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講義2:【商法】商人の補助者を完全攻略!支配人・代理商・問屋の違いとは?

「商法は条文が少なくて楽勝だと思っていたのに、『支配人』やら『代理商』やら似たような用語が出てきて混乱する…」

そんな悩みを抱えていませんか?
商法の中でも「商人の補助者」は、毎年のように出題される超重要分野です。特に、「誰がどのような権限を持っているのか」「商人本人とどのような関係にあるのか」を正確に理解していないと、本試験のひっかけ問題で足元をすくわれます。

今回は、商人の右腕となる「支配人」から、外部の協力者である「代理商」「問屋」「仲立人」まで、その役割と法的ルールを網羅的に解説します。

法律用語の暗記ではなく、「なぜそのようなルールが必要なのか(制度趣旨)」を理解することで、記憶の定着率を劇的にアップさせましょう!

1. 商人の補助者の全体像

商人がビジネスを拡大しようとすると、一人では手が回りません。そこで、手助けをしてくれる「補助者」が必要になります。
商人の補助者は、大きく以下の2つのグループに分かれます。

💡 2つのグループの違い

① 商業使用人(内部の補助者)
商人に雇用され、組織の中で従属して働く人たちです。
(例:支配人、部長、店員など)

② 代理商・その他の補助者(外部の補助者)
商人からは独立した存在(別の個人事業主や会社)でありながら、外部から商人をサポートする人たちです。
(例:代理商、問屋、仲立人)

まずは、内部の補助者である「商業使用人」のトップ、支配人から見ていきましょう。

2. 支配人(最強の商業使用人)

支配人とは、商人に代わって営業全般を取り仕切る、いわば「雇われ社長」や「支店長」クラスの人物です。
彼らは非常に強力な権限を持っています。

(1) 支配人の選任と包括的代理権

商人は、支配人を選任し、その本店または支店において営業を行わせることができます(商法20条)。

包括的代理権(商法21条1項)

支配人は、その営業所の営業に関し、一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します。

  • 裁判上の行為:会社を代表して訴訟を起こしたり、訴えられたりすること。
  • 裁判外の行為:商品の仕入れ、販売、従業員の採用・解雇、手形の振出し、借金など。

つまり、支配人は「営業に関しては、ほぼオーナーと同じことができる」と考えてください。

💡 制度趣旨:なぜこれほど強力な権限があるのか?

取引のたびに「社長に確認します」と言っていたら、ビジネスのスピードが落ちてしまいます。取引相手も「支店長(支配人)と契約すれば大丈夫だ」と信じて安心して取引ができるように、法律で強力な権限を与えているのです。

代理権の制限(善意の第三者対抗要件)

商人が支配人に対して、「お前は借金だけはするな」と代理権を制限することは可能です。
しかし、その制限を知らない(善意の)第三者には対抗できません(商法21条3項)。

【具体例でイメージしよう】
商人Aは、Bを支配人に選任し、「100万円以上の取引は私の許可を得ること」と命じました。しかし、Bはこの命令を無視して、何も知らないC社から500万円の商品を仕入れました。
この場合、Aは「Bには権限がなかった」と言って支払いを拒否できるでしょうか?
答えはNoです。C社は善意(制限を知らない)なので、保護されます。Aは代金を支払わなければなりません。

(2) 表見支配人(ニセモノだけど本物扱い?)

本当は支配人として選任・登記されていないのに、「支店長」「営業所長」といった、いかにも支配人らしい肩書き(名称)を与えられた使用人を「表見(ひょうけん)支配人」といいます(商法24条)。

表見支配人は、相手方が悪意(支配人でないことを知っていた)の場合を除き、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するとみなされます。

項目 真実の支配人 表見支配人
権限の範囲 裁判上・裁判外の一切 裁判外の一切
制度趣旨 営業の円滑化 外観法理(紛らわしい名称をつけた商人の責任)
相手方の要件 問わない(制限は善意に対抗不可) 善意であること(悪意なら保護されない)
💡 注意点:「裁判上の行為」は含まれない!

