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講義19:【民法物権】用益物権まとめ|地上権・永小作権・地役権の違いと対抗要件

他人の土地を利用する権利には、「賃借権(債権)」と「用益物権(物権)」があります。

実務で最も多く使われるのは賃借権ですが、試験では「地上権」「永小作権」「地役権」といった用益物権の特徴や、賃借権との違いが問われます。

特に「地役権」は、通行権や日照確保などの身近な問題に関わるため、記述式でも狙われやすい分野です。「自分の土地(要役地)を売ったら、地役権はどうなる?」といった移転のルール(付従性)などをしっかり理解しておきましょう。

1. 地上権(265条〜)

他人の土地において、「工作物(建物など)又は竹木を所有するため」に、その土地を使用する物権です。

賃借権との違い(メリット)

項目 地上権(物権) 賃借権(債権)
譲渡・転貸 自由にできる
(地主の承諾不要)
地主の承諾が必要
対抗力 登記すれば誰にでも主張可 原則、貸主にしか主張不可
(借地借家法等で修正あり)
地代 無償も可能
(要素ではない)
賃料は必須要素
抵当権 設定できる 設定できない
💡 区分地上権(269条の2)

「地下鉄を通すため」や「送電線を架けるため」に、地下や空間の上下の範囲を定めて設定する地上権です。竹木の所有目的では設定できません(木は地面から空中に伸びるものだからです)。

2. 永小作権(270条〜)

「小作料を支払って」他人の土地で「耕作又は牧畜」をする物権です。

  • 小作料:支払いは必須要素です(地上権との違い)。
  • 存続期間:20年以上50年以下。更新しても50年を超えられません。
  • 譲渡・賃貸:原則自由ですが、特約で禁止することも可能です(地上権との違い)。

3. 地役権(280条〜)

「自分の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用する権利」です。
(例)Aさんの土地(要役地)から公道に出るために、Bさんの土地(承役地)を通行する。

(1) 性質(付従性と不可分性)

① 付従性(281条)

地役権は、要役地の所有権にくっついています。

  • 移転:要役地の所有権が移転すれば、地役権も一緒に移転します。
    ※要役地の所有権移転登記があれば、地役権の移転登記がなくても承役地所有者に対抗できます(判例)。
  • 分離処分の禁止:地役権だけを切り離して売ったり、地役権だけに抵当権を設定したりすることはできません。

② 不可分性(282条・284条)

地役権は土地全体のために存在するため、簡単には消滅しません。

  • 土地が分割されても、各部分のために地役権は存続します。
  • 共有者の一人が時効取得すれば、全員が取得します。
  • 共有者の一人について時効の中断(更新)があれば、全員に効力が及びます。

(2) 地役権の時効取得(283条)

「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるもの」に限り、時効取得できます。
(例)他人の土地に「自ら通路を開設」して、20年間通行し続けた場合(判例)。単に通っていただけではダメです。


4. 実戦問題にチャレンジ

問1:地上権と永小作権
地上権および永小作権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 地上権は、工作物または竹木を所有する目的で設定されるが、区分地上権は、工作物または竹木を所有するため、地下または空間に上下の範囲を定めて設定することができる。
2. 地上権者は、土地所有者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲渡したり、賃貸したりすることはできない。
3. 永小作権は、小作料を支払って耕作または牧畜をする権利であり、小作料の支払いは永小作権の成立要件である。
4. 永小作権の存続期間は、契約で定める場合、20年以上50年以下としなければならず、更新する場合でも更新の時から20年を超えることはできない。
5. 地上権者が土地所有者に地代を支払う特約がある場合において、2年以上地代を滞納したときは、土地所有者は地上権の消滅を請求できるが、永小作権にはこのような消滅請求の規定はない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。区分地上権は「竹木」の所有目的では設定できません(269条の2第1項)。

