「株主総会」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
テレビドラマで見るような、怒号が飛び交うシャンシャン総会でしょうか?それとも、家族経営の会社で「お父さん、そろそろ総会やろうか」とコタツで話し合うような場面でしょうか?
実は、会社法においては、この「会社の規模(公開・非公開、取締役会がある・ない)」によって、株主総会のルールが全く異なります。
「招集通知は2週間前だっけ?1週間前だっけ?」
「取締役会がない会社の総会は、何でも決められるの?」
このあたりの区別がついていないと、本試験の択一問題で確実にひっかけられます。
今回は、株主総会の「権限(何ができるか)」と「招集手続き(どうやって集めるか)」について、パターン別にわかりやすく整理します。
2026年度試験合格に向けて、会社法の得点源である「機関」分野を攻略していきましょう!
1. 株主総会は何を決める場所?(権限の違い)
株主総会は、会社の実質的オーナーである株主が集まる「最高意思決定機関」です。
しかし、その権限の範囲は、「取締役会があるかどうか」で大きく変わります。
(1) 取締役会「非」設置会社(万能の神)
取締役会がない会社(中小企業など)では、株主総会は「万能の機関」です。
- 権限:会社法に規定する事項だけでなく、会社に関する一切の事項について決議できます。
- 例:「社長の給料を決める」「新入社員の採用を決める」「エアコンの買い替えを決める」など、何でもOKです。
取締役会がないということは、経営のプロ集団がいないということです。だから、オーナーである株主が何でも決められるようにしているのです。
(2) 取締役会設置会社(権限の縮小)
取締役会がある会社(大企業など)では、株主総会の権限は制限されます。
- 権限:会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り、決議できます(会社法295条2項)。
- 原則:業務執行の決定(支店を出す、借金をする等)は、取締役会が行います。株主総会は、取締役の選任や定款変更など「会社の根本に関わる事項」だけを決めます。
定款で定めれば、取締役会設置会社でも「社長の給料は株主総会で決める」とすることは可能です(権限の拡張)。
(3) 決議事項の具体例
取締役会の有無にかかわらず、以下の重要事項は必ず株主総会で決めなければなりません。
- 人事:役員(取締役・監査役など)の選任・解任。
- 定款:定款変更。
- 組織再編:合併、会社分割、事業譲渡など。
- 計算:計算書類の承認、配当の決定(※一定の要件を満たす取締役会設置会社を除く)。
- 役員報酬:お手盛り防止のため、総額枠などを総会で決める。
2. 誰がいつ招集するの?(招集の基本)
株主総会を開くには、まず「集まってください」と声をかける(招集する)必要があります。
(1) 招集の決定と実行
- 誰が決める?(決定権者):
- 取締役会設置会社 → 取締役会が決議する。
- 取締役会非設置会社 → 取締役(複数いる場合は過半数)が決める。
- 誰が招集する?(実行者):代表取締役などの「招集権者」が具体的に通知を出します。
(2) 招集時期
- 定時株主総会:毎事業年度の終了後、一定の時期(通常は3ヶ月以内)に必ず招集します。決算の承認などが目的です。
- 臨時株主総会:必要があるときは、いつでも招集できます。
(3) 株主による招集請求(少数株主権)
取締役がやる気がない場合、株主が「総会を開いてくれ!」と請求することができます(会社法297条)。
要件(誰ができる?)
- 総株主の議決権の3%(100分の3)以上を保有する株主。
- 6ヶ月前から引き続き保有していること(公開会社のみ。非公開会社は保有期間要件なし)。
手続きの流れ
- 株主が取締役に「議題」と「招集理由」を示して請求する。
- 取締役が動かない場合(遅滞なく招集しない場合など)、株主は裁判所の許可を得て、自分で招集できる。
3. 招集通知のルール(超重要!)