表見支配人には、訴訟などの「裁判上の行為」をする権限までは認められません。ここは試験でよくひっかけられるポイントです。「裁判外」だけです。

(3) 支配人の義務(競業避止義務など)

支配人は強力な権限を持つため、裏切られないように厳しい義務が課せられています。
商人の許可なく、以下の4つの行為をしてはいけません(商法23条1項)。

  1. 自ら営業を行うこと(自ら商人になること)
  2. 自己または第三者のために、商人の営業の部類に属する取引をすること(競業避止義務)
  3. 他の商人、会社、外国会社の使用人となること
  4. 他の会社の取締役・執行役・業務執行社員となること

もし違反して競業取引(上記2)を行った場合、その行為自体は有効ですが、商人は支配人に対して損害賠償請求ができるほか、「介入権(奪取権)」を行使できます。

介入権とは:
その取引によって支配人が得た利益を、「商人が得たもの」とみなす権利です(商法23条2項)。「裏切り行為で儲けた金は没収するぞ」という強力なペナルティです。

3. その他の使用人

支配人以外にも、商人を助ける従業員(商業使用人)にはいくつかのランクがあります。

(1) ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人

一般的に、「部長」や「課長」と呼ばれる人たちです(商法25条)。
彼らは、任された特定の事項(例:人事部長なら人事に関すること、購買課長なら仕入れに関すること)について、一切の裁判外の行為をする権限を持ちます。

(2) 物品の販売等を目的とする店舗の使用人

デパートやスーパーの「店員(カウンターにいる人)」のことです(商法26条)。
彼らは、その店舗にある物品の販売等について権限があるとみなされます。
いちいち「レジ係に販売権限があるか?」を確認しなくて済むための規定です。

【重要まとめ:商業使用人の権限比較】

種類 具体例 権限の範囲
支配人 支店長 営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為
ある種類の委任を受けた使用人 部長・課長 担当事項に関する一切の裁判外の行為
物品販売店舗の使用人 店員 店舗にある物品の販売等に関する権限

4. 代理商(外部のパートナー)

ここからは「外部の補助者」です。
代理商とは、「商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その使用人でないもの」をいいます(商法27条)。

ポイントは「独立した商人である」という点です。雇用関係はありません。

【具体例:保険代理店】
損害保険会社A(本人)のために、街中で保険契約を勧誘・締結しているB店(代理商)。
B店はA社の社員ではなく、独立した経営者です。

(1) 代理商の種類

  • 締約代理商:本人の代わりに契約を結ぶ権限がある(代理権あり)。
  • 媒介代理商:契約の橋渡しをするだけで、契約締結権限はない(媒介のみ)。

(2) 代理商の義務(競業避止義務など)

代理商も商人の内部事情に通じているため、支配人と同様に「競業避止義務」などを負います(商法28条)。
本人の許可なく、同種の取引をしたり、ライバル会社の取締役になったりしてはいけません。

(3) 代理商の権利

独立した商人なので、当然報酬をもらえますが、それ以外にも特有の権利があります。

  • 通知を受ける権利:契約の代理・媒介をしたら、遅滞なく本人に通知を発しなければなりません(義務でもあります)。
  • 留置権(商法31条):本人が報酬を払ってくれない場合、代理商は本人のために持っている物や有価証券を留置(人質に取る)ことができます。弁済期が到来していることが条件です。

(4) 代理商契約の終了

代理商契約は、お互いの信頼関係が基礎にあります。

  • 契約期間の定めがない場合:
    2ヶ月前までに予告すれば、いつでも解除できます。
  • やむを得ない事由がある場合:
    期間の定めの有無にかかわらず、いつでも直ちに解除できます。

5. その他の商人の補助者(問屋・仲立人)

最後に、「問屋」と「仲立人」について解説します。
この2つは似ていますが、「誰の名前で」「誰の計算(費用・利益)で」取引をするかが決定的に違います。

(1) 問屋(といや)

問屋とは、「自己の名をもって、他人のために(他人の計算で)物品の販売または買入れをすることを業とする者」をいいます(商法551条)。
典型例は「証券会社」です。

【具体例:株取引】
投資家X(委託者)が、Y証券(問屋)に「A社株を買ってくれ」と注文しました。
Y証券は、証券取引所で「Y証券の名前」でA社株を買います。
しかし、その株を買うお金や、株の値上がり益は「X(他人)の計算」に帰属します。
最終的にY証券はXに株を引き渡します。

