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講義1:【商法】商人の定義と商行為の3分類を完全攻略

「商法・会社法は範囲が広い割に配点が低いから捨てようかな…」

そんなふうに考えていませんか?実は、商法(特に総則・商行為法)は、条文知識がそのまま得点に直結しやすい「コスパの良い」分野です。ここを確実に押さえておくと、合否を分けるあと数点を拾うことができます。

今回は、商法の入り口である「商法の適用対象」「商行為の種類」「商人の定義」について解説します。特に、民法とは異なる商法独特のロジック(取引の迅速性や外観の保護)を理解することがカギです。

2026年度試験合格に向けて、具体例を交えながら基礎をガッチリ固めていきましょう!

1. 商法の全体像と適用順位

まずは、商法がどのような場面で使われる法律なのか、その立ち位置を確認しましょう。

(1) 民法の特別法としての商法

商法は、民法の「特別法」です。これは、一般法である民法よりも優先して適用されることを意味します。

民法は、市民間の対等な関係(例:隣同士のトラブル、親族間の相続)を規律しますが、商法は「企業活動(ビジネス)」を対象としています。ビジネスの世界では、何よりも「スピード(迅速性)」と「取引の安全(定型化)」が重視されるため、民法の原則を修正するルールが多く存在します。

(2) 法の適用順位(商法1条2項)

商事(商人の営業や商行為)に関し、裁判やトラブル解決においてどのルールを優先して使うかという順位は、以下のようになります。

  1. 商法(商事特別法を含む)
  2. 商慣習(法律ではないが、ビジネス界の常識・慣習)
  3. 民法
💡 学習のポイント:商慣習の優越

ここで重要なのは、「商慣習」が「民法」よりも優先されるという点です。ビジネスの現場では、「法律(民法)にはこう書いてあるけど、この業界では昔からこうやって決済している」という慣習(ルール)が尊重されます。これを「商慣習法」と呼びます。

2. 商行為の種類(絶対的・営業的・附属的)

商法が適用されるきっかけとなるのが「商行為」です。「商行為」とは、営利性のある行為のことですが、商法ではこれを以下の3つに分類しています。

ここが試験の頻出ポイントです。それぞれの違いを具体例でイメージできるようにしましょう。

種類 条文 特徴 キーワード
絶対的商行為 501条 誰が行っても商行為になる 投機的、高度な営利性
営業的商行為 502条 営業として行う場合に商行為になる 反復継続性
附属的商行為 503条 商人が営業のためにする行為 補助的活動

(1) 絶対的商行為(誰がやっても商法適用!)

絶対的商行為とは、その行為自体の性質が極めて営利性が高いため、商人が行おうが、普通の公務員や学生が行おうが、たった1回行っただけでも商法が適用される行為です。

主な例は以下の通りです。

  • 投機購買・実行行為:安く買って高く売る目的で、動産・不動産・有価証券を取得し、それを譲渡する行為。
    (例:転売目的で土地を購入する)
  • 取引所における取引:証券取引所などでの取引。
  • 商業証券に関する行為:手形や小切手の振出しなど。
💡 注意:不動産も対象

かつては不動産は対象外でしたが、法改正により「不動産」の投機的取引も絶対的商行為に含まれています。古い過去問を解く際は注意してください。

(2) 営業的商行為(商売としてやるなら商法適用!)

営業的商行為とは、行為自体はそこまで投機的ではないものの、「営業として(=利益を得る目的で、反復継続して)」行う場合に商行為とされるものです。

例えば、「友人の引越しを車で手伝って謝礼をもらう」だけなら商行為ではありません。しかし、「運送業として依頼を受けて荷物を運ぶ」のであれば、それは営業的商行為(運送に関する行為)となります。

  • 賃貸する意思で取得した動産・不動産の賃貸
  • 製造・加工に関する行為
  • 電気・ガスの供給
  • 運送
  • 請負(作業・労務)
  • 出版・印刷・撮影
  • 場屋(じょうおく)取引(ホテル、飲食店など客を集める場所での取引)
  • 銀行取引、保険、寄託の引受け など

具体例:パン屋のAさんの場合

Aさんが自宅で趣味でパンを焼き、近所に配るのは商行為ではありません。
しかし、Aさんが「Aベーカリー」を開業し、継続的に利益を得る目的(営業として)でパンを製造・販売するなら、それは「製造・加工に関する行為」として営業的商行為になります。

💡 ここが試験に出る!

個人の農家や画家の活動はどうなるでしょうか?
これらは、自らの労働や技術がメインであり、投機性が低いため、原則として営業的商行為には当たりません(後述の「擬制商人」で重要になります)。

(3) 附属的商行為(商売の準備も商行為!)

