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講義30:【民法債権】連帯債務と連帯債権の違い|絶対効・相対効と求償権を徹底解説

契約の当事者が複数人いる場合、誰がいくら払うのか、誰に請求できるのかは複雑になりがちです。

「連帯債務」はよく聞く言葉ですが、民法改正により新設された「連帯債権」や、絶対効(他の人にも影響すること)の範囲が縮小された点は、試験でも狙われやすいポイントです。

今回は、多数当事者の債権債務関係(分割・不可分・連帯)の基本と、特に重要な「絶対効・相対効」の覚え方、そして求償権の計算について解説します。

1. 多数当事者の債権・債務の基本

債権者や債務者が複数いる場合、原則はどうなるのでしょうか?

(1) 分割債権・分割債務(原則)

目的が可分(分けられる)であれば、原則として「頭割り(等しい割合)」になります(427条)。
(例)A、B、CがDから900万円借りた場合、特約がなければ各自300万円ずつの債務を負います。

(2) 不可分債権・不可分債務

性質上分けられない場合(建物の引渡しなど)です。
誰か一人が全額を請求でき、誰か一人が全額を履行しなければなりません。

  • 絶対効:弁済、請求、相殺、更改(債務のみ)、免除(債務のみ・かつては絶対効だったが改正で相対効になったものもあるため注意 ※後述の表参照)。

※不可分債務の絶対効は、改正により「連帯債務」とほぼ同じになりました(ただし免除・混同は相対効です)。

2. 連帯債務(最重要)

債務者の全員が全額の支払義務を負い、誰か一人が払えば全員の債務が消滅する制度です。

(1) 絶対効と相対効(441条)

ここが試験の山場です。連帯債務者の1人に生じた事由が、他の債務者にも影響するか(絶対効)、しないか(相対効)の区別です。

改正民法のポイント:かつて絶対効だった「請求」「免除」「時効の完成」が相対効になりました。

【連帯債務の絶対効(4つだけ!)】

  1. 弁済(代物弁済・供託・相殺を含む):支払えば全員の債務が消えるのは当然です。
  2. 更改:契約内容をガラッと変えること。
  3. 相殺:債権を持っている人が相殺すれば、その分全員の債務が減ります。
  4. 混同:債権者と債務者が同一人物になること(相続など)。
💡 覚え方

「べん・こう・そう・こん」(弁済・更改・相殺・混同)。
これ以外はすべて相対効です(請求しても、免除しても、時効になっても、他の人には影響しません)。

(2) 相殺の独自ルール(439条2項)

A、B、Cが連帯債務者(負担部分平等)で、Aだけが債権者に対して反対債権を持っている場合。

  • Aが相殺した場合:全員の債務が消滅します(絶対効)。
  • Aが相殺しない場合:BやCは、Aの負担部分の限度で履行を拒むことができます(相殺の援用はできませんが、履行拒絶ができます)。

3. 連帯債権(新設)

改正民法で明文化された制度です。複数の債権者が連帯して権利を持つ場合です。

絶対効の範囲(連帯債務より広い)

連帯債権では、以下の事由が絶対効となります。

  • 弁済、請求、相殺、混同(ここまでは連帯債務と同じ)。
  • 更改、免除(これらも絶対効です!)。

※連帯債権では「請求」も絶対効である点に注意してください(432条)。一人が請求すれば全員の時効が中断(更新)します。

4. 求償権(後始末)

一人が全額払った後、他の連帯債務者に「割り勘分」を請求することです。

(1) 求償の範囲

弁済額が自己の負担部分を超えていなくても、「支出した全額」について、負担割合に応じて求償できます。

(2) 通知を怠った場合のサンクション(443条)

  • 事前通知を忘れた場合:他の債務者が債権者に対抗できた事由(相殺など)があれば、それをもって求償者に対抗できます。
  • 事後通知を忘れた場合:他の債務者が善意で二重払いしてしまったら、その払った行為を有効とみなせます(求償を拒否できます)。

(3) 無資力者の負担部分(444条)

求償しようとした相手(C)にお金がない(無資力)場合、その取れない分は、求償者(B)と他の資力ある者(D)で分担します。


5. 実戦問題にチャレンジ

問1:連帯債務の絶対効・相対効
A、B、CがDに対して300万円の連帯債務(負担部分は等しい)を負っている場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. DがAに対して履行の請求をした場合、その効力はBおよびCにも及び、B・Cの消滅時効も更新される。
2. DがAに対して債務を免除した場合、BおよびCの債務も、Aの負担部分である100万円の限度で消滅する。
3. AがDに対して300万円の反対債権を有している場合、Aが相殺を援用しなくても、BはAの負担部分である100万円を限度として、Dからの請求を拒むことができる。
4. Aのために時効が完成した場合、Aは債務を免れるが、BおよびCは依然として300万円全額の支払義務を負い、Aの負担部分についても責任を負う。
5. AがDとの間で更改契約を締結して債務を消滅させた場合、BおよびCの債務は消滅せず、Aに対して求償義務を負うのみである。
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正解 3

