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【基礎法学】裁判所の種類と管轄|判決・決定・命令の違いを徹底解説

行政書士試験の基礎法学では、法律の条文だけでなく、日本の司法制度そのものに関する知識も問われます。

特に「どの事件をどの裁判所が担当するのか(管轄)」や、「判決と決定は何が違うのか」といったテーマは、憲法や民事訴訟法の基礎知識としても非常に重要です。

今回は、複雑に見える裁判所の仕組みと、紛争解決のプロセスについて、試験に出るポイントに絞って整理していきます。ここを理解しておくと、後に行政事件訴訟法などを学ぶ際にもスムーズに頭に入ってきますよ。

1. 争いの解決方法(民事と刑事)

法的なトラブルが発生した際、その性質によって解決手続きが異なります。まずは大きく「民事」と「刑事」の違いを押さえましょう。

種類 当事者 目的
民事訴訟 私人 vs 私人
(例:被害者と加害者)
私法上の権利義務の確定、損害賠償の請求など。
(お金や物の貸し借りのトラブル等)
刑事訴訟 国家(検察官) vs 被告人 犯罪の認定と、刑罰(懲役や罰金など)の決定。
💡 補足:ADR(裁判外紛争解決手続)

裁判は時間や費用がかかるため、裁判所を使わずに第三者機関(交通事故紛争処理センターなど)を通じて和解を目指す方法もあります。これをADRと呼びます。

2. 裁判所の種類と役割

日本の裁判所は、最高裁判所と4種類の下級裁判所で構成されています。それぞれの特徴と担当する事件(管轄)を整理します。

(1) 裁判所の種類一覧

裁判所名 主な役割・特徴 裁判官の人数
簡易裁判所
  • 民事:訴額140万円以下の軽微な事件
  • 刑事:罰金以下の軽い罪
  • 少額訴訟:60万円以下の金銭請求(原則1回で結審)
1人
家庭裁判所
  • 家事事件:離婚、相続などの調停・審判
  • 少年事件:非行少年の審判
原則1人
(一部合議体)
地方裁判所
  • 原則的な第1審裁判所
  • 例外:簡易裁判所の民事判決に対する控訴審(第2審)を担当
原則1人
(重大事件は3人)
高等裁判所
  • 原則的な第2審(控訴審)裁判所
  • 内乱罪については第1審となる
3人(合議体)

(2) 三審制の例外(地裁が第2審になるケース)

日本は原則として「三審制」を採用していますが、スタート地点(第1審)がどこかによってルートが変わります。

  • 通常ルート:地裁(1審)→ 高裁(2審)→ 最高裁(3審)
  • 簡裁スタート(民事):簡裁(1審)→ 地裁(2審)→ 高裁(3審)
💡 学習のポイント

「地方裁判所は常に第1審である」という選択肢が出たら誤りです。簡易裁判所からの民事控訴事件については、地方裁判所が第2審(控訴審)を担当します。

(3) 最高裁判所の仕組み

憲法で「唯一の終審裁判所」と定められ、違憲立法審査権を行使する最後の砦です。

  • 大法廷:裁判官全員(15人)。憲法判断を変える場合などに開かれる。定足数は9人以上。
  • 小法廷:5人の裁判官で構成。通常の事件はここで審理。定足数は3人以上。

【裁判官の意見の分類】
最高裁の判決書には、各裁判官の意見を表示することができます。

  • 多数意見:判決の結論となった意見。
  • 補足意見:多数意見に賛成だが、自分の見解を追加したもの。
  • 意見:結論は多数意見と同じだが、理由づけが異なるもの。
  • 反対意見:結論自体が多数意見と異なるもの。

3. 裁判の形式上の区別(判決・決定・命令)

裁判所が出す判断には、重要度や手続きの厳格さに応じて3つの種類があります。ここも試験でよく問われるポイントです。

種類 主体 口頭弁論 内容・特徴
判決 裁判所 必要(原則) 事件の最終的な判断(「被告は原告に〇〇円支払え」「懲役〇年に処する」など)。
公開法廷での言い渡しが必要です。
決定 裁判所 不要 手続き上の判断や、迅速性が求められる事項(「訴えを却下する」「証拠調べを開始する」など)。
当事者の主張を聞く手続き(審尋)などは行われますが、公開の口頭弁論は必須ではありません。
命令 裁判官 不要 裁判所(組織)としてではなく、個々の裁判官が行う判断。
(例:裁判所からの呼び出し状など)
💡 注意点

「判決」と「決定」はどちらも主体が「裁判所」ですが、「命令」だけは主体が「裁判官」である点に注目しましょう。


4. 実戦問題にチャレンジ

問1:裁判所の種類と管轄
裁判所の管轄および制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 簡易裁判所は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない民事訴訟および罰金以下の刑に当たる刑事訴訟の第1審を担当するが、禁錮以上の刑を科すことは一切できない。
2. 少額訴訟制度は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として1回の審理で判決が出されるが、同一の簡易裁判所において利用できる回数に制限はない。
3. 家庭裁判所は、家事事件や少年事件を担当するほか、夫婦間の紛争に関する人事訴訟も担当する。
4. 地方裁判所は、すべての事件について第1審裁判所として機能し、控訴事件(第2審)を担当することはない。
5. 高等裁判所は、地方裁判所または家庭裁判所の判決に対する控訴事件のみを担当し、第1審として裁判を行うことはない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。簡易裁判所は原則として禁錮以上の刑を科せませんが、一定の場合(刑法130条の罪など)には「3年以下の懲役」を科すことができます。

