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講義8:【民法総則】代理制度を完全マスター|自己契約・双方代理と代理権の消滅

民法の中でも「代理」は、契約実務や日常生活において非常に重要な制度であり、行政書士試験でも頻出のテーマです。

「本人の代わりに契約する」というシンプルな仕組みですが、もし代理人が勝手なことをしたら? 本人と代理人の利益が対立したら? 代理権がなくなったのに契約したら? など、トラブルの種は尽きません。

今回は、代理の基本構造から、「自己契約・双方代理」「代理権の濫用」といった応用論点、そして間違いやすい「代理権の消滅事由」まで、体系的に解説します。

1. 代理制度の基本構造

代理とは、代理人が本人のためにすることを示して(顕名)法律行為を行い、その効果が直接本人に帰属する制度です。

(1) 代理成立の3要件

  1. 代理権の授与:本人から代理人へ(任意代理)または法律の規定(法定代理)。
  2. 代理行為(顕名):「Aの代理人B」として契約すること。
  3. 代理行為の有効性:契約自体が有効であること。

(2) 顕名(けんめい)がない場合(100条)

代理人が「本人のためにすること」を示さずに契約した場合、原則として「代理人自身のためにしたもの」とみなされます。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときは、本人に効果が帰属します。

(3) 代理権の濫用(107条)

代理人が、形式的には代理権の範囲内で、実質的には自分や第三者の利益を図るために(横領目的などで)契約した場合の処理です。

  • 原則:有効(本人は責任を負う)。
  • 例外:相手方が代理人の目的を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときは、無権代理とみなされる(本人は責任を負わない)。
💡 代理人の能力(102条)

代理人は「行為能力者であることを要しない」とされています。つまり、制限行為能力者(未成年者など)を代理人に選んでもOKです。
ただし、制限行為能力者が代理人として行った行為は、後から取り消すことはできません(本人がリスクを承知で選んだため)。

2. 自己契約・双方代理・利益相反行為

代理人と本人の利益が衝突するような行為は、原則として禁止されます。

(1) 禁止される行為(108条)

  • 自己契約:代理人が、契約の相手方(当事者)にもなること。
    (例)Aの代理人Bが、Aの土地を自分(B)に売る契約。
  • 双方代理:同一人物が、当事者双方の代理人になること。
    (例)売主Aの代理人Bが、同時に買主Cの代理人Bとして契約する。

効果:これらの行為は「無権代理」とみなされます(本人が追認すれば有効になります)。

(2) 例外的に許される場合

  • 本人があらかじめ許諾した行為。
  • 債務の履行(単に登記手続きをするだけなど、新たな利害対立を生まない行為)。

3. 復代理(ふくだいり)

代理人が、さらに自分の代わりに動く人(復代理人)を選任することです。

⚠️ 誰の代理人か?

復代理人は、代理人が選任しますが、「本人の代理人」です。代理人の代理人ではありません。したがって、復代理人は本人の名で(A代理人Dとして)行為します。

復任権の制限と責任

種類 選任できる場合 代理人の責任
任意代理人 ①本人の許諾があるとき
②やむを得ない事由があるとき
選任・監督責任(過失責任)
法定代理人 いつでも自由に選任可
(自己の責任で)
原則:全責任(無過失責任)
例外(やむを得ない事由):選任・監督責任

4. 代理権の消滅事由(111条)

試験直前に必ず確認すべき、暗記必須のポイントです。「本人」と「代理人」で消滅事由が異なります。

事由 本人 代理人
死亡 消滅する 消滅する
破産手続開始 消滅する
(委任の終了事由)
消滅する
後見開始の審判 消滅しない 消滅する
💡 注意点

1. 本人が後見開始を受けても、代理権は消滅しません(代理人を必要とする状態だから)。
2. 代理人が後見開始を受けると消滅しますが、「保佐開始」では消滅しません。


5. 実戦問題にチャレンジ

問1:代理権の消滅
代理権の消滅に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 任意代理権は、本人が死亡したことによって消滅するが、法定代理権は本人の死亡によっても消滅しない。
2. 代理人が後見開始の審判を受けたときは代理権は消滅するが、保佐開始の審判を受けたときは代理権は消滅しない。
3. 本人が破産手続開始の決定を受けたときは、委任による代理権は消滅するが、代理人が破産手続開始の決定を受けたときは代理権は消滅しない。
4. 代理人が死亡した場合、その相続人が代理人の地位を承継し、代理権は消滅しない。
5. 本人が後見開始の審判を受けたときは、判断能力を喪失しているため、任意代理権は当然に消滅する。
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正解 2

