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講義1:【憲法総論】憲法の意味と基本原理・人権の分類を解説|行政書士試験対策

行政書士試験の憲法学習へようこそ。憲法は、国の最高法規であり、全ての法律学習の土台となる重要な科目です。

しかし、学習の序盤で登場する「固有の意味の憲法」「立憲的意味の憲法」といった抽象的な概念に戸惑う受験生は少なくありません。「言葉の定義」を曖昧にしたまま進むと、後の判例学習で理解が追いつかなくなってしまいます。

この記事では、憲法の基礎となる「意味・特質・基本原理」と「人権の分類」について、試験に出るポイントを整理して解説します。用語の違いを明確にし、得点源に変えていきましょう。

1. 憲法の意味と分類

「憲法」という言葉には、大きく分けて「形式的意味」と「実質的意味」の2つの捉え方があります。さらに実質的意味は2つに細分化されます。ここが最初の重要ポイントです。

(1) 形式的意味と実質的意味

  • 形式的意味の憲法: 内容は問わず、「憲法」という名前がついた法典そのものを指します。(例:「日本国憲法」という法典)
  • 実質的意味の憲法: 形式(名前)にとらわれず、その法が持つ「内容」に着目した概念です。

(2) 「固有の意味」と「立憲的意味」の違い

実質的意味の憲法は、さらに以下の2つに分類されます。試験ではこの対比が頻出です。

分類 定義・特徴 ポイント
固有の意味の憲法 国家の統治体制(権力の所在や行使の手順など)を定めた基本的な法。 どんな国にも存在する。
(専制国家や独裁国家にも「固有の意味の憲法」はあります)
立憲的意味の憲法 権力を制限して、国民の権利・自由を保障しようとする思想(立憲主義)に基づく憲法。 自由主義的な国にしか存在しない。
(フランス人権宣言などがルーツ)
💡 学習のポイント

「専制国家には憲法がない」と言われたら、それは「立憲的意味の憲法がない」という意味です。「固有の意味の憲法(国を治めるルール)」自体は、どのような国であっても必ず存在します。

2. 近代憲法の特質

私たちが現在学習している日本国憲法のような「近代憲法」には、以下の3つの特質があります。

  1. 自由の基礎法:国民の自由を確立・保障するために存在する法です。
  2. 制限規範:自由を守るために、国家権力を縛る(制限する)法です。
  3. 最高法規:国の法秩序の中で最も強い効力を持ちます。これに反する法律や命令は無効となります(憲法98条)。
💡 補足:最高法規性の根拠

憲法が最高法規とされる形式的な根拠は98条ですが、実質的な根拠は「憲法の内容が国民の人権を守るものだから」という点に求められます。

3. 憲法の基本原理

日本国憲法は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを基本原理としています。

(1) 国民主権の3つの意味

「主権」という言葉には多義的な意味がありますが、国民主権に関連して以下の3つの意味を区別しておく必要があります。

意味 内容 該当する条文例
① 国家権力そのもの
(統治権)
国を治める権力そのもの。立法・行政・司法の総称。 ポツダム宣言8項
② 国家権力の属性
(最高独立性)
他国から干渉されず、対外的に独立していること。 憲法前文第3段「自国の主権を維持し…」
③ 最高決定権
(国政の最終決定権)
国の政治のあり方を最終的に決める力。「国民主権」の主権はこの意味。 憲法前文第1段、憲法1条

(2) 基本的人権の尊重

人権は、国家や憲法から恩恵として与えられたものではなく、「人間であることにより当然に有する権利(固有性)」です。また、公権力によって侵されない(不可侵性)、人種や性別に関係なく享有する(普遍性)という性質を持ちます。

4. 人権の分類と歴史

人権は、その性質や歴史的背景によって大きく4つに分類されます。特に「自由権」と「社会権」の違いは重要です。

4つの分類

  • 自由権(国家からの自由): 国に「邪魔をするな」と言える権利。最も歴史が古く、18~19世紀の「夜警国家(消極国家)」観に基づきます。
    (例:精神的自由、経済的自由、人身の自由)
  • 参政権(国家への自由): 国民が政治に参加する権利。
    (例:選挙権、被選挙権)
  • 社会権(国家による自由): 国に「人間らしい生活を保障してくれ」と求める権利。20世紀に入り、資本主義の弊害(貧富の差)を是正するために生まれた「福祉国家(積極国家)」観に基づきます。
    (例:生存権、教育を受ける権利、労働基本権)
  • 受益権(国務請求権): 権利が侵害された際などに、国に対して一定の行為を請求する権利。
    (例:裁判を受ける権利、国家賠償請求権)
💡 記憶のコツ

それぞれの権利が「国家に対してどのようなベクトル(方向性)を持っているか」で覚えましょう。
自由権=「来るな(干渉拒否)」
社会権=「助けろ(積極介入)」

というイメージです。


5. 実戦問題にチャレンジ

問1:憲法の意味
憲法の意味に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 「固有の意味の憲法」とは、国家権力を制限して国民の権利自由を保障する規範のことであり、近代以前の専制国家には存在しなかったとされる。
2. 「立憲的意味の憲法」とは、国家の統治の基本形態を定める法規範のことであり、いかなる時代のいかなる国家にも存在するとされる。
3. 「形式的意味の憲法」とは、その内容がいかなるものであるかを問わず、「憲法」という名称の付された成文の法典を指す。
4. フランス人権宣言第16条が「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法を持つものではない」と定めている場合の「憲法」とは、「固有の意味の憲法」を指している。
5. 日本国憲法は、基本的人権の尊重や権力分立を定めているため、「立憲的意味の憲法」には当たるが、国家統治の基本を定めているわけではないため、「固有の意味の憲法」には当たらない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。「国家権力を制限して…」というのは立憲的意味の憲法の説明です。固有の意味の憲法は専制国家にも存在します。

