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講義10:【会社法】機関設計の基礎!株主総会・取締役会・監査役の役割を完全図解

これまでの講義で、会社の設立や株式について学んできました。今回からは、いよいよ会社法の心臓部とも言える「機関(きかん)」の分野に入ります。

「機関」と聞くと、なんだか難しそうな機械のようなイメージを持つかもしれませんが、要するに「会社というロボットを動かすための部品(パーツ)」のことです。

「誰が会社の方針を決めるの?(脳)」
「誰が実際に動くの?(手足)」
「誰が不正がないかチェックするの?(目)」

これらを法律用語で「株主総会」「代表取締役」「監査役」などと呼びます。
会社法が苦手な受験生の多くは、この「機関の役割分担」と「組み合わせ(機関設計)」でつまずいてしまいます。

今回は、機関設計の入門編として、「各機関の役割と定義」そして「最低限守らなければならない機関設計のルール」について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

2026年度試験合格に向けて、会社組織の解像度を一気に高めていきましょう!

1. 「機関」とは何か?(会社を動かすシステム)

株式会社は「法人」です。法律上は人と同じように権利や義務を持ちますが、肉体を持たないため、自分ひとりでは契約書にサインすることも、銀行に行ってお金を下ろすこともできません。

そこで、会社の意思(やること)を決定し、それを実行に移すための「担当者」や「会議体」が必要になります。これを「機関」といいます。

3つの機能(意思決定・執行・監査)

会社の活動を健全に行うためには、権力を分散させる必要があります(三権分立のようなイメージです)。
会社法上の機関は、主に以下の3つの機能に分類されます。

機能 役割 該当する機関の例
意思決定 会社として「何をやるか」を決める機能。 株主総会(基本方針)
取締役会(業務執行の決定)
業務執行 決まったことを実際に「行う」機能。
対外的に会社を代表する機能も含む。
代表取締役
業務執行取締役
執行役(指名委員会等設置会社)
監査 業務執行が正しく行われているか、計算書類(決算書)が正しいかをチェックする機能。 監査役、監査役会
会計監査人
監査等委員会、監査委員会
💡 イメージで理解しよう

会社を「船」に例えるとわかりやすいです。
株主総会は「オーナー会議」。目的地(会社の目的)や船長(取締役)を決めます。
取締役会は「作戦会議」。具体的な航路や速度を決めます。
代表取締役は「船長」。実際に舵を取り、船を動かします。
監査役は「監視員」。船長が居眠りしたり、勝手な航路を進んでいないか見張ります。

2. 各機関の詳細と「役員」の定義

会社法には多くの機関が登場します。試験対策としては、それぞれの定義と「役員」の範囲を正確に覚えることが第一歩です。

(1) 意思決定機関(株主総会と取締役会)

① 株主総会(万能の神か、基本事項のみか)

株主総会は、会社の実質的な所有者である株主全員で構成される「最高意思決定機関」です。

  • 取締役会がない会社:「万能の機関」です。会社のあらゆる事項(蛍光灯の交換から合併まで)を決めることができます(会社法295条1項)。
  • 取締役会がある会社:権限が縮小されます。法律や定款で定められた「重要事項(役員の選任、定款変更、合併など)」に限って決議します(会社法295条2項)。日常的な経営判断はプロ(取締役会)に任せるためです。

② 取締役会(経営のプロチーム)

3人以上の取締役で構成される会議体です。
株主総会から経営を委任され、「業務執行の決定」(支店を出す、多額の借金をする等)や「代表取締役の選定・監督」を行います。

(2) 役員等の定義(試験の頻出ポイント!)

会社法では、「役員」と「役員等」という言葉を使い分けています。この違いは記述式などでも問われるため、必ず暗記してください。

① 「役員」とは(会社法329条1項)

以下の3つ(+代表取締役)を指します。

  1. 取締役
  2. 会計参与
  3. 監査役

※会計監査人は「役員」には含まれません!

② 「役員等」とは(会社法423条1項)

損害賠償責任などの条文で使われる広い概念です。「役員」に加えて以下の2つが含まれます。

  1. 役員(取締役、会計参与、監査役)
  2. 執行役(指名委員会等設置会社のみ)
  3. 会計監査人
💡 整理表:「役員」と「役員等」
職名 役員ですか? 役員等ですか?
取締役
監査役
会計参与
執行役 ×
会計監査人 ×

(3) 各役員の役割を深掘り

取締役と代表取締役

取締役は、会社の業務を執行する人です。
ただし、取締役会設置会社では、平の取締役は会議(取締役会)に出席して決定・監督するのが仕事であり、実際に業務を行うのは「代表取締役」や「選定された業務執行取締役」です。

会計参与(かいけいさんよ)

