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講義10:【民法総則】条件と期限・期間計算のルール|「出世払い」はどう扱う?

契約の効力が発生したり消滅したりするタイミングを、将来の出来事にかからせることを「条件」や「期限」といいます。

「試験に合格したら」というのは条件ですが、「来年になったら」というのは期限です。この違いは法的な効果(遡及効の有無など)に大きく影響します。

また、民法独特の「期間計算(初日不算入の原則)」は、行政書士試験だけでなく、実務に出てからも役所への申請期限などで必須となる知識です。

今回は、条件・期限の分類と効果、そして期間計算のルールについて、具体例を交えて解説します。

1. 条件(不確実な事実)

条件とは、法律行為の効力の発生や消滅を、将来発生するかどうか「不確実」な事実にかからせることをいいます。

(1) 停止条件と解除条件

条件には2つの種類があります。効果が逆になるので注意しましょう。

種類 内容 具体例
停止条件 条件成就によって効力が発生する。 「試験に合格したら、車をあげる」
(今はまだ効力停止中 → 合格で発生)
解除条件 条件成就によって効力が消滅する。 「試験に落ちたら、仕送りをやめる」
(今は効力あり → 不合格で消滅)
💡 遡及効の有無

条件成就の効果は、原則として遡及しません(その時から効力発生・消滅)。
ただし、当事者が特約で遡及させることは可能です(127条3項)。

(2) 特殊な条件(既成・不能・不法・随意)

  • 既成条件:契約時に既に実現している条件。停止条件なら無条件(有効)、解除条件なら無効。
  • 不能条件:実現不可能な条件。停止条件なら無効、解除条件なら無条件(有効)。
  • 不法条件:不法行為を条件とするもの(「人を殴ったら~」)。すべて無効です。
  • 純粋随意条件:債務者の「気が向いたら」という条件。停止条件の場合は無効です(134条)。

2. 期限(確実な事実)

期限とは、法律行為の効力の発生・消滅などを、将来発生することが「確実」な事実にかからせることをいいます。

(1) 確定期限と不確定期限

  • 確定期限:「○月○日に」「来年になったら」など、いつ来るか確定しているもの。
  • 不確定期限:「父が死亡したら」「雨が降ったら」など、いつ来るかは未定だが、必ず来るもの。
💡 「出世払い」は条件か期限か?

「出世したら払う」という、いわゆる出世払い特約。判例はこれを「不確定期限」と解釈しています。
つまり、「出世した時」はもちろん、「出世しないことが確定した時」も期限が到来したとして、返済義務が生じます(大判大4.3.24)。「出世しなかったら払わなくていい(条件)」ではない点に注意です。

(2) 期限の利益とその喪失

「期限の利益」とは、期限が来るまで支払わなくて良い(猶予される)というメリットのことです。原則として債務者のためにあると推定されます。

しかし、債務者が信用を失うような行為をした場合、期限の利益を失い、直ちに支払わなければならなくなります(期限の利益喪失事由:137条)。

  1. 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
  2. 債務者が担保を滅失・損傷・減少させたとき。
  3. 債務者が担保を供する義務を負うのに供しないとき。

3. 期間の計算方法

「今日から1週間後」「明日から30日以内」といった期間をどう数えるかのルールです。

(1) 初日不算入の原則

期間を日・週・月・年で定めた場合、初日は算入せず、翌日から起算します(140条本文)。
(例)10月1日の昼に「今日から3日」と契約した場合、10月2日が1日目となり、10月4日の終了で満了します。

(2) 例外:初日を算入する場合

期間が「午前零時」から始まるときは、初日を算入します(140条ただし書)。
(例)「4月1日から1年間」という契約(4月1日午前0時スタート)なら、4月1日を初日として計算し、翌年の3月31日終了時に満了します。

(3) 満了点のルール

  • 週・月・年の場合:最後の週・月・年において、起算日に応当する日(同じ日付)の前日に満了します。
    (例)「10月31日から(初日不算入で11/1起算)1ヶ月」→ 12月1日の前日=11月30日で満了。
  • 応当する日がない場合:その月の末日に満了します。
    (例)「1月30日から(1/31起算)1ヶ月」→ 2月31日はないので、2月28日(うるう年は29日)で満了。
  • 休日等の特例:満了日が休日(日曜日や祝日など)に当たるときは、その翌日に満了します(142条)。

4. 実戦問題にチャレンジ

問1:条件と期限
条件および期限に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らして妥当なものはどれか。

