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講義5:【会社法】株式会社の設立~流れ・定款・出資~を完全攻略

行政書士試験の会社法において、絶対に避けて通れないのが「株式会社の設立」です。
例年、1問は出題される超頻出分野ですが、手続きが複雑で、覚えるべき数字や用語(変態設立事項など)も多く、多くの受験生が頭を抱えるポイントでもあります。

「発起設立と募集設立、どっちがどっちだっけ?」
「定款の記載事項、絶対的と相対的がごっちゃになる…」

そんな悩みを解消するために、今回は設立手続きの前半戦、「設立の全体像」から「定款作成」「出資の履行」までを、ストーリー仕立てでわかりやすく解説します。

会社法は「手続きの流れ」をイメージできるかが勝負です。2026年度試験合格に向けて、設立の基礎をガッチリ固めましょう!

1. 株式会社設立の全体像と2つの方式

会社を作るということは、人間で言えば「誕生」までのプロセスです。
株式会社の作り方には、大きく分けて2つのルートがあります。

(1) 発起設立と募集設立の違い

まずは、この2つの違いを明確に区別しましょう。ここが混ざると、後の手続き(特に総会の名前など)で混乱します。

項目 発起設立(はっきせつりつ) 募集設立(ぼしゅうせつりつ)
概要 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法 発起人が一部を引き受け、残りを株主となる人(引受人)を募集する方法
イメージ 家族経営、スモールビジネス
「自分たちのお金だけで会社を作る」
大規模ビジネス、ベンチャー
「スポンサーを募って会社を作る」
手続き 比較的シンプル 複雑(投資家保護の必要があるため)
意思決定 発起人の同意などで決定 創立総会で決定・承認
💡 学習のポイント

現在の実務では、ほとんどが「発起設立」です。しかし、試験では両者の違い(特に手続きの比較)がよく問われます。
「募集設立なら創立総会が必要」「発起設立なら検査役の調査免除が広い」といった違いを意識してください。

(2) 設立手続きのフローチャート

設立手続きは、以下の順序で進みます。

  1. 定款の作成・認証(会社の憲法を作る)
  2. 株式発行事項の決定(何株発行して、いくら払うか決める)
  3. 出資の履行(お金を払い込む)
  4. 機関の選任(役員を決める)
  5. 設立時取締役等の調査(手続きにミスがないか調べる)
  6. 設立登記(法務局に届けて、会社誕生!)

今回は、このうち「3. 出資の履行」までを詳しく見ていきます。

2. 発起人とは?(会社の言い出しっぺ)

会社を作ろうと言い出した人のことを「発起人(ほっきにん)」といいます。

(1) 発起人の要件

法律上の定義は、「定款に発起人として署名または記名押印した者」です(会社法27条5号)。
逆に言えば、どんなに設立準備に走り回っていても、定款に名前がなければ発起人ではありません。

  • 人数:1人以上いればOK(1人会社も可能)。
  • 資格:自然人に限らず、法人(会社)も発起人になれます。未成年者でも(法定代理人の同意があれば)なれます。
  • 義務:発起人は、必ず1株以上の株式を引き受けなければなりません。

(2) 発起人の権限(どこまでやっていいの?)

発起人は、会社が成立するまでの間、準備行為を行います。しかし、何でもかんでも「会社の準備だ!」と言って契約してしまうと、成立後の会社に予期せぬ借金が残るリスクがあります。

そこで、判例は発起人の権限を以下の3つに分類して考えています。

分類 内容 会社への帰属
① 設立自体に必要な行為 定款作成、株式引受け、払込みなど 当然に会社に帰属する
② 開業準備行為 財産引受(変態設立事項)として定款に記載されたもの 定款に記載があれば会社に帰属する
③ その他の開業準備行為 店舗の賃借、商品の仕入れなど 原則として発起人個人に効果帰属(会社には帰属しない)
※成立後に会社が「追認」すれば帰属するという説もある
💡 重要:開業準備行為