2. 誤り。少額訴訟は、同一の簡易裁判所において「年10回」までという回数制限があります。

3. 正しい。以前は人事訴訟(離婚訴訟など)は地方裁判所の管轄でしたが、法改正により家庭裁判所が担当することになりました。

4. 誤り。地方裁判所は、簡易裁判所の民事判決に対する控訴事件(第2審)を担当します。

5. 誤り。高等裁判所は、内乱罪等については第1審として裁判を行います。

問2:最高裁判所の機構
最高裁判所に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1. 最高裁判所は、長官1人と14人の判事の計15人の裁判官で構成される。
2. 最高裁判所の審理は、全員で構成する大法廷と、5人の裁判官で構成する小法廷で行われる。
3. 過去の判例を変更する場合や、法律が憲法に適合するかどうかを判断する場合には、原則として大法廷で審理しなければならない。
4. 大法廷を開くためには9人以上の裁判官の出席が必要であり、小法廷を開くためには3人以上の裁判官の出席が必要である。
5. 最高裁判所の裁判書において、多数意見と結論は同じであるが、その理由付けが異なる意見を「補足意見」という。
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正解 5

解説:

1. 正しい。憲法および裁判所法の規定通りです。

2. 正しい。小法廷は3つあり、各5名で構成されます。

3. 正しい。重要な憲法判断や判例変更は大法廷マターです。

4. 正しい。定足数は大法廷9人、小法廷3人です。

5. 誤り。結論は同じだが理由(法的根拠)が異なる意見は「意見」と呼ばれます。「補足意見」は、多数意見に賛成しつつ、自身の見解を追加的に述べたものを指します。

問3:裁判の形式
裁判の形式(判決・決定・命令)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 「判決」は、事件の終局的な判断を示すものであり、必ず口頭弁論に基づかなければならないが、刑事訴訟においては口頭弁論を経る必要はない。
2. 「決定」は、訴訟指揮などの付随的事項について裁判所が行う判断であり、口頭弁論を経ることは必須ではない。
3. 「命令」は、裁判所がその合議体として行う簡易な裁判であり、個々の裁判官が単独で行うものではない。
4. 判決の告知は、判決書の送達によって行われ、公開の法廷で言い渡す必要はない。
5. 民事訴訟において、訴えの却下は、門前払いの判断であるため、常に「決定」の形式で行われる。
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正解 2

解説:

1. 誤り。判決は原則として口頭弁論が必要であり、これは刑事訴訟(公判)でも同様です。

2. 正しい。決定は、迅速性が求められる事項などについて行われ、口頭弁論は必須ではありません(任意で行うことは可能)。

3. 誤り。命令は、裁判所(組織)ではなく、「裁判官(個人)」が主体となって行うものです。

4. 誤り。判決は、原則として公開法廷での「言渡し」によって告知されます。

5. 誤り。訴えの却下は、訴訟要件の欠如を理由とする「終局判決」の一種であり、「判決」で行われます(命令や決定ではありません)。

5. まとめと学習のアドバイス

今回は「裁判所」と「裁判の形式」について解説しました。

  • 裁判所:簡裁の訴額制限(140万)や地裁が第2審になる例外ルートを押さえる。
  • 最高裁:大法廷・小法廷の定足数や、意見の種類(補足意見と意見の違い)を区別する。
  • 裁判形式:「判決(口頭弁論あり)」「決定(口頭弁論不要・裁判所)」「命令(裁判官)」の違いを整理する。

これらの知識は、基礎法学だけでなく、民事訴訟法や憲法(統治機構)の学習でも頻繁に登場します。「どっちだったかな?」と迷ったら、またこの記事の表を見返してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 少額訴訟の60万円という基準は重要ですか?
A. 重要です。簡易裁判所の通常管轄である「140万円」と、少額訴訟の「60万円」は数字のひっかけ問題が出やすい箇所ですので、正確に暗記しましょう。
Q. 「決定」と「命令」の違いがいまいち分かりません。
A. 誰が行うか(主体)で区別するのが一番早いです。「裁判所(組織・合議体)」が行えば決定、「裁判官(個人)」が行えば命令です。どちらも簡易な手続きで口頭弁論が不要な点は共通しています。
Q. 基礎法学で行政訴訟は出ますか?
A. 出題される可能性はありますが、内容は「行政法」の行政事件訴訟法で詳しく学びます。基礎法学の段階では、「民事とは別に、行政と国民の争いを裁く手続きがある」と知っておくだけで十分です。
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