PR

講義14:【内閣】内閣の組織と権能|7条解散や総辞職のタイミングを完全解説

ニュースで連日報道される「内閣」の動きですが、いざ憲法の試験問題となると、「国務大臣の過半数が国会議員であればよい?」「条約の承認は事前か事後か?」といった細かい知識の正確さが問われます。

行政書士試験の統治分野において、内閣は国会と並ぶ出題の山場です。特に「内閣の組織要件」「総辞職のタイミング」、そして「衆議院の解散権」に関する解釈は、過去問でも繰り返し問われている重要論点です。

今回は、内閣の仕組みと権能について、条文知識と判例・通説を整理し、確実に得点につなげるためのポイントを解説します。

1. 内閣の組織と構成員

内閣は、首長たる内閣総理大臣と、その他の国務大臣で組織される合議体です(憲法66条1項)。

(1) 文民統制(シビリアン・コントロール)

まず大前提として、内閣総理大臣および国務大臣は、「文民」でなければなりません(66条2項)。

💡 文民とは?

職業軍人ではなく、かつて軍国主義思想に染まっていない人のことを指します。自衛隊の制服組(自衛官)が現職のまま大臣になることはできません。

(2) 内閣総理大臣と国務大臣の違い

両者の要件や選ばれ方には明確な違いがあります。試験で狙われやすいポイントです。

項目 内閣総理大臣 国務大臣
資格 必ず国会議員であること 過半数が国会議員であればよい
(民間からの登用も可能)
選び方 国会の議決で指名 内閣総理大臣が任命
天皇の関与 天皇が任命(親任式) 天皇が認証(認証官)
辞めさせ方 (国会による不信任など) 首相は任意に罷免できる

※天皇の認証とは、人事決定の効力要件ではなく、手続が正当に行われたことを公証する行為です。認証が遅れても就任自体は有効ですが、認証を経ることが必須とされています。

2. 行政権と内閣の権能

憲法65条は「行政権は、内閣に属する」と定めています。

(1) 行政権の定義と独立行政委員会

「行政権」とは何かについて、通説は「控除説」(国家作用から立法と司法を除いた残り全て)を採っています。

ただし、公正取引委員会や人事院のような「独立行政委員会」の存在が、内閣の指揮監督を受けない点で65条に反しないかが問題となります。これについては、内閣に任命権や予算権があることからコントロール可能であり、合憲と解されています。

(2) 内閣の主な事務(憲法73条の例示列挙)

内閣が行う事務として、73条に以下の項目が例示列挙されています。特に赤字の部分が試験のポイントです。

  • 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
  • 外交関係を処理すること。
  • 条約を締結すること。
    ※ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  • 法律の定める基準に従い、官吏(公務員)に関する事務を掌理すること。
  • 予算を作成して国会に提出すること。
  • 政令を制定すること。
    ※ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  • 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権(恩赦)を決定すること。
    ※決定は内閣が行い、その認証は天皇が行います。
💡 条約承認の法的効果

条約について国会の事後承認が得られなかった場合、その効力はどうなるでしょうか?
通説(条件付無効説)は、条約承認権が相手国にも周知されているような場合には、国際法的にも無効になると解しています。

3. 内閣総理大臣の権能

内閣総理大臣は「内閣の首長」として強力な権限を持ちます(72条など)。

  • 国務大臣の任免権:自分の判断で自由に大臣をクビにできます。
  • 指揮監督権閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督します。
  • 法律・政令への連署:主任の大臣が署名した後、首相が連署します。

4. 議院内閣制と内閣の責任

内閣は、行政権の行使について「国会に対し連帯して責任」を負います(66条3項)。これを議院内閣制といいます。ここでの責任は、法的な責任ではなく政治的な責任を指します。

内閣総辞職のタイミング(超重要)

内閣が総辞職しなければならないのは、以下の3つのケースです。記述式でも問われる重要知識です。

  1. 内閣総理大臣が欠けたとき(死亡、国会議員でなくなった時など)。
  2. 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき。
  3. 衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案が否決され、10日以内に衆議院が解散されないとき。

※総辞職した後も、次の首相が任命されるまでは、「引き続きその職務を行う」義務があります(71条)。行政の空白を作らないためです。

5. 衆議院の解散権

衆議院の解散は誰が決めるのでしょうか?

解散権の所在(7条解散)

憲法69条は、内閣不信任決議案が可決された場合の解散について定めていますが、それ以外の理由で解散できるか(69条限定説か否か)が論点となります。

通説・実務は、「69条に限定されない」と考えます。憲法7条3号が天皇の国事行為として「衆議院を解散すること」を定めており、これに対して内閣が助言と承認を行うことから、実質的な決定権は内閣だけにあると解されます(7条解散)。


6. 実戦問題にチャレンジ

問1:内閣の組織
内閣の組織に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 内閣総理大臣および国務大臣は、文民でなければならず、かつ、その全員が国会議員でなければならない。
2. 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名され、天皇によって認証される。
3. 国務大臣は、内閣総理大臣によって任命されるが、その任免にあたっては天皇の認証を必要とする。
4. 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができるが、そのためには閣議での全会一致の決定が必要である。
5. 内閣総理大臣が欠けたときは、直ちに内閣は総辞職しなければならず、後任の総理大臣が任命されるまでの間は、国務大臣が輪番でその職務を代行する。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 誤り。国務大臣は「過半数」が国会議員であればよく、全員である必要はありません。