附属的商行為とは、本来の営業活動(パンを売るなど)そのものではないけれど、その営業を助けるために行う行為のことです。

商法503条には強力な推定規定があります。

  • 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
  • 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する

具体例:パン屋のAさんの「借金」

パン屋のAさんが、銀行から開業資金100万円を借りました。お金を借りる行為自体は「銀行取引」でも「製造」でもありません。
しかし、これはパン屋という「営業のため」に行う行為なので、附属的商行為として商法が適用されます。

「推定する」という規定があるため、もしAさんが「これは個人的な借金だ(商行為ではない)」と主張したければ、Aさん側が「これは娘の学費のための借入です」といった証拠を出して反証しなければなりません。

3. 商人の定義(固有・擬制・小商人)

次に、商法の主役である「商人」について解説します。「商人」には2つのタイプがあります。

(1) 固有の商人(商法4条1項)

以下の3つの要件を満たす者を「固有の商人」と呼びます。

  1. 自己の名をもって
  2. 商行為(基本的商行為)をすることを
  3. 業とする者

①「自己の名をもって」とは?

これは「店長の名前で」とか「屋号(店名)で」という意味ではありません。「その行為から生じる権利義務の帰属主体になる」という意味です。

例えば、親の代理として店番をしている子供が商品を売った場合、権利義務(代金をもらう権利、商品を引き渡す義務)は親に帰属します。この場合、「自己の名をもって」商売をしているのは親であり、商人は親です。

②「商行為」とは?

ここでは、前述した「絶対的商行為」や「営業的商行為」を指します。

③「業とする」とは?

「営利の目的を持って、反復継続して行う」ことを意味します。

(2) 擬制商人(商法4条2項)

ここが独学者がつまずきやすいポイントです。
本来の意味での「商行為」を行っていなくても、「設備」や「形態」に着目して、商人とみなされる(擬制される)ケースがあります。

種類 要件 具体例
店舗設備による擬制 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者 農家が直売所(店舗)を設けて野菜を売る場合
鉱業による擬制 鉱業を営む者 鉱山会社(※鉱業自体は商行為として列挙されていないが、大規模経営のため商人とみなす)
💡 原始産業(農林水産業)の扱い

農業・林業・漁業などの「原始産業」は、自然の恵みを収穫するものであり、安く買って高く売るような投機性が薄いため、その行為自体は「商行為」ではありません。
したがって、農協に出荷しているだけの農家は「商人」ではありません。
しかし、「店舗」を構えて販売する場合は、取引の外観が商売人そのものであるため、取引相手保護のために「擬制商人」として扱われます。

(3) 小商人(適用除外)

商人であっても、営業用財産が50万円未満のような極めて小規模な商人を「小商人(こあきんど)」といいます。
小商人には、商法の一部の規定(商業登記、商業帳簿、支配人など)が適用されません。零細事業者に重い負担をかけないための配慮です。

4. 商人資格と制限行為能力者

未成年者や成年被後見人であっても、商人になることは可能です。ただし、取引の安全を守るために特別なルール(登記)が設けられています。

未成年者登記・後見人登記

民法では、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が必要ですが、商売の世界でいちいち親の同意書を確認するのは非効率です。
そこで、商法では以下のように定めています。

  • 未成年者:法定代理人から「営業の許可」を得れば、成人と同じ能力を持つ(民法上の規定)。さらに、商法上は「未成年者登記」をしなければならない。
  • 成年被後見人:後見人が被後見人のために営業を行う場合、「後見人登記」をしなければならない。

この「登記」があることで、取引相手は「ああ、この未成年者はちゃんと許可を得てビジネスをしているんだな」「この人は後見人がついているんだな」と確認でき、安心して取引ができるわけです。


5. 実戦問題で理解度チェック!

ここまでの解説をもとに、行政書士試験レベルのオリジナル問題に挑戦してみましょう。

問1:商行為の種類
商行為に関する次の記述のうち、商法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1. 商人が営業のためにする行為は、商行為であるとみなされるため、反証を挙げてこれを覆すことはできない。
2. 公務員であるAが、投機利益を得る目的で土地を購入し、これをBに売却する契約を結んだ場合、Aは商人ではないため、この行為には商法は適用されない。
3. 事業者が、その従業員のために保養所として使用する目的で建物を購入する行為は、附属的商行為として商法が適用される。
4. 弁護士がその職務として行う法律事務の処理は、報酬を得て行うものであっても営業的商行為には当たらない。
5. パン屋を営む商人が、友人とのプライベートな旅行のためにレンタカーを借りる行為についても、商人の行為である以上、商行為と推定される。
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正解 4

解説:

1. 誤り。「みなされる」ではなく「推定される」です(商法503条2項)。推定規定なので、反証があれば覆ります。

2. 誤り。投機目的での不動産の売買は「絶対的商行為」です(商法501条)。絶対的商行為は、行為者の身分(公務員かどうか)にかかわらず、1回行っただけでも商法が適用されます。

3. 誤り。判例(最判昭36.12.15)は、福利厚生施設としての不動産購入については、営業活動そのものではないとして附属的商行為性を否定しています(ただし、学説では肯定説も有力であり、試験的には微妙ですが、「当然に適用される」とする選択肢は疑うべきです。ここではより明確な4が正解)。※この肢は少し難易度が高いですが、近年の傾向として「営業のためにする」の範囲の解釈が問われることがあります。

4. 正しい。弁護士や医師などの「自由職業人」の活動は、営利性よりも公益性や職能的性質が強いため、商法上の「商人」には当たらず、その職務も商行為ではないと解されています。

