PR

講義4:【民法総則】住所・失踪宣告・法人の権利能力を完全マスター!権利能力なき社団とは?

民法総則の学習も後半に入り、今回は「住所」「失踪宣告」「法人」というテーマを扱います。

これらの分野は、契約の相手方が行方不明になったり、会社(法人)や町内会と取引したりする際に重要となるルールです。特に「失踪宣告の取消し」「権利能力なき社団(町内会など)」に関する判例は、行政書士試験でも頻出の論点です。

「死んだはずの人が生きていた場合、契約はどうなる?」「町内会の借金は誰が払う?」といった具体的なケースを想像しながら、知識を定着させていきましょう。

1. 住所(生活の本拠)

民法において「住所」とは、「各人の生活の本拠」を指します(22条)。住民票がある場所(公法上の住所)とは必ずしも一致しません。

住所の定義と種類

  • 住所:生活の中心地。判例は「生活にもっとも関係の深い一般的生活、全生活の中心」としています。
  • 居所:継続して居住しているが、生活の本拠まではいかない場所(単身赴任先や長期入院先など)。住所が知れない場合は、居所を住所とみなします。
  • 仮住所:ある行為について特に定めた場所。その行為に関しては住所とみなされます。
💡 「本籍」との違い

「本籍」は戸籍のある場所であり、民法上の「住所(生活の本拠)」とは全く別の概念です。試験で混同しないようにしましょう。

2. 失踪宣告(不在者の生死不明)

人が行方不明になり、生死がわからない状態が続くと、残された配偶者や財産関係が不安定になります。そこで、法的に「死亡した」ものとして扱う制度が「失踪宣告」です。

(1) 普通失踪と特別失踪

種類 要件 死亡とみなされる時期
普通失踪 生死不明が7年間継続 期間満了時(7年が経過した時)
特別失踪
(危難失踪)
戦地、沈没船などの危難に遭遇し、危難が去ってから1年間生死不明 危難が去った時(遡及する!)
⚠️ 死亡時期の違いに注意

普通失踪は「期間満了時」に死亡とみなされますが、特別失踪は「危難が去った時」に遡って死亡とみなされます。この違いは相続の開始時期などに影響するため重要です。

(2) 失踪宣告の取消し(32条)

失踪宣告を受けた人が実は生きていた場合、本人や利害関係人の請求により、家裁は宣告を取り消さなければなりません。取消しにより、原則として初めから宣告がなかったことになります(遡及効)。

しかし、これでは宣告を信じて再婚した配偶者や、相続財産を買った第三者が害されてしまいます。そこで以下の保護規定があります。

  • 善意の行為の保護(32条1項後段): 失踪宣告後、取消し前に「善意」でした行為は、効力を失いません。
    ※契約の当事者双方が善意である必要があるとするのが通説・判例です。
  • 財産返還の範囲(32条2項): 失踪宣告によって財産を得た者(相続人など)は、取消しによって権利を失いますが、「現に利益を受けている限度(現存利益)」で返還すれば足ります(善意の場合)。悪意の場合は全額返還+損害賠償が必要です。

(3) 同時死亡の推定(32条の2)

数人が死亡し、どちらが先に死亡したか明らかでない場合(例:親子で遭難)、「同時に死亡したものと推定」されます。
同時に死亡した者同士の間では相続は発生しません(互いに相続人になれない)。

3. 法人(権利義務の主体その2)

自然人(人間)以外で、法律によって権利義務の主体となる地位(法人格)を与えられた団体を「法人」といいます。

(1) 法人の設立と分類

法人の設立は、法律の規定によらなければなりません(法人法定主義)。現在は主に「準則主義」(要件を満たせば登記のみで設立可能)が採用されています。

  • 営利法人:利益を構成員に分配することを目的とする(株式会社など)。
  • 非営利法人:利益分配を目的としない(一般社団法人、NPO法人など)。※収益事業を行うこと自体は可能です。
  • 社団法人:人の集まり(社員)が実体。
  • 財団法人:財産の集まりが実体。

