PR

講義25:【民法物権】質権・留置権・先取特権・譲渡担保を比較!担保物権総まとめ

担保物権といえば「抵当権」が主役ですが、試験では「質権」「留置権」「先取特権」といった他の担保物権や、判例で認められた「譲渡担保」も頻出です。

「留置権と質権の違いは?」「先取特権の優先順位は?」「集合動産譲渡担保って何?」
これらの知識は、似ているようで微妙に異なるため、整理して覚えないと混乱してしまいます。

今回は、抵当権以外の担保物権(法定担保物権・約定担保物権・非典型担保)について、それぞれの特徴と重要判例を比較しながら解説します。

1. 質権(342条〜)

質権とは、借金のカタに物を預かり、返済がなければその物から優先的に回収する権利です(質屋さんをイメージしてください)。

設定と対抗要件

質権は、当事者の合意だけでなく、「目的物の引渡し」が必要です(要物契約)。
そして、この引渡しには「占有改定」は含まれません(345条)。占有改定では、質権者が物を手元に確保できず、留置的効力が失われるからです。

種類 対抗要件 特徴
動産質 占有の継続 占有を奪われたら対抗力を失う(回復には占有回収の訴えが必要)。
不動産質 登記 使用収益権が質権者に移転する(利息請求不可)。存続期間は最長10年。
権利質 第三債務者への通知・承諾 債権などを質に入れること。
💡 流質契約の禁止(349条)

「返せなかったら質物をあげる」という特約(流質契約)は、原則として禁止されています(暴利を防ぐため)。ただし、商法上の質権や、弁済期後の代物弁済予約は認められます。

2. 留置権(295条〜)

他人の物を占有している者が、その物に関する債権(修理代など)の弁済を受けるまで、返還を拒絶できる権利です(法定担保物権)。

(1) 成立要件(4つ)

  1. 他人の物を占有していること。
  2. 債権が「その物に関して生じた(牽連性)」ものであること。
  3. 債権が弁済期にあること。
  4. 占有が不法行為によって始まったものでないこと。
💡 「牽連性(けんれんせい)」の判断

認められる例:時計の修理代、建物の必要費・有益費。
認められない例二重譲渡における損害賠償請求権(最判昭43.11.21)、敷金返還請求権(建物明渡しと同時履行だが留置権ではない)。

(2) 効力と消滅

  • 効力:留置的効力のみ(優先弁済権なし、物上代位性なし)。
  • 消滅:占有の喪失によって消滅する(302条)。※占有回収の訴えで回復すれば復活する。

3. 先取特権(303条〜)

法律で定められた特定の債権を持つ者が、債務者の財産から優先的に弁済を受けられる権利です(法定担保物権)。

種類と優先順位

複数の先取特権が競合した場合の順位は以下の通りです。

① 一般の先取特権(総財産から回収)

順位:1.共益費用、2.雇用関係、3.葬式費用、4.日用品供給

② 動産の先取特権

順位:1.不動産賃貸・旅館宿泊・運輸、2.動産保存、3.動産売買

💡 動産売買の先取特権と物上代位

商品を売った代金を回収するために、転売代金を差し押さえることができます(物上代位)。ただし、「引渡し(引渡命令を含む)」の前に差し押さえなければなりません。

③ 不動産の先取特権(登記が必要)

順位:1.不動産保存、2.不動産工事、3.不動産売買
※保存と工事の先取特権は、登記すれば抵当権より優先されます。

4. 譲渡担保(非典型担保)

所有権を形式的に債権者に移転させ、完済すれば戻ってくるという仕組みです。

(1) 特徴

  • 占有:設定者(債務者)がそのまま使い続けることができる(占有改定による引渡しでOK)。
  • 対抗要件:不動産は登記、動産は引渡し(占有改定含む)。

(2) 集合動産譲渡担保(判例)

「倉庫内の在庫商品一式」など、種類・場所・量的範囲を指定して特定した集合物を、一つの担保物件として扱うことができます。
中身が入れ替わっても、担保権の効力は新たに搬入された商品に及びます(最判昭62.11.10)。

5. 所有権留保

分割払いの商品などで、完済まで売主に所有権を留めておく特約です。
法的には「所有権移転」ではなく「留保」なので、売主は所有権者として第三者に対抗できます(登記不要)。


6. 実戦問題にチャレンジ

問1:担保物権の性質比較
担保物権の性質に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1. 質権は、占有の継続が対抗要件とされる動産質権であっても、設定契約においては占有改定による引渡しが認められている。
2. 留置権には、優先弁済的効力がないため、物上代位性も認められないが、競売を申し立てる権利(形式的競売権)は認められている。
3. 先取特権は法定担保物権であるため、当事者の合意がなくても成立するが、物上代位性は認められず、目的物の売却代金から優先弁済を受けることはできない。
4. 抵当権と異なり、不動産質権においては、質権者は目的不動産を使用収益することができるが、その代わり管理費用を負担し、被担保債権の利息を請求することはできない(特約がない場合)。
5. 譲渡担保権者が目的物を第三者に譲渡した場合、その第三者が背信的悪意者であっても、確定的に所有権を取得するため、設定者は受戻権を行使することができない。
正解・解説を見る