発起人が「会社ができたらすぐ営業できるように」と、店舗を借りたり商品を仕入れたりする行為は、原則として発起人の権限外です。
これらを会社に引き継がせるためには、後述する「財産引受」として定款に記載するか、会社成立後に改めて契約し直す必要があります。

3. 定款の作成(会社の憲法作り)

会社設立の第一歩は、基本ルールブックである「定款(ていかん)」の作成です。
定款は、発起人全員で作成し、全員が署名(または記名押印)し、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。

定款の記載事項には、重要度に応じて3つのランクがあります。

(1) 絶対的記載事項(これがないと無効!)

以下の6つは、必ず定款に書かなければなりません。1つでも欠けると定款自体が無効になります。

  1. 目的:何をする会社か(例:飲食店の経営)。
  2. 商号:会社の名前(例:株式会社行政書士商事)。
  3. 本店の所在地:最小行政区画(例:東京都新宿区)まででOK。
  4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額:「資本金」の額そのものではなく、「いくら以上お金を集めるか」という最低ライン。
  5. 発起人の氏名(名称)および住所:誰が責任者か明確にするため。
  6. 発行可能株式総数:会社が将来発行できる株式の上限数(授権枠)。
💡 注意:発行可能株式総数の特則

「発行可能株式総数」だけは、定款認証の時に決まっていなくてもOKです。
会社が成立するまでに、発起設立なら「発起人全員の同意」、募集設立なら「創立総会の決議」で定めて、定款を変更すれば足ります(会社法37条1項、98条)。

(2) 相対的記載事項(書かないと効力なし!)

定款に書かなくても定款自体は有効ですが、書かないと(定款で定めないと)その効力が認められない事項です。
代表例が、次に解説する「変態設立事項」や、「株式の譲渡制限」「株券発行の定め」「取締役会の設置」などです。

(3) 任意的記載事項(書いても書かなくてもOK)

法律に違反しない限り、自由に定款に書ける事項です。
(例:事業年度、定時株主総会の招集時期、役員の数など)
定款に記載すると、変更するには「株主総会の特別決議」が必要になるため、ルールを固定化したい場合に記載します。

4. 変態設立事項(検査役の調査が必要な危険な約束)

「変態」といっても怪しい意味ではありません。「通常のお金の出資とは異なる形態」という意味です。
これらは会社の財産基盤を危うくする恐れがあるため、定款への記載(相対的記載事項)と、原則として裁判所が選任する「検査役」の調査が必要です(会社法33条)。

以下の4つを「変態設立事項」といいます。

(1) 4つの変態設立事項

① 現物出資

金銭の代わりに、車、パソコン、不動産などで出資すること。
【リスク】 10万円の価値しかない中古車を「100万円」と評価して出資し、100万円分の株をもらうと、会社の資本が空洞化します。

② 財産引受

「会社ができたら、発起人Aの持っている土地を会社が3000万円で買い取る」という契約(予約)。
【リスク】 現物出資の抜け道に使われる恐れがあります(会社のお金で不当に高く買い取らせる)。

③ 発起人の報酬

設立事務を行った発起人への報酬。
【リスク】 お手盛りで高額な報酬を取ると、会社財産が減ります。

④ 設立費用

定款認証手数料などの実費以外の、会社が負担する費用(事務所の賃料や広告費など)。
【リスク】 浪費される恐れがあります。

(2) 検査役の調査を省略できる場合(重要!)