(2) 法人の権利能力の制限(34条)

法人は、以下の範囲内で権利能力を持ちます。

  1. 性質による制限:自然人に固有の権利(生命、身体、親権など)は持てません。※名誉権や財産権は持てます。
  2. 法令による制限:法律で禁止されたり制限されたりする場合があります。
  3. 目的による制限:定款で定めた「目的の範囲内」でのみ権利能力を持ちます。
    ※ただし、判例(八幡製鉄事件)は、目的の範囲を広く解釈しており、目的遂行に直接・間接に必要な行為はすべて含まれるとしています。

4. 権利能力なき社団(重要論点)

PTA、町内会、同窓会、サークルなど、実態は社団法人と同じなのに、法人格を持っていない団体を「権利能力なき社団」といいます。

(1) 成立要件(最判昭39.10.15)

単なる寄せ集めではなく、以下の要件を満たす必要があります。

  • 団体としての組織を備えている。
  • 多数決の原則が行われている。
  • 構成員の変更にもかかわらず団体が存続する。
  • 代表の方法、総会の運営、財産管理などが確定している。

(2) 財産の帰属(総有)

権利能力なき社団が持っている財産は、全構成員の「総有(そうゆう)」に属するとされます。

  • 総有とは:各メンバーに「持分権」がなく、脱退しても財産の分割請求ができない所有形態です。
  • 登記:社団名義での不動産登記はできません(法人格がないため)。代表者の個人名義(肩書き付き)などで登記することになります。

(3) 債務の帰属(構成員の責任)

社団の活動で生じた借金(債務)は、社団の財産(総有財産)から支払われます。
構成員個人は、個人的に責任を負いません(最判昭48.10.9)。つまり、町内会の借金を会員が自腹で返す義務はないということです。


5. 実戦問題にチャレンジ

問1:失踪宣告
失踪宣告に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らして正しいものはどれか。

1. 普通失踪の宣告を受けた者は、失踪期間である7年が満了した時に死亡したものとみなされるが、特別失踪の宣告を受けた者は、家庭裁判所の審判が確定した時に死亡したものとみなされる。
2. 失踪宣告が取り消された場合、失踪宣告によって財産を得た者は、その取消し前に善意で消費した部分についても、不当利得として返還する義務を負う。
3. 失踪宣告後、その取消し前に善意でした行為は、失踪宣告が取り消された後もその効力を失わないが、判例によれば、契約の当事者双方が善意であることを要する。
4. 同時死亡の推定規定により同時に死亡したと推定される者の間では、相互に相続は開始しないが、代襲相続も認められない。
5. 失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされるため、その者が生存していることが判明しても、失踪宣告が取り消されない限り、新たな法律行為をすることはできない。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 誤り。特別失踪(危難失踪)は、「危難が去った時」に死亡したものとみなされます(審判確定時ではありません)。

2. 誤り。善意の受益者は「現に利益を受けている限度(現存利益)」で返還すれば足ります。消費した(浪費した)分は返還不要です。

3. 正しい。32条1項後段の「善意」は、取引の安全と真実の権利者保護のバランスから、当事者「双方」の善意が必要と解されています。

4. 誤り。同時死亡推定では相互相続は生じませんが、代襲相続(孫への相続など)は認められます。

5. 誤り。失踪宣告はあくまで従来の住所を中心とした法律関係を終了させる制度であり、権利能力そのものを奪うわけではありません。他所で生存している本人の法律行為は有効です。

問2:法人の権利能力
法人の権利能力および行為に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1. 法人は、自然人と同様に権利能力を有するが、その範囲は定款で定められた目的に厳格に拘束され、目的遂行に直接必要な行為以外は一切の権利能力を有しない。
2. 一般社団法人は、営利を目的とすることができないため、収益事業を行うことは一切禁止されている。
3. 権利能力なき社団の財産は、構成員全員の共有に属するため、各構成員はいつでも自己の持分権の分割を請求することができる。
4. 権利能力なき社団の名義で不動産登記をすることはできないため、代表者個人の名義で登記せざるを得ないが、この場合、代表者個人の債権者が当該不動産を差し押さえるリスクがある。
5. 権利能力なき社団が取引をして債務を負った場合、その債務は構成員全員に総有的に帰属するため、債権者は構成員個人の財産に対しても強制執行をすることができる。
正解・解説を見る