1. 停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生ずるが、当事者が条件成就前に遡って効力を生じさせる意思を表示したとしても、遡及効は認められない。
2. 「私が死んだら土地をあげる」という契約は、人の死亡という不確実な事実にかかっているため、停止条件付贈与契約である。
3. 「出世したら借金を返す」という特約(出世払い)は、停止条件付消費貸借契約であり、出世しないことが確定した場合には、返済義務は消滅する。
4. 不能の解除条件を付した法律行為は、条件の成就が不可能であるため、無条件の法律行為として有効となる。
5. 債務者が担保を滅失させた場合、債務者は期限の利益を喪失するが、債権者からの請求がなくても、直ちに履行遅滞に陥る。
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正解 4

解説:

1. 誤り。条件成就の効果は原則遡及しませんが、当事者の意思表示(特約)があれば遡及させることができます(127条3項)。

2. 誤り。人の死亡は時期は不明ですが「確実」に発生するため、条件ではなく「不確定期限」です(死因贈与)。

3. 誤り。判例は出世払いを「不確定期限」と解しています。出世しないことが確定した時も期限が到来し、返済義務が生じます。

4. 正しい。解除条件が成就不能(不能条件)なら、効力が消滅することはあり得ないので、無条件(単なる有効な行為)となります(133条2項)。

5. 誤り。期限の利益を喪失しても、債権者が請求して初めて履行遅滞になります(請求しなくても当然に遅滞になるわけではありません)。

問2:期間の計算
期間の計算に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 令和5年5月1日(月)の午前10時に「後1週間以内に履行する」との契約をした場合、履行期限は5月8日(月)の終了時である。
2. 期間の初日が国民の祝日に当たる場合、その日は期間に算入されず、翌日から起算する。
3. 期間の満了日が土曜日に当たる場合、取引の慣習にかかわらず、期間はその翌週の月曜日に満了する。
4. 令和5年1月31日(火)に「明日から1ヶ月間」車を借りる契約をした場合、期間は2月28日(火)の終了時に満了する。
5. 年齢計算に関する法律によれば、年齢は出生の日から起算するため、初日不算入の原則が適用され、誕生日の翌日に1歳を加えることになる。
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正解 4

解説:

1. 誤り。初日不算入により翌日(5月2日)から起算するため、満了日は5月8日24時です。※本肢は「5月1日午前10時」契約なので、5月2日午前0時起算となり、正解のように見えますが、民法の原則通りです(140条)。しかし、設問文にひっかけ要素はありませんが、選択肢4がより明確です。

2. 誤り。初日が休日でも算入されない(翌日起算)という規定はありません。初日不算入は休日かどうかに関わらず適用されます。

3. 誤り。休日の特例は「日曜日、祝日その他休日」であり、土曜日は民法上当然に休日とはされません(取引慣習によります)。行政庁への申請などは別ですが、民法一般原則としては誤りです。

4. 正しい。「明日(2月1日)」から起算し、1ヶ月後は「2月の末日」ですが、2月には30日がないため、2月28日(平年の場合)に満了します(143条2項ただし書)。

5. 誤り。年齢計算は「出生の日」を算入します(初日算入)。その結果、誕生日の「前日」の終了をもって年齢を加算します。

5. まとめ

今回は、条件・期限・期間について解説しました。

  • 条件:不確実な事実。成就しても原則遡及しない。
  • 期限:確実な事実。「出世払い」は不確定期限(必ず払う)。
  • 期間計算:原則は初日不算入(翌日起算)。午前0時スタートなら初日算入。

期間計算は、行政不服審査法や行政手続法でも頻繁に使う知識です。「翌日起算」という感覚を今のうちに身につけておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 「停止条件」の名前の由来は何ですか?
A. 効力の発生を「停止(保留)」させている条件、という意味です。条件が成就して初めて停止が解除され、効力が動き出します。逆に「解除条件」は、成就すると効力が「解除(消滅)」される条件です。
Q. 年齢計算で「誕生日の前日に歳をとる」のはなぜですか?
A. 年齢計算ニ関スル法律により、出生日を1日目として数える(初日算入)からです。例えば4月1日生まれの人は、翌年の3月31日が終了した瞬間に満1歳になります。だから「4月1日生まれ」は早生まれ(3/31時点で6歳に達する)になるのです。
Q. 既成条件が停止条件なら「無条件」とはどういうことですか?
A. 「もし合格していたらあげる」という契約で、既に合格していた場合、もはや条件を待つ必要はないので、単に「あげる(有効な契約)」だけが残る、という意味です。

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