2. 誤り。内閣総理大臣は天皇によって「任命」されます(認証ではありません)。

3. 正しい。国務大臣の任免には天皇の認証が必要です(7条5号)。

4. 誤り。国務大臣の罷免権は内閣総理大臣の専権事項であり、閣議にかける必要はありません(68条2項)。

5. 誤り。総辞職後も、次の内閣総理大臣が任命されるまで、現在の内閣が引き続き職務を行います(71条)。

問2:内閣の権能
憲法73条が定める内閣の事務に関する記述として、妥当なものはどれか。

1. 条約を締結することは内閣の権能であるが、事前に国会の承認を経る必要があり、事後の承認は認められていない。
2. 予算を作成して国会に提出することは内閣の権能であるが、国会は提出された予算を自由に修正・増額することができる。
3. 政令を制定することは内閣の権能であるが、この政令には、法律の委任がある場合を除き、国民の権利を制限し義務を課す規定や罰則を設けることはできない。
4. 恩赦の決定は内閣の権能であり、その効力を生じさせるために天皇の認証を経る必要はない。
5. 外交関係を処理することは内閣の権能であるが、外交使節の任免については内閣総理大臣の専権事項とされている。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 誤り。条約の承認は「時宜によっては事後に」でも可能です。

2. 誤り(※)。予算の修正権については議論がありますが、予算作成権が内閣にある以上、同一性を損なうような大幅な修正はできないとする説が一般的です。ただし、本問の正解は3であるため、比較して判断します。

3. 正しい。政令には、法律の委任がなければ罰則を設けられません(73条6号)。また、権利制限等の実体的規定も委任が必要です。

4. 誤り。恩赦の認証は天皇の国事行為です(7条6号)。

5. 誤り。外交官等の任免の認証は天皇の国事行為です(7条5号)。

問3:衆議院の解散と総辞職
内閣の総辞職および衆議院の解散に関する次の記述のうち、通説・判例に照らして妥当なものはどれか。

1. 衆議院で内閣不信任決議案が可決された場合、内閣は直ちに総辞職しなければならず、衆議院を解散するという選択肢をとることはできない。
2. 内閣総理大臣が死亡した場合には、内閣は総辞職しなければならないが、この場合、衆議院の解散を行う余地はない。
3. 内閣による衆議院の解散権の行使は、憲法69条所定の場合(不信任決議可決時)に限定され、それ以外の理由による解散(7条解散)は憲法違反である。
4. 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、たとえ同一の人物が再び内閣総理大臣に指名される見込みであっても、内閣は総辞職しなければならない。
5. 参議院において内閣問責決議案が可決された場合、法的拘束力はないものの、憲法上の慣習として内閣は総辞職すべき義務を負う。
正解・解説を見る

正解 4

解説:

1. 誤り。10日以内に衆議院を解散すれば、総辞職を回避できます(69条)。

2. 誤り。解散権は内閣に属するため、総理死亡により内閣総辞職となる場合、職務執行内閣が解散を行えるかという論点はありますが、通説は総辞職すべきとしています。ただし、選択肢4が明らかに正しい条文知識です。

3. 誤り。通説・実務は69条限定説をとらず、7条による解散を認めています。

4. 正しい。特別会の召集時に内閣は必ず総辞職します(70条)。

5. 誤り。参議院の問責決議に法的効果はなく、総辞職義務も生じません。

7. まとめと学習アドバイス

今回は内閣の仕組みについて解説しました。

  • 構成員:国務大臣の過半数は国会議員。全員文民。
  • 73条の事務:政令の罰則には法律の委任が必要。条約は事後承認もOK。
  • 総辞職:「欠けたとき」「特別会召集時」「不信任で解散しないとき」の3つを暗記。

特に「天皇の国事行為(7条)」と「内閣の権能(73条)」のひっかけ問題は定番です。「任命」なのか「認証」なのか、「決定」なのか「公布」なのか、主語を意識して条文を読み込みましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 「内閣総理大臣が欠けたとき」とは具体的にどういう場合ですか?
A. 死亡した場合、国会議員の資格を失った場合、辞職した場合などです。病気入院などは、臨時代理を置けばよいので「欠けたとき」には当たりません。
Q. 7条解散とは何ですか?
A. 憲法69条(不信任決議)以外の理由で衆議院を解散することです。憲法7条3号の「天皇の国事行為としての解散」に内閣が助言と承認を与えることで、実質的に内閣が解散を決定できるという解釈に基づいています。
Q. 内閣総辞職の後、国務大臣はどうなるのですか?
A. すぐに家に帰れるわけではありません。憲法71条により、次の内閣総理大臣が任命され、組閣が完了するまで「引き続きその職務を行う」義務があります。
タイトルとURLをコピーしました