正解 4

解説:

1. 誤り。判例(八幡製鉄事件)は、目的の範囲を「目的遂行に直接または間接に必要な行為」まで広く認めています。

2. 誤り。非営利法人であっても、活動資金を得るための収益事業を行うことは可能です(利益を構成員に分配できないだけです)。

3. 誤り。権利能力なき社団の財産は「総有」であり、持分権や分割請求権はありません。

4. 正しい。団体名義での登記ができないため、代表者個人名義となり、第三者からは個人の財産に見えてしまうリスクがあります。

5. 誤り。判例により、構成員個人は個人的責任を負わないとされています(有限責任)。

問3:住所と居所
住所に関する民法の規定として、正しいものはどれか。

1. 住所とは、住民基本台帳法に基づき住民票に記載された場所をいい、生活の実態とは無関係に定まる。
2. 住所が知れない場合や、日本に住所を有しない場合であっても、日本における居所を住所とみなすことはできない。
3. ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所が住所とみなされる。
4. 民法上、一人の者が同時に複数の住所を有することは認められておらず、生活の本拠は常に一箇所に特定されなければならない。
5. 法人の住所は、定款に記載された主たる事務所の所在地ではなく、代表者の住所地にあるものとされる。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 誤り。民法上の住所は「生活の本拠」という実質的な状態で決まります。

2. 誤り。住所が知れない場合等は、居所を住所とみなします(23条)。

3. 正しい。24条の規定通りです。

4. 誤り。学説上は議論がありますが、実質的な生活の本拠が複数ある場合(二重生活など)、複数の住所を認めるのが通説的見解です(条文上、単一であることを要求していません)。

5. 誤り。法人の住所は「主たる事務所の所在地」にあります(50条)。

5. まとめ

今回は、人以外の権利主体や、人が不在となった場合のルールについて解説しました。

  • 失踪宣告:普通は7年(期間満了時死亡)、特別は1年(危難去った時死亡)。取消しは「双方善意」なら保護される。
  • 法人:目的の範囲内(広く解釈)で権利能力を持つ。
  • 権利能力なき社団:財産は「総有」。構成員は個人的責任を負わない。

特に「権利能力なき社団」は、実務でもよく遭遇するテーマ(町内会、サークル、開業準備中の会社など)ですので、その法的性質(総有・個人責任なし)をしっかりと押さえておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 失踪宣告の取消しで「現存利益」とは何を指しますか?
A. 受け取った財産が形を変えて残っているもの(預金、買い換えた家など)や、生活費として消費して本来の出費を免れた分を含みます。遊興費(ギャンブルなど)で浪費してしまった分は、現存利益がないとされ、返還不要となります。
Q. 権利能力なき社団は登記できないのに、どうやって不動産を持つのですか?
A. 実務上は、代表者個人の名義で登記し、「〇〇町内会代表者 誰々」といった肩書きを付けることも認められていません(単なる個人名義になります)。そのため、代表者が勝手に売却したり、代表者の債権者に差し押さえられたりするトラブルのリスクがあります。これを避けるために「認可地縁団体」として法人化する制度があります(地方自治法)。
Q. 営利法人と非営利法人の違いは何ですか?
A. 「利益(儲け)を出してはいけない」のが非営利法人ではありません。「出した利益を構成員(株主など)に分配してはいけない」のが非営利法人です。したがって、一般社団法人も収益事業を行って、その利益を団体の活動費に充てることは全く問題ありません。

↓民法の全体像を確認する↓

民法Webテキスト一覧ページへ戻る
タイトルとURLをコピーしました