解説:

1. 誤り。法定代理権も本人の死亡により消滅します(親権など)。

2. 正しい。後見開始は消滅事由ですが、保佐開始は消滅事由ではありません。

3. 誤り。代理人の破産も代理権消滅事由です(111条1項2号)。

4. 誤り。代理権は一身専属的なものであり、死亡により消滅します。相続されません。

5. 誤り。本人の後見開始は代理権消滅事由ではありません。

問2:自己契約・双方代理
AがBに土地売却の代理権を与えた場合における自己契約・双方代理に関する記述として、民法の規定および判例に照らして妥当なものはどれか。

1. 代理人Bが、Aの許諾を得て買主Cの代理人となって売買契約を締結した場合、この契約は双方代理として無効となる。
2. 代理人Bが、自ら買主となってAの土地を買い受ける契約を締結した場合、Aがあらかじめ許諾していたとしても、自己契約として無権代理となる。
3. 司法書士が登記申請手続きにおいて、売主と買主の双方を代理することは、双方代理として禁止され、無権代理となる。
4. 代理人Bが、Aの利益を害し自己の利益を図る目的で契約を締結した場合(利益相反行為)、これは自己契約には当たらないため、相手方がその目的を知っていたとしても有効な代理行為となる。
5. 自己契約または双方代理に該当する行為は、無権代理とみなされるため、本人が事後に追認すれば、契約時に遡って有効となる。
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正解 5

解説:

1. 誤り。本人の許諾がある場合は例外的に有効です。

2. 誤り。本人の許諾があれば自己契約も有効です。

3. 誤り。登記申請は「債務の履行」に該当し、新たな利害対立を生まないため、双方代理が許されます。

4. 誤り。利益相反行為(代理権濫用含む)について相手方が悪意・有過失の場合、無権代理とみなされます(107条)。

5. 正しい。自己契約・双方代理の効果は「無権代理」であり、追認により有効になります。

問3:復代理
復代理に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 任意代理人は、本人の許諾を得たときに限り復代理人を選任することができ、やむを得ない事由があるだけでは選任できない。
2. 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由により選任した場合を除き、復代理人の行為について全責任を負う。
3. 復代理人は、代理人の代理人であるため、代理行為を行う際には「代理人Bの代理人D」であることを顕名しなければならない。
4. 代理人が復代理人を選任した場合、代理人の代理権は消滅し、以後は復代理人のみが本人を代理する。
5. 復代理人が選任された場合、復代理人は本人に対して権利義務を有するが、代理人の監督下にあるため、第三者に対しては権利義務を有しない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。やむを得ない事由がある場合も選任できます(104条)。

2. 正しい。法定代理人は自由に選任できる反面、原則として無過失責任(全責任)を負います。

3. 誤り。復代理人は「本人の代理人」ですので、「本人Aの代理人D」と顕名します。

4. 誤り。復代理人を選任しても、代理人の代理権は消滅しません。

5. 誤り。復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利義務を有します(106条2項)。

6. まとめ

今回は、代理制度の基本と重要論点について解説しました。

  • 代理権の濫用(107条):相手方が悪意・有過失なら無権代理(無効)。
  • 自己契約・双方代理(108条):原則無権代理。許諾・債務履行なら有効。
  • 消滅事由(111条):本人・代理人の死亡と破産は消滅。後見開始は代理人のみ消滅。

特に、107条(濫用)や108条(自己契約等)の効果が「無効」ではなく「無権代理(追認可能)」である点は、記述式で問われると間違えやすいので注意してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 制限行為能力者が代理人になれるのはなぜですか?
A. 代理行為の効果(メリットもデメリットも)は全て本人に帰属し、代理人自身には損害がないからです。本人が「この未成年者に任せる」と判断したなら、それを認めても問題ないという考え方です。
Q. 「代理人の破産」で代理権が消滅するのはなぜですか?
A. 破産した人は他人の財産を管理するのに適さないと考えられるからです(信頼関係の破壊)。
Q. 復代理人が契約したとき、本人は誰に責任を追及できますか?
A. 復代理人本人に対してはもちろん、選任した代理人に対しても(選任監督上の過失などがあれば)責任を追及できます。

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