原則は検査役の調査が必要ですが、以下の場合は例外として調査が不要になります。試験ではここが頻出です。

例外事由 内容
① 少額の場合 現物出資・財産引受の総額が500万円以下の場合。
② 市場価格のある有価証券 上場株式などで、定款の価格が市場価格を超えない場合。
③ 専門家の証明 弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けた場合。
(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定も必要)
💡 ポイント

「発起人の報酬」と「設立費用」については、検査役調査の省略規定(少額例外など)はありません。これらは常に検査役の調査が必要です(実務上はあまり定めないことが多いです)。
※ただし、発起人の報酬・設立費用については弁護士等の証明があっても省略できません(ここは細かい論点ですが、上記①〜③は主に現物出資・財産引受に関する特則です)。

5. 設立時発行株式事項の決定と出資の履行

定款ができたら、いよいよ「誰が何株引き受けて、お金をいくら払うか」を確定させます。

(1) 設立時発行株式事項の決定(会社法32条)

発起設立の場合、発起人全員の同意で以下の事項を定めます。

  • 発起人が割り当てを受ける株式数
  • 株式と引換えに払い込む金銭の額(いくらで株を発行するか)
  • 資本金および資本準備金の額

(2) 出資の履行(全額払込主義)

株式を引き受けた発起人は、遅滞なく、出資の全額を払い込まなければなりません(会社法34条1項)。
現物出資の人は、財産を給付(引渡しや登記書類の交付)します。

払込取扱機関(銀行など)

お金の払込みは、銀行などの払込取扱場所で行います。
発起設立の場合は、銀行からの「払込金保管証明書」は不要で、通帳のコピー(残高証明)などで足ります。
(募集設立の場合は、他人の金を集めるので、厳格な「保管証明書」が必要です)。

(3) 履行しない発起人の失権(会社法36条)

もし、お金を払い込まない発起人がいたらどうなるでしょうか?

他の発起人は、その人に対して「期日」を定めて、「期日までに払わないと株主になれませんよ」と通知します。
この通知は、期日の2週間前までにしなければなりません。

それでも払わなかった場合、その発起人は株主となる権利を失います(失権)
※「強制執行」などで無理やり払わせるのではなく、設立手続きから排除(クビにする)という処理をします。スピード重視だからです。


6. 実戦問題で理解度チェック!

ここまでの知識を使って、本試験レベルの問題に挑戦しましょう。

問1:設立手続きと発起人
株式会社の設立に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

1. 株式会社の設立には、発起設立と募集設立の2種類があるが、いずれの方法による場合も、発起人は1人以上でなければならず、発起人は自然人に限られる。
2. 発起人は、設立時発行株式を少なくとも1株以上引き受けなければならず、発起人が引き受けなかった残余の株式について募集を行う方法を募集設立という。
3. 発起人が定款に記載された開業準備行為として、会社の成立前に商品の仕入れ契約を締結した場合、その効果は当然に成立後の会社に帰属する。
4. 定款の作成は、発起人全員でこれを行い、発起人の過半数が署名または記名押印しなければならない。
5. 発行可能株式総数は定款の絶対的記載事項であるが、原始定款(最初に作った定款)に必ず記載しなければならず、認証後にこれを定めることはできない。
正解・解説を見る

正解 2

解説:

1. 誤り。発起人は1人以上必要ですが、自然人に限らず法人もなることができます。

2. 正しい。募集設立の定義として正しい記述です(会社法25条)。発起人も必ず1株は引き受ける義務があります。

3. 誤り。開業準備行為(商品の仕入れなど)は、原則として発起人個人の行為となり、会社に効果は帰属しません。会社に帰属させるには「財産引受」として定款に記載するか、成立後に追認等の手続きが必要です。

4. 誤り。発起人全員が署名または記名押印しなければなりません(会社法26条1項)。

5. 誤り。発行可能株式総数は絶対的記載事項ですが、定款認証の時までに定めておく必要はありません。会社成立の時までに(発起人全員の同意などで)定款を変更して定めれば足ります(会社法37条1項)。