2. 誤り。地上権は物権であり、原則として自由に譲渡・賃貸できます(承諾不要)。

3. 正しい。永小作権において小作料の支払いは要素です(270条)。地上権の地代は要素ではありません。

4. 誤り。更新後の期間も「50年」を超えることができません(278条2項)。

5. 誤り。永小作権でも、引き続き2年以上小作料を怠れば消滅請求ができます(276条)。

問2:地役権の性質
地役権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らして妥当なものはどれか。

1. 地役権は、要役地の所有権に従たる権利であるため、要役地から分離して譲渡することはできないが、要役地とは別に抵当権の目的とすることはできる。
2. 土地の共有者の一人が、時効によって地役権を取得したときは、他の共有者もこれを取得する。
3. 要役地が共有である場合、共有者の一人は、自己の持分についてのみ地役権を消滅させることができる。
4. 通行地役権を時効取得するためには、要役地所有者によって通路が開設されている必要はなく、長期間継続して通行している事実があれば足りる。
5. 要役地の所有権が移転した場合、地役権の移転を承役地所有者に対抗するためには、地役権の移転登記が必要である。
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正解 2

解説:

1. 誤り。分離譲渡も、他の権利(抵当権等)の目的とすることもできません(281条2項)。

2. 正しい。地役権の不可分性により、一人が取得すれば全員が取得します(284条1項)。

3. 誤り。共有者の一人は、自己の持分について地役権を消滅させることはできません(282条1項)。

4. 誤り。判例は、要役地所有者による「通路の開設」が必要としています。

5. 誤り。要役地の所有権移転登記があれば、地役権の移転登記がなくても対抗できます(付従性)。

問3:地役権の時効
地役権の時効取得および時効消滅に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1. 承役地が第三者によって時効取得された場合であっても、地役権は消滅することはない。
2. 地役権の時効取得に必要な期間は、善意無過失の場合であっても20年であり、10年の短期取得時効は適用されない。
3. 継続的に行使される地役権(通行地役権など)の消滅時効は、その行使を妨げる事実が生じた時から進行する。
4. 要役地の共有者の一人が、時効の中断(更新)事由を生じさせたとしても、他の共有者にはその効力は及ばない。
5. 地役権者が、設定された権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅することはない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。承役地が時効取得されれば、その反射的効果として地役権は消滅します(289条)。

2. 誤り。地役権の時効取得にも163条が適用され、善意無過失なら10年で取得できます。

3. 正しい。継続的地役権は「妨害事実が生じた時」から、不継続地役権は「最後の行使の時」から消滅時効が進行します(291条)。

4. 誤り。共有者の一人による時効中断(更新)は、他の共有者のためにも効力を生じます(292条)。※取得時効の完成猶予・更新の話。

5. 誤り。一部不行使の場合、その部分のみ時効消滅します(293条)。

5. まとめ

今回は、用益物権について解説しました。

  • 地上権:譲渡自由、抵当権OK。区分地上権は竹木NG。
  • 永小作権:小作料必須。譲渡禁止特約OK。
  • 地役権:付従性(一緒に移転)、不可分性(一人が取得・中断すれば全員に効果)。時効取得には「通路開設」が必要。

特に地役権の「共有者の一人が〇〇したら全員に及ぶ(有利なことは及ぶ)」という不可分性のルールは、試験でよく問われるポイントです。

よくある質問(FAQ)

Q. 地上権と土地賃借権はどう使い分けるのですか?
A. 地上権は借主に強力な権利(譲渡自由など)を与えるため、地主にとっては不利です。そのため、日本の実務では圧倒的に「土地賃借権」が利用されています。地上権が使われるのは、地下鉄や送電線など公共性の高い事業(区分地上権)が多いです。
Q. 地役権の「要役地」と「承役地」が覚えられません。
A. 「要役地=便益をする土地(主役)」「承役地=負担を諾する土地(脇役)」と覚えましょう。地役権は要役地(主役)のために働く権利なので、要役地が売られれば一緒についていきます。
Q. 永小作権はなぜ小作料が必須なのですか?
A. 歴史的な経緯から、永小作権は「小作料を払って農業をする権利」と定義されているからです。無償で貸し借りする場合は「使用貸借」になります。

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