税理士や公認会計士の資格を持つ専門家です。
取締役と共同して、計算書類(決算書)を作成します。計算書類の作成をプロに手伝ってもらうことで、会社の決算の信頼性を高めるための機関です。

監査役(かんさやく)

取締役が不正をしていないか、仕事ぶりをチェックする「業務監査」と、お金の計算が合っているかチェックする「会計監査」の両方を行います。

会計監査人(かいけいかんさにん)

監査法人(公認会計士)のことです。大会社などでは設置が義務付けられています。
監査役とは違い、「計算書類の監査(会計監査)」のみを行います。業務監査権限はありません。

(4) その他の新しい機関形態

近年の改正で、コーポレート・ガバナンス(企業統治)強化のために新しい機関設計が導入されています。

① 監査役会

3人以上の監査役(うち半数以上は社外監査役)で構成される会議体です。大会社などで設置されます。

② 監査等委員会設置会社(最近の流行り)

監査役を置く代わりに、取締役の中に「監査等委員」という役割を与えて、取締役会内部で監査を行わせる形態です。

③ 指名委員会等設置会社(究極の分離)

経営の「監督(取締役会)」と「執行(執行役)」を完全に分離した、アメリカ型の企業形態です。
社外取締役を中心とした3つの委員会(指名・監査・報酬)が強い権限を持ちます。

3. 機関設計の自由化とルール

昔の商法では「株式会社=株主総会+取締役会+監査役」が必須でしたが、現在の会社法では、会社の規模や公開・非公開に応じて自由に機関を設計できます(機関設計の自由化)。

ただし、好き勝手にできるわけではなく、「最低限のルール(必要的機関)」「セット販売のルール」があります。

(1) 絶対に必要な機関(必要的機関)

どんなに小さな株式会社でも、以下の2つは必ず置かなければなりません。

  1. 株主総会
  2. 取締役(1人以上)

これがいわゆる「1人会社」の最小構成です。

(2) 機関設計の基本ルール

会社が大きくなったり、株を公開したりすると、必要な機関が増えていきます。試験で問われるのは以下のルールです。

① 取締役会を置く場合

  • 取締役は3人以上必要。
  • 原則として監査役(または会計参与、監査等委員会など)を置かなければならない。
    (※非公開会社で会計参与を置く場合は、監査役を置かなくてもよいという例外があります)。

【理由】 取締役会に業務執行の決定権限が集まるため、暴走しないようにチェック役(監査役)が必要だからです。

② 公開会社の場合

  • 必ず取締役会を置かなければならない。
  • 取締役会を置くので、必然的に監査役なども必要になる。

【理由】 株式が広く流通する公開会社では、株主総会を頻繁に開くのは困難です。経営の機動性を確保するために取締役会設置が義務付けられています。

③ 大会社の場合(資本金5億円以上など)

  • 必ず会計監査人を置かなければならない。
  • さらに監査役会(または監査等委員会など)も必要。

【理由】 規模が大きい会社は社会への影響力も大きいため、プロ(公認会計士)による会計チェックと、組織的な監査(監査役会)が義務付けられます。


4. 実戦問題で理解度チェック!

ここまでの知識を使って、本試験レベルの問題に挑戦しましょう。

問1:役員の定義と機関
株式会社の機関および役員に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当なものはどれか。

1. 会社法上の「役員」とは、取締役、会計参与、監査役および会計監査人を指し、これに執行役を加えたものを「役員等」という。
2. 全ての株式会社において必ず設置しなければならない機関は、株主総会、取締役および監査役である。
3. 会計参与は、公認会計士または税理士(法人を含む)でなければならず、取締役と共同して計算書類等を作成する権限を有する役員である。
4. 取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができるが、取締役会非設置会社においては、万能の機関として一切の事項を決議できるわけではない。
5. 会計監査人は、会社の計算書類等を監査する権限を有する機関であり、いつでも取締役および使用人に対して業務の報告を求め、または会社の業務および財産の状況を調査することができる。
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正解 3

解説:

1. 誤り。「役員」に会計監査人は含まれません(329条1項)。役員=取締役・会計参与・監査役です。会計監査人は「役員等」に含まれます。

2. 誤り。全ての会社で必須なのは「株主総会」と「取締役」のみです。監査役は必須ではありません(譲渡制限会社など)。

3. 正しい。会計参与の資格と役割に関する正しい記述です(333条、374条)。

4. 誤り。取締役会非設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項および株式会社の組織・運営・管理その他「一切の事項」について決議をすることができます(295条1項)。万能の機関となります。

5. 誤り。会計監査人の権限は「会計に関するもの」に限られます。業務全般の調査権限(業務監査権)を持つのは「監査役」です。会計監査人は会計帳簿の閲覧等はできますが、業務全般の報告請求権はありません。