問屋のポイント

  • 権利義務の帰属:相手方との契約の当事者はあくまで「問屋」です。したがって、権利義務はいったん問屋に帰属し、その後委託者に移転します。
  • 介入権(商法555条):取引所相場がある物品の場合、問屋は自分で売主や買主になることができます(自分で買って、それを委託者に渡す)。

(2) 仲立人(なかだちにん)

仲立人とは、「他人間の商行為の媒介をすることを業とする者」です(商法543条)。
いわゆるブローカーです。

【具体例:不動産仲介に近いイメージ】
※厳密には宅建業法が適用されますが、構造は同じです。
売主Sと買主Bの間に入って、「買いませんか?」「売りませんか?」と紹介し、SとBの間で契約を成立させます。
仲立人自身は契約当事者にはなりません。

仲立人の義務(結約書の交付)

契約が成立したら、仲立人は遅滞なく、契約内容を記載した書面(結約書)を作成し、当事者双方に交付しなければなりません。

報酬請求権:
結約書の交付などの手続きが終わった後でなければ、報酬を請求できません(商法550条)。なお、報酬は当事者双方が半額ずつ負担するのが原則です(民法の委任とは違う点!)。

6. 3者の比較まとめ表(試験に出る!)

ここが一番混乱しやすいので、表で整理して覚えましょう。

種類 名義(誰の名前で?) 計算(誰の利益?) 契約当事者 具体例
代理商 本人の名で(代理) 本人 本人 保険代理店
問屋 問屋の名で 委託者(他人) 問屋 証券会社
仲立人 (媒介するだけ) 当事者 当事者同士 商品仲買人

7. 実戦問題で理解度チェック!

知識を定着させるために、本試験レベルの問題を解いてみましょう。

問1:支配人と表見支配人
商人の支配人に関する次の記述のうち、商法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1. 支配人の代理権に加えた制限は、その旨を登記したとしても、善意の第三者に対抗することはできない。
2. 商人が、ある使用人に「○○営業所長」という名称を使用させた場合、その使用人が支配人としての登記を経ていなくても、相手方が善意であれば、当該営業所の営業に関する一切の裁判上および裁判外の行為をする権限を有するものとみなされる。
3. 支配人は、商人の許可を受けなければ、自ら営業を行うことができないが、他の会社の取締役になることについては、競業避止義務の対象外であり、自由に行うことができる。
4. 支配人が商人の許可なく競業取引を行った場合、商人は、当該取引によって支配人が得た利益の額を、商人に生じた損害の額と推定して損害賠償を請求することができる。
5. 表見支配人の制度は、商人が使用人に支配人と類似の名称使用を許諾したという外観に対する信頼を保護するものであるため、相手方が重過失によりその使用人が支配人でないことを知らなかった場合でも、相手方は保護される。
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正解 4

解説:

1. 誤り。支配人の代理権の制限は、善意の第三者に対抗できません(商法21条3項)。登記事項ではないため、「登記しても」という記述自体が不適切ですが、いずれにせよ善意者には対抗不可です。

2. 誤り。表見支配人に認められるのは「裁判外」の行為のみです。「裁判上」の行為(訴訟など)は含まれません(商法24条)。これが最も頻出のひっかけです。

3. 誤り。他の会社の取締役になることも、商人の許可がなければ禁止されています(商法23条1項4号)。いわゆる「精力分散防止義務」です。

4. 正しい。競業避止義務違反の効果として、損害額の推定規定があります(商法23条2項)。なお、介入権(利益を商人のものとみなす権利)を行使することも可能です。

5. 誤り。表見法理の一般原則として、相手方に「悪意または重過失」がある場合は保護されないとするのが判例の傾向ですが、商法24条の条文上は「相手方が悪意であったとき」を除き責任を負うとされています。ただし、学説・判例上、相手方の重過失を悪意と同視する見解が有力です。本肢は「重過失でも保護される」と言い切っている点が妥当性を欠きます。