株主総会を開くには、事前に株主に知らせる必要があります。この「招集通知」の期間と方法は、試験で最も狙われるポイントです。
(1) 通知の発送時期(2週間か1週間か)
株主に準備期間を与えるため、会日(開催日)の前に通知を発送しなければなりません。
| 会社の種類 | 原則の期間 | 短縮の可否 |
|---|---|---|
| 公開会社 | 会日の2週間前まで | 短縮不可 |
| 非公開会社 (取締役会設置) |
会日の1週間前まで | 短縮不可 |
| 非公開会社 (取締役会非設置) |
会日の1週間前まで | 定款で短縮可能 (例:3日前まで) |
書面投票や電子投票を採用する場合は、株主がじっくり考える時間が必要なため、公開・非公開を問わず「2週間前」になります。
(2) 通知の方法(書面か口頭か)
| ケース | 方法 |
|---|---|
| 取締役会設置会社 | 必ず書面(または承諾を得て電磁的方法) |
| 書面投票・電子投票を採用する場合 | 必ず書面(または承諾を得て電磁的方法) |
| 上記以外(非公開かつ非設置会社など) | 制限なし(口頭、電話、メールのみでもOK) |
【覚え方】
取締役会があるようなちゃんとした会社は「書面」で。
取締役会もないような小さな会社(家族経営など)は、「おい、明日総会やるぞ」という「口頭」でもOK。
(3) 招集手続の省略(全員同意)
株主全員の同意があるときは、招集手続き(通知の発送)を省略して、いきなり開催することができます(会社法300条)。
※ただし、書面投票・電子投票を採用している場合は省略できません。
4. 株主提案権(議題と議案の違い)
株主は、会社が決めた議題について賛否を投じるだけでなく、「この件について話し合おう(議題)」や「自分はこう思う(議案)」と提案することができます。
(1) 議題と議案の違い
ここがややこしいですが、区別しましょう。
- 議題(テーマ):「取締役選任の件」「定款変更の件」など、会議の目的となる事項。
- 議案(具体的な案):「Aさんを取締役に選任する」「定款の第〇条をこう変える」という具体的な提案内容。
(2) 3つの株主提案権
| 権利の種類 | 内容 | 要件(取締役会設置会社) |
|---|---|---|
| ① 議題提案権 | 「このテーマを今回の総会で取り上げてくれ」と請求する権利。 |
|
| ② 議案提案権 | 総会の現場で「私はAさんを推薦します(修正動議)」と提案する権利。 |
|
| ③ 議案通知請求権 | 「私の提案内容(議案)を招集通知に載せて、みんなに知らせてくれ」と請求する権利。 |
|
取締役会がない会社では、原則として単独株主権(1株でOK)となり、保有期間要件もありません。
ただし、招集通知に載せる(③)場合は、物理的な準備が必要なため「8週間前」などの期間制限は適用されると考えられています(解釈)。
(3) 提案の制限(濫用防止)
嫌がらせ的な提案を防ぐため、以下の制限があります。
- 法令・定款に違反する場合(例:犯罪行為を提案する)。
- 実質的に同一の議案が、過去3年以内に否決され、かつ賛成票が10%未満だった場合(箸にも棒にもかからなかった案の蒸し返し禁止)。
5. 実戦問題で理解度チェック!
ここまでの知識を使って、本試験レベルの問題に挑戦しましょう。
1. 取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができるが、取締役会非設置会社の株主総会は、一切の事項について決議をすることができる。
2. 公開会社における株主総会の招集通知は、会日の1週間前までに発すれば足りるが、定款でこれを下回る期間を定めることも可能である。
3. 取締役会設置会社において、株主総会の招集通知は必ず書面でしなければならず、株主の承諾があっても電磁的方法(メール等)ですることはできない。
4. 株主総会は、取締役が招集するのが原則であるが、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、裁判所の許可を得ることなく、自ら招集することができる。
5. 株主総会の招集手続きは、株主全員の同意があっても省略することはできない。
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正解 1
解説:
1. 正しい。取締役会設置の有無による権限の違いを正確に記述しています(295条)。
2. 誤り。公開会社の招集通知は「2週間前」までです(299条1項)。短縮もできません。
3. 誤り。株主の承諾があれば、書面に代えて電磁的方法で通知することができます(299条3項)。
4. 誤り。少数株主による招集は、まず取締役に請求し、それでも招集されない場合に「裁判所の許可」を得て初めて自ら招集できます(297条4項)。勝手に招集はできません。
5. 誤り。株主全員の同意があれば、招集手続き(通知)を省略できます(300条)。ただし、書面投票等を認める場合は省略不可です。
