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【基礎法学】審級制度と司法制度改革|裁判員・検察審査会・ADRを完全解説

行政書士試験の基礎法学において、条文の知識と同じくらい重要なのが「日本の司法制度」に関する仕組みです。

「裁判は3回まで受けられる(三審制)」という基本は知っていても、「簡易裁判所からスタートした民事事件の控訴先はどこ?」「検察審査会で『起訴相当』が出たらどうなる?」といった細かいルールまで正確に把握できていますか?

今回は、複雑な審級制度の流れと、試験で頻出の司法制度改革(検察審査会、裁判員制度、法テラス)、そしてADR(裁判外紛争解決手続)について、図表を使って整理します。一般知識(政治・経済・社会)の対策としても有効ですので、しっかりと押さえておきましょう。

1. 審級制度(三審制の仕組み)

日本の裁判所は、誤った判決を防ぎ、人権を守るために原則として「三審制」を採用しています。しかし、すべての事件が同じルートをたどるわけではありません。

(1) 事実審と法律審の違い

審理の内容には、以下の2つの段階があります。

  • 事実審:事実認定(何があったか)と、法律の適用(有罪か無罪か等)の両方を行う審理。
  • 法律審:前の裁判(原判決)に、憲法違反や法令解釈の誤りがないかだけをチェックする審理。原則として新たな証拠調べは行いません。
段階 民事事件 刑事事件
第1審 事実審 事実審
第2審(控訴審) 事実審(続審)
※1審の続きとして新証拠も出せる
事後審(原則)
※1審の判決が正しかったかを判断する
第3審(上告審) 法律審 法律審

(2) 審級のルート(どこへ控訴・上告するか)

ここが試験のひっかけポイントです。スタート地点(第1審)によって、その後の行き先が変わります。

① 原則ルート(地裁スタートなど)

地裁・家裁・簡裁(刑事)高裁(控訴) → 最高裁(上告)

② 例外ルート(簡裁の民事スタート)

訴額140万円以下の民事事件などは簡易裁判所から始まりますが、その控訴先は「地方裁判所」になります。

簡裁(民事)地裁(控訴) → 高裁(上告)

💡 注意点

簡易裁判所の事件でも、「刑事事件」の場合は原則通り「高裁」へ控訴します。「民事」の場合だけ「地裁」へ控訴するという違いを区別しましょう。

2. 市民の司法参加(検察審査会・裁判員制度)

司法への信頼を高めるため、一般市民が司法手続きに参加する制度が導入されています。

(1) 検察審査会(起訴のチェック機能)

検察官が持っている「公訴権(起訴するかどうかの決定権)」に対する民主的なコントロール機関です。

  • 構成:選挙権を持つ国民からくじで選ばれた11人
  • 対象:検察官がした不起訴処分の当否。
  • 強制起訴の仕組み
    1. 検察審査会が「起訴相当」と議決。
    2. 検察官が再検討するが、再度「不起訴」とした場合。
    3. 検察審査会が2回目の「起訴相当」議決(起訴議決)を行う。
    4. 裁判所指定の弁護士が、検察官に代わって強制的に起訴する。

(2) 裁判員制度(刑事裁判への参加)

平成21年から施行されている制度です。市民感覚を裁判に反映させます。

対象事件 地方裁判所の重大な刑事事件(殺人、強盗致傷など死刑・無期懲役等にあたるもの)。
構成 裁判官3人 + 裁判員6人の合議体。
役割
  • 事実認定(有罪か無罪か)
  • 量刑(刑の重さ)
※法令の解釈や訴訟手続きの判断は行いません
評決 過半数で決めるが、裁判官1人以上と裁判員1人以上の賛成が必要。
💡 学習のポイント

裁判員が参加するのは「第1審」のみです。控訴審(高裁)や上告審(最高裁)には裁判員制度はありません。

3. 法テラスとADR(司法アクセスの改善)

(1) 日本司法支援センター(法テラス)

「あちこちたらい回しにされる」状況を解消するための総合案内所です。

  • 民事法律扶助業務:資力がない人のために、無料法律相談を行ったり、弁護士費用等の立替え(※給付ではない)を行います。
  • 国選弁護等関連業務:刑事事件における国選弁護人の選任事務などを扱います。
  • 司法過疎対策:弁護士がいない地域にスタッフ弁護士を常駐させます。

(2) 裁判外紛争解決手続(ADR)

裁判所での訴訟によらずにトラブルを解決する方法です。「訴訟より速く、安く、柔軟に」解決できるメリットがあります。

種類 内容と効力
和解(訴訟外) 当事者が互いに譲歩して争いをやめる契約。新たに「和解契約」を結ぶことになりますが、それだけで強制執行はできません。
調停 第三者(調停委員会など)が間に入って話し合いをまとめる手続き。
調停前置主義:離婚などの家事事件は、いきなり訴訟をする前に、まず調停を申し立てなければなりません。
仲裁 当事者の合意に基づき、第三者(仲裁人)に判断を委ねる手続き。
仲裁判断が出ると、当事者は拘束され、不服申立て(裁判など)はできません

4. 実戦問題にチャレンジ

問1:審級制度と管轄
日本の裁判制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 日本の裁判所は三審制を採用しており、第1審、第2審、第3審のすべてにおいて、事実問題と法律問題の双方を審理する事実審が行われる。
2. 簡易裁判所が第1審として判決を下した民事事件について不服がある当事者は、高等裁判所に控訴しなければならない。
3. 簡易裁判所が第1審として判決を下した刑事事件について不服がある当事者は、高等裁判所に控訴しなければならない。
4. 地方裁判所は原則として第1審裁判所であるが、内乱罪に関する事件については高等裁判所が第1審となるため、地方裁判所が関与することはない。
5. 民事訴訟における上告審は法律審であるため、上告裁判所は原判決に法令違反があるか否かのみを審査し、職権で事実問題を調査することは一切認められていない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。第3審(上告審)は原則として「法律審」であり、事実審理は行いません。