問2:変態設立事項
変態設立事項に関する次の記述のうち、検査役の調査を省略できる場合として、誤っているものはどれか。

1. 現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合。
2. 現物出資財産が市場価格のある有価証券であり、定款に記載された価額が市場価格を超えない場合。
3. 現物出資財産について、弁護士、弁護士法人等の証明を受けた場合(不動産である場合を除く)。
4. 現物出資財産が不動産であり、弁護士等の証明に加え、不動産鑑定士の鑑定評価を受けた場合。
5. 発起人が受ける報酬について、定款に記載された額が相当であることについて公認会計士の証明を受けた場合。
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正解 5

解説:

1〜4. 正しい。これらは検査役調査の省略事由に該当します(会社法33条10項)。

5. 誤り。「発起人の報酬」および「設立費用」については、専門家の証明による調査省略の規定はありません。これらは原則通り検査役の調査が必要です(ただし実務上はあまり定められません)。省略規定があるのは「現物出資」と「財産引受」に関してです。

問3:出資の履行
発起設立における出資の履行に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

1. 発起人は、設立時発行株式の引受け後、直ちに払込金額の2分の1以上を払い込まなければならない。
2. 出資の履行としての金銭の払込みは、発起人が定めた銀行等の払込取扱場所においてしなければならない。
3. 発起人が出資の履行をしない場合、他の発起人は当該発起人に対し、履行を催告した上で、なお履行がないときは強制執行により回収することができる。
4. 現物出資をする発起人は、出資の履行期日までに目的財産を引き渡せば足り、登記や登録に必要な書類を交付する必要までは会社成立後でよい。
5. 発起人が期日までに出資の履行をしない場合、当然に株主となる権利を失うため、特段の通知手続きは不要である。
正解・解説を見る

正解 2

解説:

1. 誤り。会社法では「全額払込み」が必要です(会社法34条1項)。旧商法時代の「一部払込」の知識と混同しないようにしましょう。

2. 正しい。払込みは銀行等の払込取扱場所で行います(会社法34条2項)。

3. 誤り。強制執行ではなく、失権手続(株主となる権利を失わせる)を取ります。

4. 誤り。現物出資の給付は、対抗要件(登記など)を備えるために必要な行為も含めて完了させる必要があります(会社法34条1項)。ただし、発起人全員の同意があれば、登記等は会社成立後とすることも可能です(同ただし書)。本肢は「原則として後でよい」としている点が誤りです。

5. 誤り。当然に失権するのではなく、期日を定めて通知し、その期日までに履行がない場合に失権します(会社法36条)。いわゆる失権予告付催告が必要です。

7. まとめ

今回は、株式会社設立の前半部分について解説しました。
特に重要なポイントを振り返ります。

  • 発起設立と募集設立:発起設立は全部引受け、募集設立は一部引受け+募集。
  • 定款:絶対的記載事項(6つ)を暗記。「発行可能株式総数」は認証後でもOK。
  • 変態設立事項:現物出資・財産引受は検査役調査が必要だが、「500万円以下」等の場合は省略可。
  • 出資の履行:全額払込みが原則。払わない発起人は失権手続きへ。

設立手続きは、一つ一つのステップが繋がっています。「誰が」「何を」「いつ」決めるのか、フローチャートを頭に描きながら復習してください。
次回は、設立手続きの後半戦、「設立時役員の選任」から「設立登記」、そして「設立無効の訴え」までを解説します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 発起人が1株も引き受けないことはできますか?
できません。発起人は必ず1株以上の設立時発行株式を引き受ける義務があります(会社法25条2項)。1株も持たない発起人は認められません。
Q2. 「資本金の額」は定款の絶対的記載事項ですか?
いいえ、違います。絶対的記載事項なのは「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」です。具体的な資本金の額は、出資の履行後に確定するため、定款には記載しません。
Q3. 発起設立で払込金保管証明書は必要ですか?
不要です。発起設立では、銀行が発行する「払込金保管証明書」は不要で、通帳のコピー(預金残高証明書)などが添付書類として認められています。募集設立では保管証明書が必須です。

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