前回は、行政書士法の「入り口」である資格や試験制度、そして2026年の法改正で導入された「使命」や「職責」について解説しました。
今回は、試験に合格した後のステップである「登録」と、行政書士が必ず所属することになる「行政書士会」について解説します。
「試験に受かったら自動的に行政書士になれるんじゃないの?」
いいえ、違います。行政書士法において「登録」は、業務を開始するための絶対条件であり、非常に厳格な手続きが定められています。
また、2026年改正により行政書士の「職責(誠実義務・品位保持義務等)」が法律上明記されたことは、この「登録」の審査基準にも大きな影響を与えます。
「どんな人が登録を拒否されるのか?」「一度登録しても取り消されるのはどんな時か?」
これらの知識は、試験対策としてだけでなく、将来の実務家としても必須の知識です。
この記事では、複雑な登録手続きの流れや、行政書士会という組織の役割について、具体的なイメージ図を交えながら徹底解説します。合格後の自分の姿を想像しながら、楽しく学んでいきましょう!
1. 行政書士の登録制度:業務開始の絶対条件
行政書士試験に合格しただけでは、まだ「行政書士」ではありません。単なる「行政書士となる資格を有する者(有資格者)」です。
行政書士として業務を行うためには、日本行政書士会連合会(日行連)が備える行政書士名簿に登録を受けなければなりません。
(1) 登録の仕組みと申請ルート(経由進達)
登録を行うのは、全国組織である「日本行政書士会連合会(日行連)」です。
しかし、登録の申請書をいきなり日行連(東京)に郵送するわけではありません。
【申請のルート】
申請者 ⇒ 事務所を置く都道府県の行政書士会(単位会) ⇒ 日本行政書士会連合会
このように、実際に事務所を構える地域の行政書士会を「経由」して申請しなければなりません。
これは、地元の行政書士会が「この人は本当にここに事務所があるか?」「実態があるか?」を確認するためです。
法改正により、行政書士には「国民の権利利益の実現に資する」という使命(第1条)と、誠実・品位・公正を旨とする職責(第1条の2)が課されました。
登録は、この重い職責を担う適格者であるかをチェックする重要なプロセスです。単なる事務手続きではないことを理解しておきましょう。
(2) 登録拒否事由(登録できないケース)
申請があれば誰でも登録されるわけではありません。日行連は、申請者が以下の事由に該当する場合、登録を拒否しなければなりません。
- 資格を有しない者:試験に受かっていない、欠格期間中であるなど。
- 心身の故障がある者:心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者(※医師の診断書等で判断)。
- 適格性を欠く者:行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし適格性を欠く者。
特に3点目の「適格性を欠く者」の判断において、新設された「職責(第1条の2)」の規定が重要な判断基準となります。
例えば、過去に暴力団関係者であったり、詐欺的な商法に関与していたりする場合、「品位を害するおそれ」があるとして登録を拒否される可能性があります。
登録拒否の手続き(慎重な判断)
登録拒否は、申請者の職業選択の自由を制限する重大な処分です。そのため、独断で行うことはできず、以下の慎重な手続きが求められます。
- 資格審査会の議決:日行連に設置される外部有識者等を含む「資格審査会」の議決を経なければなりません。
- 弁明の機会の付与:拒否しようとするときは、あらかじめ申請者に通知し、言い分を聞く(弁明する)チャンスを与えなければなりません。
(3) 登録の効果と義務
無事に審査を通過し、登録されるとどうなるでしょうか。
- 行政書士証票の交付:身分証となる「証票」が交付されます。
- 当然入会:登録された時点で、事務所のある都道府県行政書士会の会員に「当然に(自動的に)」なります。
2. 審査請求(登録に関する不服申立て)
もし、登録を拒否されたり、いつまで経っても登録されなかったりした場合、申請者はどうすればよいでしょうか。
この場合の救済手段として、「総務大臣」に対する審査請求が認められています。
審査請求ができる場合
- 登録を拒否されたとき:処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内。
- 不作為(放置されているとき):申請から3ヶ月経過しても何らの処分もないときは、拒否されたものとみなして審査請求できます。
日行連は民間団体ですが、登録事務に関しては国から権限を与えられた「公権力の行使」を行う主体とみなされます。
そのため、その監督官庁である総務大臣に対して行政不服審査法に基づく審査請求を行う仕組みになっています。
3. 登録の変更・取消し・抹消(事後的な手続き)
一度登録した後も、状況が変われば様々な手続きが必要です。試験では「取消し」と「抹消」の違いが頻出です。ここを整理しましょう。
(1) 変更の登録
氏名や住所、事務所の所在地などが変わった場合は、遅滞なく変更の登録を申請しなければなりません(所属する行政書士会を経由)。
(2) 登録の取消し(不正に対するペナルティ)