1. 株主が株主総会の議題(テーマ)を提案するには、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を、6ヶ月前から引き続き有していなければならない。
2. 株主が株主総会の場において議案(具体的な案)を提出する場合、事前に取締役に通知していなければ、その議案を提出することはできない。
3. 株主が提案しようとする議案が、法令または定款に違反する場合であっても、株主総会の決議によって適法となる可能性があるため、会社はその提案を拒むことはできない。
4. 1人の株主が提案できる議案の数に制限はなく、株主は無制限に多数の議案を招集通知に記載させることができる。
5. 過去に否決された議案と実質的に同一の議案については、賛成票の割合にかかわらず、否決された日から3年間は再提案することができない。
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正解 1
解説:
1. 正しい。議題提案権および議案要領通知請求権の要件(1%・300個、6ヶ月)です(303条、305条)。
2. 誤り。総会の場での議案提出権(304条)は単独株主権であり、事前の通知は不要です(議題の範囲内に限る)。
3. 誤り。法令・定款違反の議案は、取締役会で拒絶できます(305条1項ただし書)。
4. 誤り。議案要領通知請求権については、株主1人が提案できる議案数は10個までに制限されています(305条4項)。濫用防止のためです。
5. 誤り。再提案が制限されるのは、賛成票が10%(1割)未満だった場合に限られます(305条1項ただし書)。1割以上の賛成があったなら、再挑戦の価値ありとみなされます。
※電磁的方法による議決権行使(電子投票)は定めていないものとする。
ア. 公開会社である取締役会設置会社:会日の2週間前までに発送しなければならない。
イ. 公開会社でない取締役会設置会社:会日の1週間前までに発送すれば足りる。
ウ. 公開会社でない取締役会非設置会社:定款で定めれば、会日の3日前までに発送することとすることができる。
エ. 公開会社でない取締役会設置会社:定款で定めても、会日の1週間前を下回る期間とすることはできない。
1. ア・イ・ウ・エ すべて正しい
2. ア・イ・ウ のみ正しい
3. ア・エ のみ正しい
4. イ・ウ のみ正しい
5. ウ・エ のみ正しい
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正解 1
解説:
すべての記述が正しいです(会社法299条1項)。
ア. 公開会社は一律2週間前。
イ. 非公開会社は原則1週間前。
ウ. 非公開かつ取締役会非設置なら、定款でさらに短縮可能(みんな知り合いだから)。
エ. 非公開でも取締役会設置会社なら、1週間を下回ることはできない(書面投票がない場合)。
この表の区分けは完璧にしておきましょう。
6. まとめ
今回は、株主総会の入り口である「招集」について解説しました。
ポイントを整理します。
- 総会の権限:取締役会設置会社は「限定的(重要事項のみ)」、非設置会社は「万能」。
- 招集権者:原則は取締役(会)。株主も裁判所の許可を得て招集可能(3%、6ヶ月)。
- 招集通知:公開会社は「2週間・書面」、非公開会社は「1週間・方法自由(非設置なら短縮可)」。
- 株主提案権:議題提案・通知請求は「1%・300個、6ヶ月、8週間前」。現場での議案提出は「単独株主権」。
特に「招集通知の期間」は、表を書いて何も見ずに再現できるようにしておいてください。
次回は、いよいよ総会当日の話、「議決権の行使方法」と「決議の方法(普通・特別・特殊)」について解説します。定足数や賛成要件など、数字の暗記が勝負です!
よくある質問(FAQ)
- Q1. なぜ公開会社は招集通知が「2週間前」も必要なのですか?
- 公開会社の株主は全国に散らばっており、数も多いです。通知が届いてから内容を検討し、総会に出席するか、委任状を送るかを決めるのに十分な時間を確保するためです。一方、非公開会社は株主が少なく関係も密接なため、1週間(またはそれ以下)でも足りるとされています。
- Q2. 議題提案権の「8週間前」というのは、通知を発想する日の8週間前ですか?
- いいえ、「株主総会の会日(当日)」の8週間前です。会社は招集通知を作成・発送する準備期間が必要なため、かなり早めに請求しなければならないルールになっています。
- Q3. 取締役会設置会社で、定款で「社長の選任は株主総会で行う」と定めることはできますか?
- できます(会社法295条2項)。本来、取締役会設置会社の代表取締役選定は取締役会の権限ですが、定款で定めることによって株主総会の権限に引き上げる(権限を拡張する)ことが可能です。これを「選択的権限事項」といいます。
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