不動産を夫婦で購入したり、親から相続したりして「共有」の状態になることはよくあります。しかし、共有者が増えたり、意見が対立したりすると、不動産の管理や処分が難しくなります。
そのため、民法には共有物をスムーズに扱うためのルールや、共有状態を解消するための手続きが詳しく定められています。特に2023年の民法改正では、所在不明の共有者がいる場合の対応などが大きく変わり、試験の重要ポイントとなっています。
今回は、共有の基本的なルール(保存・管理・変更)の違いと、分割や持分譲渡に関する最新の改正点を整理して解説します。
1. 共有の意味と持分
共有とは、一つの物を複数人で共同所有することです。各共有者は「持分(所有権の割合)」を持っています。
持分の割合と性質
- 割合:合意で決められますが、不明な場合は「平等(相等しい)」と推定されます(250条)。
- 主張:第三者に対する「共有物の返還請求」は全員で行う必要がありますが、不法占拠者に対する「明渡請求」は単独で可能です(保存行為)。
2. 共有物の利用・管理ルール(重要)
共有物をどう扱うかによって、必要な同意のレベルが異なります。この表は試験で頻出ですので、必ず暗記しましょう。
| 行為の種類 | 内容 | 要件(誰ができるか) |
|---|---|---|
| 保存行為 | 現状を維持する行為。 (修繕、不法占拠者の排除など) |
各共有者が単独でできる |
| 管理行為 | 利用・改良する行為。 (賃貸借契約の解除、短期賃貸借など) ※軽微変更もここに含まれる |
持分の価格の過半数で決する |
| 変更行為 | 物理的に変化させる・処分する行為。 (売却、抵当権設定、大修繕など) |
共有者全員の同意が必要 |
以前は「変更」には全員の同意が必要でしたが、改正により「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)」については、管理行為として「持分の過半数」で決定できるようになりました(砂利道の舗装など)。
共有物の使用
各共有者は、共有物の「全部」について、持分に応じた使用ができます(249条)。
もし、一人が独占して使用している場合、他の共有者は「明け渡せ」とは言えませんが、持分に応じた「使用料(不当利得)」を請求できます。
3. 共有物の分割(共有の解消)
共有状態はトラブルの元になりやすいため、各共有者は「いつでも」分割を請求できます(256条)。
※ただし、5年以内の不分割特約を結ぶことは可能です。
分割の方法
- 協議分割:全員で話し合って決める(方法は自由)。
- 裁判による分割:協議が整わない場合、裁判所に請求する。
- 現物分割:物を物理的に分ける。
- 賠償分割:誰かが取得し、他の人に代償金を払う。
- 競売分割:売って現金を分ける(最終手段)。
4. 所在等不明共有者に関する新制度(改正法)
共有者の中に「どこにいるかわからない人(所在不明)」や「誰かわからない人(氏名不詳)」がいると、全員の同意が必要な変更行為などができず、土地が塩漬けになってしまいます。
そこで、以下の新制度が導入されました。
(1) 持分取得・譲渡の裁判(262条の2、3)
裁判所の決定により、不明な共有者の持分を動かすことができます。
- 持分取得:申立人(他の共有者)が、不明者の持分を買い取って自分のものにする。
- 持分譲渡:申立人が、不明者の持分も含めて不動産全体を第三者に売却する(権限付与)。
※いずれも、不明者の持分の時価相当額(供託金)を支払う必要があります。
(2) 変更・管理の裁判(251条、252条)
不明者がいて同意がとれない場合、裁判所の決定を得れば、「不明者以外の同意(または過半数)」だけで、変更行為や管理行為ができるようになります。
相続開始から10年を経過していない遺産共有持分については、原則としてこれらの新制度(持分取得など)は使えません(遺産分割協議を優先するため)。
5. 持分の放棄と死亡
共有者の一人が、持分を放棄したり、相続人なくして死亡した場合、その持分はどうなるでしょうか?