5. 誤り。商人の行為は営業のためにするものと推定されますが、明らかにプライベートな行為(家族旅行など)であることが立証されれば、その推定は破られ、商行為とはなりません。

問2:商人の定義
商人の定義に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア. 「自己の名をもって」とは、自己が当該商行為から生じる権利義務の帰属主体となることを意味し、必ずしも商号(店名)を使用することを意味しない。
イ. 農業を営む者が、収穫した農作物を販売するために店舗を設けたとしても、農業は原始産業であるため、その者は商法上の商人とはみなされない。
ウ. 資本金100万円の株式会社は、その事業として商行為を行わない場合であっても、商法上の商人である。
エ. 屋台でたこ焼きを販売することを業とする者は、店舗設備を有していないため、いかなる場合も商人とはならない。
オ. 鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としなくても、商法上の商人とみなされる。

1. ア・ウ・オ
2. ア・エ
3. イ・ウ
4. イ・エ・オ
5. ウ・オ
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正解 1

解説:

ア. 正しい。固有の商人の要件である「自己の名をもって」の説明として正しいです。

イ. 誤り。農家であっても、「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする」場合は、擬制商人として扱われます(商法4条2項)。

ウ. 正しい。会社法上の会社(株式会社など)は、商行為を業として行うかどうかにかかわらず、その事業そのものが商行為とされ(会社法5条)、商人としての性質を持ちます。

エ. 誤り。屋台であっても、物品の販売を「業として(営利目的+反復継続)」行っていれば、「固有の商人」に該当する可能性があります。設備による「擬制商人」にならなくても、行為の性質から「固有の商人」になる道はあります。

オ. 正しい。鉱業を営む者は、商行為(絶対的・営業的)を行っていなくても、民事会社であっても商人とみなされます(擬制商人)。

以上より、正しい記述はア、ウ、オです。

問3:未成年者登記
未成年者の営業に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

1. 未成年者が商売を行う場合、法定代理人の許可を得ていれば、未成年者登記を行わなくても第三者に対してその営業行為の効力を対抗できる。
2. 未成年者が法定代理人から営業の許可を受けた場合、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有するものとみなされる。
3. 未成年者の法定代理人が、未成年者に代わって営業を行う場合、その旨の登記(後見人登記等)をする必要はない。
4. 未成年者が行った商行為についてトラブルが生じた場合、未成年者登記がなければ、相手方が悪意であっても未成年者は制限行為能力を理由に取り消すことができる。
5. 未成年者登記は、未成年者本人が単独で申請することはできず、必ず法定代理人が申請しなければならない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。登記をしなければ、その事項(営業許可など)を善意の第三者に対抗できません(商法9条)。ただし、効力自体は民法上の許可があれば生じます。

2. 正しい。民法6条1項により、営業を許可された未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有します。

3. 誤り。後見人が被後見人のために営業を行うときは、後見人登記が必要です(商法6条1項)。

4. 誤り(論点として)。登記は「対抗要件」です。未成年者登記がなされていない場合、未成年者側は「自分は商人としての能力がある(許可を受けている)」という特殊な地位を善意の第三者に主張できませんが、逆に制限行為能力取消しについては民法の一般原則に戻ります。ただし、許可がある以上、能力は擬制されています。この選択肢は少し複雑ですが、より明確に正しい肢2を選ぶべきです。

5. 誤り。営業の許可を受けた未成年者は、その営業に関しては成年者と同様の能力を持つため、登記申請も自ら行うことができます。

6. まとめ

商法の基礎である「適用対象」「商行為」「商人」について解説しました。ポイントを整理します。

  • 商法はビジネスの法律。「商慣習」が民法より優先される。
  • 商行為には、誰がやっても商行為になる「絶対的商行為」、営業としてやるならなる「営業的商行為」、商売の補助である「附属的商行為」がある。
  • 農家や漁師も、店舗を構えれば「擬制商人」になる。
  • パン屋の借金のように、一見商売に見えない行為も「推定」規定により商行為となる。

商法は「誰を守ろうとしているのか(=取引の相手方)」を常に意識すると、条文の意味が理解しやすくなります。

次回は、商人を助ける重要なパートナーである「商人の補助者(支配人・代理商)」について詳しく解説します。支配人の権限や、競業避止義務など、ここも記述式で狙われやすい重要論点です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 行政書士試験で商法は何問出題されますか?
商法・会社法合わせて全5問(20点分)出題されます。そのうち商法総則・商行為法からは例年1問程度が出題されますが、会社法の基礎知識としても重要です。
Q2. 固有の商人と擬制商人の違いは何ですか?
「固有の商人」は商行為を業として行う者を指します。「擬制商人」は、商行為を行っていなくても、店舗設備を設けて物品販売をする者や鉱業を行う者を、商人とみなす制度です。
Q3. 小商人(こあきんど)の基準と免除される義務は?
営業用財産が50万円未満の商人を指します。商業登記、商号、商業帳簿に関する規定や、支配人の選任義務などが適用除外となります。

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