問2:取締役会設置会社の構造
取締役会設置会社の業務執行に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1. 取締役会設置会社における取締役は、すべて業務執行権限を有しており、各自が会社を代表する。
2. 取締役会は、業務執行の決定を行う機関であり、多額の借財や重要な財産の処分などの重要事項については、代表取締役に決定を委任することができる。
3. 代表取締役は、取締役会の決議によって取締役の中から選定され、会社の業務を執行し、会社を代表する権限を持つ。
4. 取締役会設置会社においては、株主総会が代表取締役を選定することは、いかなる場合もできない。
5. 取締役会設置会社であっても、監査役を設置することは任意であり、定款で定めない限り設置する必要はない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。取締役会設置会社の平取締役には、原則として業務執行権・代表権はありません。あるのは取締役会での議決権(監督権限)です。

2. 誤り。重要な業務執行(多額の借財など)の決定は、取締役会の専決事項であり、代表取締役に委任することはできません(362条4項)。

3. 正しい。取締役会設置会社の代表取締役の選定・役割に関する記述です(362条2項、3項)。

4. 誤り。原則は取締役会が選定しますが、定款で「株主総会で代表取締役を決める」と定めることは可能です(直接民主制のようなイメージ)。

5. 誤り。取締役会設置会社は、原則として監査役(またはそれに代わる機関)を設置しなければなりません(327条2項)。ノーチェックでは危険だからです。

問3:機関設計のルール
株式会社の機関設計に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、あり得ない組み合わせ(違法な設計)はどれか。
※すべて「監査等委員会設置会社」および「指名委員会等設置会社」ではないものとする。

1. 公開会社であり、取締役会と監査役会を設置し、会計監査人を置く会社。
2. 公開会社でない会社(譲渡制限会社)であり、取締役会を設置せず、取締役1名のみを置く会社。
3. 公開会社でない会社であり、取締役会を設置し、監査役を置かず、会計参与のみを置く会社。
4. 公開会社であり、取締役会を設置し、監査役を置かず、会計監査人のみを置く会社。
5. 大会社(公開会社)であり、取締役会と監査役会、会計監査人を置く会社。
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正解 4

解説:

1. 適法。公開会社かつ大会社の典型的な機関設計です。

2. 適法。非公開会社で最もシンプルな設計(1人会社)です。

3. 適法。ここが盲点です。取締役会設置会社は原則として監査役が必要ですが、「非公開会社」かつ「会計参与設置会社」であれば、監査役を置かないことができます(327条2項ただし書)。計算書類の正確性が担保されるからです。

4. 違法(あり得ない)。公開会社は取締役会設置義務があり、取締役会設置会社は監査役設置義務があります。公開会社には「会計参与を置けば監査役不要」という例外規定は適用されません。

5. 適法。大会社(公開会社)には会計監査人と監査役会の設置義務があります(328条)。

5. まとめ

今回は、会社法の「機関設計」の基礎について解説しました。
ポイントを整理します。

  • 役員の定義:役員=取締役・会計参与・監査役。会計監査人と執行役は「役員等」。
  • 取締役会:業務執行の「決定」と「監督」を行う。重要事項(多額の借財など)は代表取締役に委任できない。
  • 会計参与:計算書類を作る専門家(役員)。
  • 機関設計ルール:
    • 必須:株主総会+取締役
    • 取締役会を置くなら → 監査役も必要(非公開で会計参与がいれば免除可)。
    • 公開会社なら → 取締役会+監査役が必要。
    • 大会社なら → 会計監査人+監査役会が必要。

機関設計はパズルのようなものです。「なぜこの機関が必要なのか(=チェック機能の確保)」を意識すると、丸暗記しなくてもルールの意味が見えてきます。

次回は、機関の中でも最も出題頻度が高い「株主総会の招集手続き」について、さらに詳しく掘り下げていきます。お楽しみに!

よくある質問(FAQ)

Q1. 「執行役」と「執行役員」の違いは何ですか?
執行役は、会社法上の機関(役員等)であり、指名委員会等設置会社にのみ存在します。一方、執行役員は、法律上の用語ではなく、会社が任意で定めた従業員のトップ(部長より偉い人)の肩書きに過ぎません。試験では明確に区別してください。
Q2. なぜ非公開会社では、会計参与がいれば監査役がいらないのですか?
非公開会社(中小企業など)では、監査役を置いても名ばかりで機能していないことが多いです。それならば、税理士等の専門家である会計参与を入れて、正確な決算書を作らせた方が、結果として債権者保護(コンプライアンス)に役立つと考えられたため、例外として認められています。
Q3. 取締役会がない会社では、誰が業務執行を決めるのですか?
原則として、取締役の過半数で決定します(348条1項)。株主総会で決めることも可能ですが、日々の業務については取締役の話し合い(過半数)で決め、各取締役が執行するのが原則です。

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