問2:代理商の権利義務
代理商に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1. 代理商は、商人のために取引の代理または媒介を行ったときは、直ちにその旨を商人に通知しなければならない。
2. 代理商契約において契約期間を定めなかった場合、当事者は2週間前までに予告をすれば、いつでも契約を解除することができる。
3. 代理商は、取引の媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来していなくても、商人のために占有する物または有価証券を留置することができる。
4. 代理商は、商人の許諾を得なくても、自己のみの計算において、商人の営業の部類に属する取引を行うことができる。
5. 代理商は、独立した商人であるため、特約がない限り、契約終了後も競業避止義務を負うことはない。
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正解 5

解説:

1. 誤り。「直ちに」ではなく「遅滞なく」です(商法27条)。細かいですが、法律用語では意味が異なります。

2. 誤り。期間の定めがない場合の解除予告期間は「2ヶ月前」です(商法30条1項)。2週間ではありません。

3. 誤り。商事留置権の成立要件として、債権の「弁済期が到来していること」が必要です(商法31条)。

4. 誤り。代理商には競業避止義務があります。自己の計算であろうと、商人の許諾なく競業取引を行うことはできません(商法28条1項)。

5. 正しい。競業避止義務は、契約関係にある間の義務です。契約終了後は、職業選択の自由があるため、原則として競業避止義務は消滅します(特約で縛ることは可能)。

問3:問屋と仲立人
問屋および仲立人に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。

1. 問屋は、他人のために物品の販売または買入れをすることを業とする者であり、自己の名をもって取引を行う。
2. 問屋が委託者の指定した金額よりも低い価格で物品を販売した場合、問屋がその差額を負担したとしても、その売買は委託者に対して効力を生じない。
3. 仲立人は、その媒介に係る行為が成立したときは、遅滞なく、当事者の氏名または名称等を記載した結約書を作成し、各当事者に交付しなければならない。
4. 仲立人は、原則として、当事者のために支払その他の給付を受けることができない。
5. 仲立人の報酬は、当事者間に別段の定めがない限り、当事者双方が等しい割合で負担する。
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正解 2

解説:

1. 妥当。問屋の定義通りです(商法551条)。

2. 妥当でない(誤り)。問屋が指値(指定金額)に違反して安く売ったり高く買ったりしても、問屋自らがその差額を負担するときは、その売買は委託者に対して効力を生じます(商法554条)。委託者に損をさせないなら有効にするという規定です。

3. 妥当。結約書の交付義務に関する規定です(商法546条)。

4. 妥当。仲立人はあくまで「紹介屋」であり、契約当事者や代理人ではないため、代金の受領権限はありません(商法544条)。

5. 妥当。仲立人の報酬は双方平分が原則です(商法550条2項)。

8. まとめ

今回は、商人の活動を支える様々な「補助者」について解説しました。
最後に学習の優先順位を整理します。

  1. 支配人:権限(裁判上もOK)、表見支配人(裁判外のみ)、義務違反の効果(介入権)。これらは絶対確実にしておくこと。
  2. 代理商・問屋:定義の違い(誰の名で?誰の計算で?)。問屋の介入権や指値違反の処理。
  3. その他の使用人:部長・課長クラスと店員クラスの権限の違い。

商法は、細かい条文知識がそのまま得点になります。「なんとなく」ではなく、「この場合はこうなる」と条文を根拠に判断できるよう、表を使った整理学習を繰り返してください。

次回は、商法のもう一つの柱である「商行為(商事売買・商事留置権など)」について深掘りしていきます。合格まで一緒に頑張りましょう!

よくある質問(FAQ)

Q1. 表見支配人と表見代理の違いは何ですか?
基本的な考え方は同じ(外観法理)ですが、表見支配人は商法独自の規定です。最大の違いは、表見支配人には「裁判上の行為(訴訟など)」の権限は認められない点です。民法の表見代理は代理権の範囲内であれば裁判上の行為も対象になり得ます。
Q2. 問屋(といや)と代理商の決定的な違いを一言でいうと?
「契約当事者になるかならないか」です。問屋は自分自身が売主・買主として相手方と契約しますが、代理商はあくまで本人(商人)の代理または媒介をするだけで、契約当事者にはなりません。
Q3. 商業使用人の競業避止義務は退職後も続きますか?
原則として続きません。雇用契約が終了すれば、職業選択の自由により競業避止義務は消滅します。ただし、特約(誓約書など)で退職後の競業を禁止することは可能ですが、その場合も期間や場所などの合理的な制限が必要です。

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