- 原則:他の共有者に帰属します(255条)。
- 特別縁故者がいる場合:相続人不存在の場合、まずは特別縁故者(内縁の妻など)への財産分与が優先され、それでも残った場合にのみ、他の共有者に帰属します(判例)。
6. 実戦問題にチャレンジ
1. 共有物の変更行為には共有者全員の同意が必要であるが、その形状または効用の著しい変更を伴わない軽微な変更については、持分の価格の過半数で決することができる。
2. 共有物に対する不法占拠者への明渡請求は、保存行為に当たるため、各共有者が単独で行うことができるが、損害賠償請求については、各共有者は自己の持分を超えて全額を請求することはできない。
3. 共有者の一人が共有物を単独で占有使用している場合、他の共有者は、当然にその明渡しを請求することができる。
4. 共有物の賃貸借契約を解除する行為は、管理行為に当たるため、共有者の頭数の過半数をもって決定しなければならない。
5. 共有者の一人が、共有者全員の同意を得ずに共有物全体を第三者に売却した場合、その売買契約は全体として無効となる。
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正解 1・2(複数正解)
解説:
1. 妥当。改正法により、軽微変更は管理行為(過半数決議)として扱われます。
2. 妥当。明渡請求(保存行為)は単独可、損害賠償(金銭)は可分債権なので持分限度でのみ請求可です。
3. 妥当でない。単独使用している共有者には「使用権」があるため、当然には明渡し請求できません(持分に応じた不当利得請求のみ可)。
4. 妥当でない。管理行為の要件は「持分の価格の過半数」です(頭数の過半数ではありません)。
5. 妥当でない。他人の持分を含む売買契約(他人物売買)として有効であり、自己の持分の範囲では有効に所有権が移転します。
1. 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる。
2. 共有物の分割は、現物分割が原則であるが、裁判所は、共有者の一人に共有物を取得させ、他の共有者に価格を賠償させる方法(賠償分割)を命ずることはできない。
3. 遺産としての共有状態にある不動産については、相続開始から10年を経過するまでは、家庭裁判所の遺産分割審判によるべきであり、地方裁判所に共有物分割訴訟を提起することはできない。
4. 共有物分割の裁判において、現物分割をすると価格が著しく減少するおそれがあるときは、裁判所は競売を命じなければならない。
5. 共有者の一人が所在不明である場合、他の共有者は、裁判所の許可を得て、不明者の持分を供託した上で、単独で共有物分割の手続きを完了することができる。
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正解 1
解説:
1. 正しい。共有物分割請求の自由と、不分割特約(最長5年・更新可)の規定です。
2. 誤り。裁判所は賠償分割を命じることができます(258条2項2号)。
3. 誤り。相続財産であっても、共有物分割訴訟自体は可能です(ただし、裁判所は遺産分割を優先させるために手続きを中止する等の措置をとることがありますが、「できない」わけではありません。改正により相続開始10年経過後は共有物分割も容易になりました)。※注:厳密には、遺産共有の場合は遺産分割が原則ですが、10年経過等の要件を満たせば共有物分割も可能です。選択肢1が明確に正しいため、3は誤りとなります。
4. 誤り。競売分割は「分割できないとき」や「価格が減少するおそれがあるとき」に命じることが「できる」方法であり、必須(なければならない)ではありません(賠償分割も検討されます)。
5. 誤り。不明者の持分を取得する制度(262条の2)などはありますが、勝手に分割手続きを完了できる制度ではありません。
1. 共有者が他の共有者を知ることができない場合、裁判所の決定を得れば、所在等不明者の同意を得ることなく、共有物に変更を加えることができる。
2. 所在等不明共有者の持分を取得するための裁判の申し立ては、共有者であれば単独で行うことができるが、取得する持分の対価を供託する必要はない。
3. 所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡する権限を付与する裁判は、共有者全員(不明者を除く)の同意がなければ申し立てることができない。
4. 相続財産に属する共有持分について、相続人が所在不明である場合、相続開始から10年を経過していなくても、持分取得の裁判を申し立てることができる。
5. 所在等不明共有者の持分取得制度は、不動産の共有に限られ、用益物権(地上権など)の準共有には適用されない。
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正解 1
解説:
1. 正しい。不明者以外の同意(または過半数)で変更・管理ができるようになる制度です(251条2項)。
2. 誤り。時価相当額の供託(または支払)が必要です。
3. 誤り(※)。譲渡権限付与の裁判は、不明者以外の「全員」が持分を譲渡する場合に利用できる制度ですが、申立て自体は「共有者(一人でも可)」が行えます(262条の3)。要件として全員の譲渡が必要ですが、申立人が全員である必要はありません。
4. 誤り。相続財産の場合は、原則として相続開始から10年経過が必要です(262条の2第3項)。
5. 誤り。準共有(所有権以外の財産権)にも準用されます(262条の2第5項)。
7. まとめ
今回は、共有のルールと改正点について解説しました。
- 保存・管理・変更:単独・過半数・全員。軽微変更は過半数。
- 裁判分割:現物・賠償・競売の3パターン。
- 不明共有者対策:裁判所の決定で、不明者抜きでの変更や、持分取得が可能に。
特に「軽微変更」と「所在等不明共有者」の論点は、改正されたばかりで出題可能性が高いホットな分野です。要件を正確に押さえておきましょう。
よくある質問(FAQ)
- Q. 共有物の「変更」と「軽微変更」の境目は何ですか?
- A. 「形状又は効用の著しい変更」を伴うかどうかが基準です。例えば、農地を宅地に造成するのは「変更(全員同意)」ですが、砂利道をアスファルト舗装するのは「軽微変更(過半数)」とされます。
- Q. 共有持分は自由に売れますか?
- A. はい、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なく自由に売却(譲渡)できます。ただし、共有物「全体」を売るには全員の同意が必要です。
- Q. 共有者が死亡して相続人がいない場合、持分はどうなりますか?
- A. 最終的には「他の共有者」に帰属します(255条)。ただし、まずは「特別縁故者(内縁の妻など)」への分与が検討され、それでも残った場合にのみ他の共有者に行きます(国庫には帰属しません)。
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