2. 誤り。簡易裁判所の「民事」判決に対する控訴は、地方裁判所に対して行います。

3. 正しい。簡易裁判所の「刑事」判決に対する控訴は、原則通り高等裁判所に対して行います。

4. 誤り。記述の前半は正しいですが、後半が誤り。内乱罪の1審は高裁ですが、通常の事件で地裁は関与します。

5. 誤り。上告審でも、著しい正義に反する場合など、例外的に事実問題に踏み込むことが認められる場合があります(職権調査事項など)。

問2:市民の司法参加
検察審査会および裁判員制度に関する記述として、正しいものはどれか。

1. 検察審査会は、検察官による公訴提起(起訴)が不当であるとの申立てを受けて、その処分の当否を審査する機関である。
2. 検察審査会が「起訴相当」の議決を行い、検察官が再度不起訴処分とした場合でも、検察審査会が2度目の「起訴相当」の議決を行えば、当該事件について強制的に起訴されることになる。
3. 裁判員制度は、地方裁判所で行われるすべての刑事裁判を対象として実施される。
4. 裁判員裁判において、被告人が有罪か無罪かの判断は裁判員のみの多数決で行い、量刑の判断は裁判官と裁判員の合議で行う。
5. 裁判員は、法令の解釈および訴訟手続に関する判断についても、裁判官と同様の権限を有して評決に参加する。
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正解 2

解説:

1. 誤り。検察審査会が審査するのは「不起訴処分」の当否です。起訴したことに対する不服申し立て機関ではありません。

2. 正しい。これが「強制起訴」の流れです。指定弁護士が公訴提起を行います。

3. 誤り。対象は殺人等の重大犯罪に限られます。

4. 誤り。有罪・無罪の判断も、量刑の判断も、裁判官と裁判員の合議(混成チーム)で行います。

5. 誤り。法令の解釈や訴訟手続の判断は、裁判官のみの権限です。

問3:ADRと法テラス
司法制度および紛争解決手続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助業務では、資力のない者に対して、弁護士費用や裁判費用の全額を給付(返済不要の支給)することとしている。
2. 仲裁法に基づく仲裁手続において仲裁判断がなされた場合、その判断には確定判決と同一の効力があるため、当事者はこれに不服があっても裁判所に訴えを提起することはできない。
3. 調停前置主義とは、すべての民事訴訟において、訴えを提起する前に必ず調停を経なければならないとする原則のことである。
4. 訴訟上の和解が成立し、その内容が和解調書に記載されたとしても、それは単なる契約の確認にすぎないため、強制執行を行うには改めて債務名義を取得する必要がある。
5. 裁判外紛争解決手続(ADR)の利用は、弁護士法により弁護士のみが代理人として関与できるとされており、司法書士や社会保険労務士などが関与することは一切認められていない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。法テラスが行うのは費用の「立替え」であり、原則として返済が必要です(生活保護受給者などの免除規定はあります)。

2. 正しい。仲裁判断には確定判決と同一の効力があり、原則として裁判所で争うことはできません。

3. 誤り。調停前置主義が適用されるのは、家事事件(離婚など)や地代家賃増減請求事件などに限られます。通常の貸金請求などは直ちに訴訟可能です。

4. 誤り。訴訟上の和解調書は「確定判決と同一の効力」を有するため、直ちに強制執行が可能です(債務名義になります)。

5. 誤り。法務大臣の認証を受けたADR機関では、特定社労士や認定司法書士などが、それぞれの専門分野の紛争解決手続に関与することが認められています。

5. まとめと学習アドバイス

今回は審級制度と司法制度改革について解説しました。試験対策上の要点は以下の通りです。

  • 審級の例外:「簡裁の民事」の控訴先は「地裁」。
  • 強制起訴:検察審査会の「2回目の起訴相当議決」で強制起訴へ。
  • 裁判員の権限:事実認定と量刑を担当(法令解釈はしない)。
  • ADR:仲裁判断には拘束力があり、後から裁判に持ち込めない。

これらの知識は、ニュースなどで耳にする機会も多いはずです。日常の報道と結びつけながら、「これは事実審の話だな」「これは検察審査会の案件だな」と意識することで、記憶の定着がスムーズになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 裁判員制度で、裁判員だけで有罪を決めることはできますか?
A. できません。被告人に不利益な判断(有罪や刑罰)をするには、少なくとも「裁判官1名以上」と「裁判員1名以上」を含む過半数の賛成が必要です。裁判員全員が「有罪」と言っても、裁判官全員が「無罪」なら有罪にはできません。
Q. 調停と仲裁の違いが覚えられません。
A. 「仲裁」は「仲裁人にお任せ」する制度なので、結果が出たら文句は言えません(拘束力あり)。一方、「調停」はあくまで「話し合い」なので、気に入らなければ合意しなくてもOK(不成立で終わる)です。
Q. 法テラスは無料ですか?
A. 情報提供は無料ですが、実際の弁護士費用などは「立替え」てくれるだけで、後から分割返済が必要です(資力要件あり)。「すべて無料」と勘違いしていると、誤りの選択肢に引っかかってしまいます。
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