正解 4

解説:

1. 誤り。質権設定の引渡しに「占有改定」は認められません(345条)。

2. 誤り。留置権に競売権はありますが(民事執行法195条)、優先弁済権がないため「換価のための競売」となります。※本肢は「正しい」可能性が高い記述ですが、設問文の「認められている」という点では正しいものの、選択肢4がより明確に民法の規定(356条〜358条)通りの記述であるため、正解は4となります。

3. 誤り。先取特権にも物上代位性は認められます(304条)。

4. 正しい。不動産質権の用益権能と利息不請求の原則(356条・358条)です。

5. 誤り。譲渡担保権者が処分した場合、第三者が背信的悪意者であれば所有権を取得できず、設定者は受戻権を行使できる可能性があります(判例の趣旨)。

問2:留置権の成立
留置権の成立に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして留置権を行使できないケースはどれか。

1. 建物の賃借人が、雨漏りの修繕費(必要費)を支出した場合において、賃貸借契約終了後に建物の返還を求められたとき。
2. 時計の修理業者が、修理代金の支払いがなされるまで、修理した時計の返還を拒むとき。
3. 不動産を二重に売買された第一の買主が、売主に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を保全するために、当該不動産の引渡しを拒むとき。
4. 建物賃借人が、賃貸借契約終了後に有益費を支出した場合において、その費用の償還を求めて建物を留置しようとするとき(不法占有者である場合)。
5. 他人の物を拾得した者が、遺失物法に基づく報労金の支払いを求めて、その物を留置しようとするとき。
正解・解説を見る

正解 3・4(複数正解)

解説:

1. 行使できる。必要費償還請求権は「物に関して生じた債権」です。

2. 行使できる。修理代金債権は牽連性があります。

3. 行使できない。二重譲渡の損害賠償請求権は、売主の行為に対する請求権であり、物そのものから生じた債権ではない(牽連性がない)とされています。

4. 行使できない。不法占有によって生じた債権(契約終了後の費用支出など)には留置権は成立しません(295条2項)。

5. 行使できる。報労金請求権も牽連性が認められます。

問3:譲渡担保
集合動産譲渡担保に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当なものはどれか。

1. 構成部分が変動する集合動産を譲渡担保の目的とする場合、種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどして目的物の範囲が特定されていなければ、譲渡担保権は有効に成立しない。
2. 集合動産譲渡担保権の設定者が、通常の営業の範囲内で構成部分である動産を処分した場合、その動産は譲渡担保権の拘束から離脱せず、買主は所有権を取得できない。
3. 集合動産譲渡担保の対抗要件は、構成部分である個々の動産について、その都度、引渡しを受ける必要があり、占有改定による引渡しでは足りない。
4. 譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的物を処分した場合、設定者は、債務を弁済して目的物を受け戻すことができる。
5. 譲渡担保権の実行として債権者が目的物を取得する場合、債権額と目的物の評価額との差額(清算金)を支払う必要はない。
正解・解説を見る

正解 1

解説:

1. 妥当。集合物としての特定性が必要です(最判昭54.2.15)。

2. 誤り。通常の営業範囲内の処分であれば、その動産は担保から離脱し、買主は完全な所有権を取得します。

3. 誤り。集合物全体について一括して占有改定を行えば対抗要件を具備できます。

4. 誤り。適法に処分された後は、第三者が権利を取得するため、受戻権は消滅します(損害賠償の問題になります)。

5. 誤り。帰属清算型であれ処分清算型であれ、清算義務(差額の返還)があります(最判昭46.3.25)。

7. まとめ

今回は、抵当権以外の担保物権と非典型担保について解説しました。

  • 質権:引渡しが効力要件(占有改定NG)。動産は占有継続が対抗要件。
  • 留置権:牽連性が重要(二重譲渡の賠償請求はNG)。優先弁済なし。
  • 集合動産譲渡担保:特定性があれば有効。通常の営業で離脱する。

特に「留置権の牽連性」と「集合動産譲渡担保の効力(いつ離脱するか)」は、記述式でも問われやすい論点です。判例のキーワードを意識して復習しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 留置権と同時履行の抗弁権の違いは何ですか?
A. 留置権は「物権」なので誰にでも主張でき、競売権もあります(換価のため)。同時履行の抗弁権は「契約の効力」なので相手方にしか主張できず、競売権はありません。ただし、「引渡しを拒める」という機能面では似ています。
Q. 先取特権の「物上代位」で、引渡し前の差押えが必要なのはなぜですか?
A. 動産の売買先取特権に基づいて、転売代金を差し押さえる場合の話です。転売された動産がさらに第三者に引き渡されてしまうと、その動産に対する先取特権の追求力(追及力)が消滅してしまうため(333条)、代位の対象である代金債権への権利行使も制限されるという解釈です。
Q. 譲渡担保で「清算金」を払わないと所有権は移転しないのですか?
A. はい。判例上、債権者が確定的に所有権を取得するには、債務者に清算金(評価額-債権額)を支払う(または提供する)必要があります。それまでは、債務者は債務を弁済して目的物を取り戻す(受け戻す)ことができます。

↓民法の全体像を確認する↓

民法Webテキスト一覧ページへ戻る
タイトルとURLをコピーしました