国会の議決となります(再議決は不要)。

4. 誤り。首相指名には再議決の制度はありません。両院協議会不調の場合は、直ちに衆議院の議決が優先されます。

5. 誤り。法律案の60日ルールでは、参議院が「否決したものとみなす」ことができます。自然成立するわけではなく、その後、衆議院での再可決が必要です。

問2:国会議員の特権
国会議員の特権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例または通説に照らして妥当なものはどれか。

1. 憲法50条の不逮捕特権は、国会議員の身体の自由を保障するために、いかなる場合であっても会期中は逮捕されないことを定めた絶対的な特権である。
2. 院外における現行犯の場合であっても、国会議員を逮捕するためには、所属する議院の許諾が必要である。
3. 会期前に逮捕された議員については、所属する議院からの要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
4. 憲法51条の免責特権は、国会議員の発言の自由を保障するためのものであるから、地方議会の議員についても、その職務の重要性に鑑み、条理上同様の特権が認められる。
5. 国会議員が議院内で行った演説が、個人の名誉を毀損する内容であったとしても、免責特権により、当該議員が所属する政党や国が国家賠償責任を負うことは一切ない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。現行犯や院の許諾がある場合は逮捕されるため、絶対的な特権ではありません。

2. 誤り。院外の現行犯であれば、院の許諾なしに逮捕可能です。

3. 正しい。憲法50条後段の規定通りです。

4. 誤り。判例は、地方議会議員には免責特権は及ばないとしています(最大判昭42.5.24)。

5. 誤り。議員個人は免責されますが、その職務行為が違法であれば、国が国家賠償責任を負う可能性はあります(札幌税関検査事件判決など)。

問3:国政調査権
各議院の国政調査権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 国政調査権は、国会が国権の最高機関であることから導かれる独立の権能であり、立法や予算審議とは無関係に、国政全般について広く調査を行うことができる。
2. 国政調査権の行使として、証人の出頭や証言を求めることができるが、正当な理由なくこれに応じない者に対して刑罰を科すことまでは認められていない。
3. 司法権の独立を侵害しないよう、裁判所が審理中の事件については、その裁判の基礎となる事実関係や法解釈について調査することは一切許されない。
4. 検察権の行使については、行政権に属する事項であるため国政調査権の対象となるが、捜査の秘密や起訴・不起訴の判断に不当な政治的圧力を加えるような調査は許されない。
5. 国政調査権は、衆議院と参議院が合同で行使しなければならない権能であり、各議院が単独で行うことは憲法上予定されていない。
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正解 4

解説:

1. 誤り。国政調査権は、議院の権能(立法など)を実効的に行使するための「補助的権能」であるとするのが通説です。

2. 誤り。議院証言法により、出頭拒否や偽証には刑罰が科されます。

3. 誤り。「一切許されない」わけではありません。裁判の内容に干渉する目的でなければ、司法行政や立法目的での調査は可能です(浦和充子事件など)。

4. 正しい。検察権も行政作用の一種なので調査対象ですが、準司法的な作用としての独立性を害するような調査には限界があります。

5. 誤り。憲法62条は「両議院は、各々国政に関する調査を行い」としており、単独で行使できます。

5. まとめと学習アドバイス

今回は国会の重要論点について解説しました。

  • 衆議院の優越:法律案だけが「再可決」が必要。他は「両院協議会」が必須。期間(60日・30日・10日)を暗記する。
  • 不逮捕特権:「院外現行犯」と「院の許諾」の2つの例外を覚える。
  • 免責特権:地方議員にはない。

国会分野は数字(日数や定足数、議決数)の暗記が多いですが、表にまとめて整理すれば確実に得点できる分野です。「法律案」と「予算・条約」の違いを意識して復習してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 衆議院の再可決の要件「3分の2」は、総議員ですか?出席議員ですか?
A. 「出席議員」の3分の2以上です(59条2項)。憲法改正の発議(総議員の3分の2)と混同しやすいので注意してください。
Q. 「みなす」と「なる」の違いは何ですか?
A. 法律案の60日ルールでは、参議院が「否決したものとみなす」ことができます(その後、衆議院で再可決が必要)。一方、予算などの30日ルールでは、衆議院の議決がそのまま「国会の議決となる」(自動的に成立)という違いがあります。
Q. 弾劾裁判所は国会の一部ですか?
A. 国会が設置しますが、国会からは独立した機関として職務を行います。国会の閉会中も活動できます。
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