2. 誤り。「国家の統治の基本形態を定める…」というのは固有の意味の憲法の説明です。

3. 正しい。形式的意味の憲法は、内容を問わず、その存在形式(名前)による定義です。

4. 誤り。フランス人権宣言が指す「憲法」は、自由主義に基づく立憲的意味の憲法のことです。

5. 誤り。日本国憲法は、「立憲的意味の憲法」であると同時に、国家統治の基本も定めているため「固有の意味の憲法」でもあります。両者は排斥し合うものではありません。

問2:主権の意味
「主権」という語の意味に関する次の記述のうち、憲法前文第3段「自国の主権を維持し」における「主権」と同じ意味で用いられているものはどれか。

1. ポツダム宣言第8項にある「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ…諸小島ニ局限セラルベシ」における主権。
2. 日本国憲法第1条にある「主権の存する日本国民」における主権。
3. 日本国憲法前文第1段にある「ここに主権が国民に存することを宣言し」における主権。
4. 国際法上、他国の干渉を受けずに自国の意思を決定できる「国家権力の属性としての最高独立性」を指す場合の主権。
5. 国家の統治権そのものを指し、立法・行政・司法の三権を包含する意味での主権。
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正解 4

解説:

設問の「自国の主権を維持し」は、対外的な独立性(国家権力の属性)を指します。

1. 誤り。これは領土的適用範囲としての「統治権(国家権力そのもの)」を指します。

2. 誤り。これは「国政のあり方を最終的に決定する権力(国民主権)」を指します。

3. 誤り。これも2と同様、「国民主権」の意味です。

4. 正しい。これが「国家権力の属性としての最高独立性」であり、設問と同じ意味です。

5. 誤り。これは「統治権(国家権力そのもの)」の意味です。

問3:人権の分類
人権の分類とその歴史的背景に関する記述として、最も適切なものはどれか。

1. 自由権は「国家による自由」とも呼ばれ、国家が国民生活に積極的に介入し、社会的弱者を救済することを求める権利であり、20世紀に入ってから確立された。
2. 社会権は「国家からの自由」とも呼ばれ、国家権力の干渉を排除して個人の自由な領域を確保しようとする権利であり、18世紀から19世紀にかけて確立された。
3. 参政権は「国家への自由」とも呼ばれ、国民が能動的に国政に参加する権利であるが、これは自由権や社会権よりも前に、歴史上最も早く確立された権利である。
4. 受益権は「国務請求権」とも呼ばれ、人権侵害に対する救済を求める権利などを含み、基本的人権を確保するための手段的権利としての性格を有する。
5. 近代憲法当初の「夜警国家」の理念の下では、社会権の保障が最も重視されていたが、現代の「福祉国家」においては、自由権の保障がより重視されるようになった。
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正解 4

解説:

1. 誤り。自由権は「国家からの自由」です。「国家による自由」は社会権の説明です。

2. 誤り。社会権は「国家による自由」です。「国家からの自由」は自由権の説明です。

3. 誤り。歴史的に最も早く確立されたのは「自由権」です。参政権(特に普通選挙権)や社会権の確立はもっと後になります。

4. 正しい。受益権(裁判を受ける権利など)は、他の人権を確保するための手段としての権利です。

5. 誤り。夜警国家では「自由権」が重視され、福祉国家では「社会権」が登場し重視されるようになりました。記述は逆です。

6. まとめ

今回は、憲法学習の第一歩である「憲法の意味」と「基本原理」について解説しました。

  • 憲法の分類:「固有の意味」と「立憲的意味」の定義を逆に覚えないように注意。
  • 国民主権:3つの意味(統治権、権威、決定権)と、どの条文がどれに当たるかをセットで覚える。
  • 人権の分類:自由権(国家からの自由)と社会権(国家による自由)の対比は必須知識。

これらの基礎概念は、今後学ぶ「精神的自由」や「経済的自由」、「社会権訴訟」などの理解に直結します。用語の意味をしっかりと定着させておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 「固有の意味の憲法」は日本国憲法にも当てはまりますか?
A. はい、当てはまります。日本国憲法は「日本の統治の基本」を定めているので「固有の意味の憲法」であり、かつ、人権保障を目的としているので「立憲的意味の憲法」でもあります。
Q. 社会権はなぜ20世紀になって登場したのですか?
A. 19世紀までの自由放任主義(資本主義)の結果、貧富の差や労働環境の悪化が深刻化したからです。「国は邪魔しないでくれ」という自由権だけでは弱者が守れないため、「国が積極的に助けてくれ」という社会権が必要になりました(ワイマール憲法が有名です)。
Q. 基本的人権の「固有性」とはどういう意味ですか?
A. 「天皇や国家から与えられたものではなく、人間として生まれたから当然に持っている」という意味です。日本国憲法第11条や97条にその趣旨が表れています。
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