解説:

1. 誤り。改正により「請求」は相対効となりました。Aに請求してもB・Cには影響しません。

2. 誤り。改正により「免除」は相対効となりました。Aが免除されてもB・Cは300万円のままです(後でAに求償します)。

3. 正しい。相殺の履行拒絶権(439条2項)です。

4. 誤り。時効の完成は相対効ですが、完成したAが時効を援用すれば、B・CはAの負担部分について履行を拒めます(反射的効果)。※解説補足:改正法では「時効」は相対効ですが、求償関係を通じて処理されます。Aが時効で免れた場合、Bが全額払うとAに求償でき、Aは時効を理由に拒否できます。結果、BがAの分を被ることになりますが、判例・実務の解釈としては選択肢3が最も明確な正解です。

5. 誤り。更改は絶対効です。全員の債務が消滅します。

問2:連帯債権
A、B、CがDに対して300万円の連帯債権を有している場合に関する記述として、民法の規定に照らして誤っているものはどれか。

1. AがDに対して履行の請求をした場合、その効力はBおよびCにも及び、全員について時効の完成猶予の効力が生じる。
2. DがAに対して全額を弁済した場合、BおよびCの債権も全て消滅する。
3. AがDに対して債務を免除した場合、BおよびCの債権も、Aが受けるべき利益の分については消滅し、請求できなくなる。
4. AとDとの間で更改があった場合、BおよびCの債権は消滅しない。
5. DがAに対して反対債権を有しており、Dが相殺を援用した場合、BおよびCの債権も消滅する。
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正解 4

解説:

1. 正しい。連帯債権において「請求」は絶対効です(432条)。連帯債務とは逆なので注意!

2. 正しい。弁済は絶対効です。

3. 正しい。連帯債権では「免除」も絶対効です(433条)。

4. 誤り。連帯債権では「更改」も絶対効であり、他の債権者の権利も消滅します(433条)。

5. 正しい。相殺は絶対効です。

問3:求償権と通知義務
連帯債務者A、B(負担割合は1:1)の求償関係に関する記述として、妥当なものはどれか。

1. Aが債権者に弁済する前にBに通知(事前通知)をせず、弁済後に事後通知をした場合において、Bが債権者に対して相殺適状にある債権を有していたときは、BはAからの求償に対し、相殺をもって対抗することができる。
2. Aが事前通知をして弁済したが、事後通知を怠った間に、Bが善意で債権者に二重弁済をしてしまった場合、Bの弁済は無効となり、Aの弁済のみが有効となる。
3. Aが自己の負担部分を超えない額(一部)を弁済した場合、AはBに対して求償することはできない。
4. Aが弁済してBに求償する場合、弁済した日以後の法定利息を請求することはできるが、避けることのできなかった費用その他の損害賠償を請求することはできない。
5. Aが事前通知も事後通知もせずに弁済した場合、Bは常に求償を拒むことができる。
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正解 1

解説:

1. 正しい。事前通知を怠った場合のサンクションです(443条1項)。Bは相殺できたはずの利益をAに対抗(拒絶)でき、その分Aは債権者に請求することになります。

2. 誤り。事後通知を怠った場合、善意のBは自分の弁済を有効とみなすことができます(443条2項)。

3. 誤り。負担部分を超えなくても、支出した額の割合に応じて求償できます(442条1項)。

4. 誤り。利息だけでなく、費用なども含めて求償できます。

5. 誤り。通知を怠っても、対抗要件(相殺など)や二重払いがなければ、求償自体は有効です。

6. まとめ

今回は、多数当事者の債権債務について解説しました。

  • 連帯債務:請求・免除・時効は相対効(改正点)。絶対効は「弁・更・相・混」。
  • 連帯債権:請求・免除も絶対効
  • 求償:通知を忘れると、相殺されたり二重払いが有効になったりする(ペナルティ)。

「連帯債務」と「連帯債権」で絶対効の範囲が違う点が最大のひっかけポイントです。表を書いて、試験直前に必ず確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 不可分債務と連帯債務の違いは何ですか?
A. ほとんど同じですが、不可分債務(性質上分けられない債務)では、負担部分という概念が観念できないため、更改や混同などの効果が少し異なります。試験対策上は、連帯債務のルールを覚えれば十分です。
Q. なぜ連帯債務の「請求」が相対効になったのですか?
A. 旧法では、一人に請求すれば全員の時効が止まりましたが、これだと「何も知らないうちに時効が更新されていた」という他の債務者にとって不意打ちになるからです。改正により、個別に管理する必要が生じました。
Q. 無資力者の負担部分の分担(444条)の計算方法は?
A. (例)A・B・C(負担1:1:1)で、Aが全額払い、Cが無資力の場合。
Aは本来Cに請求できる分を、A自身とBで分け合います。つまり、Cの負担分を(A:B=1:1)で折半し、AはBに対して「Bの本来の負担分+Cの負担分の半分」を請求できます。

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