これは「悪いことをしたからクビ」にする処分です。
- 対象:偽りその他不正の手段により登録を受けたことが判明した場合。
- 効果:登録を取り消さなければならない(義務)。
- 手続き:資格審査会の議決が必要。ただし、不正登録という事実に基づくため、弁明の機会の付与は法律上義務付けられていません(※ここが登録拒否との違いです)。
(3) 登録の抹消(資格喪失や廃業)
これは「行政書士でなくなった」事実に基づく事務的な処理です。「必要的抹消」と「任意的抹消」があります。
① 必要的抹消(必ず消す)
以下の事実が発生した場合、日行連は登録を抹消しなければなりません。
- 死亡したとき。
- 廃業の届出があったとき(自分から辞めるとき)。
- 欠格事由に該当するに至ったとき(禁錮刑を受けた、懲戒免職になった等)。
- 登録取消しの処分を受けたとき。
② 任意的抹消(消すことができる)
行政書士としてふさわしくない状態が続いている場合、日行連の判断で抹消「できる」ケースです。
- 引き続き2年以上業務を行わないとき(休眠状態)。
- 心身の故障により業務を行えないとき。
※任意的抹消を行う場合は、恣意的な運用を防ぐため、資格審査会の議決が必要です。
| 手続 | 資格審査会の議決 | 弁明の機会 | 総務大臣への審査請求 |
|---|---|---|---|
| 登録拒否 | 必要 | 必要 | 可能 |
| 登録取消し (不正登録) |
必要 | 不要 | 可能 |
| 必要的抹消 (死亡・廃業等) |
不要 | 不要 | (性質上なし) |
| 任意的抹消 (2年不稼働等) |
必要 | 不要 | 可能 |
「登録拒否」には弁明の機会があるのに、「登録取消し(不正発覚)」や「任意的抹消」には弁明の機会がない点に注意しましょう。
ただし、別途「聴聞」等の手続きが行政手続法等で保障される場合はありますが、行政書士法上の明文規定としてはこの違いが試験に出ます。
4. 行政書士会と日本行政書士会連合会
行政書士業界は、都道府県ごとの「行政書士会(単位会)」と、それを束ねる「日本行政書士会連合会(連合会)」の二層構造になっています。
(1) 強制入会制度(法16条の5)
行政書士登録を受けた者は、当然に、事務所の所在する都道府県行政書士会の会員になります。
「会費が高いから入りたくない」といった選択権はありません。これを強制入会制度といいます。
【趣旨:自治と規律】
行政書士会は、会員の指導や連絡を行う重要な役割を担っています。全員を強制的に加入させることで、業界全体の質を維持し、国民からの信頼(職責の全う)を確保するためです。
(2) 行政書士会(単位会)
- 設置:各都道府県に1個(全国で47個)。
- 法人格:あり(行政書士法上の法人)。
- 目的:会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うこと。
- 会則の認可:都道府県知事の認可が必要。
- 監督:都道府県知事が監督する(報告徴収、勧告など)。
(3) 日本行政書士会連合会(連合会)
- 構成員:個々の行政書士ではなく、「行政書士会」が会員です。
- 目的:行政書士会の指導・連絡、行政書士の登録に関する事務を行うこと。
- 会則の認可:総務大臣の認可が必要。
- 監督:総務大臣が監督する。
【権限の対比:知事と大臣】
単位会に関することは「都道府県知事」、連合会に関することは「総務大臣」が管轄します。
試験と同様、「誰が誰を見るのか」を整理しておきましょう。
(4) 2026年改正と会の役割
法改正により、特定行政書士の業務範囲拡大や、職責規定の新設が行われました。
これに伴い、行政書士会および連合会には、会員に対する「研修」の実施や、職責遵守のための「指導」の役割がより一層求められるようになります。
会則の記載事項にも「研修に関する規定」が含まれており(法16条の2)、特定行政書士になるための研修も連合会が実施します。
「会は単なる親睦団体ではなく、行政書士の資質向上のための研修機関でもある」という視点を持ってください。
5. 【実戦演習】本試験レベル問題に挑戦
ここまでの解説内容を、本試験形式の多肢選択式問題で確認しましょう。
1. 行政書士試験に合格した者は、行政書士としての業務を行う意思があるときは、直ちに日本行政書士会連合会に登録申請書を直接郵送しなければならない。
2. 日本行政書士会連合会は、登録申請者が行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし適格性を欠く者であると認めたときは、その登録を拒否しなければならない。
3. 日本行政書士会連合会が登録を拒否しようとするときは、資格審査会の議決を経なければならないが、申請者に対して弁明の機会を与える必要はない。
4. 登録の申請をした日から2ヶ月を経過しても何らの処分もなされないときは、当該申請者は、登録を拒否されたものとみなして、都道府県知事に対して審査請求をすることができる。
5. 行政書士の登録を受けた者は、事務所を設置する都道府県の行政書士会に入会するかどうかを任意に選択することができる。
正解・解説を見る
正解 2
解説:
1. 妥当でない。登録申請は、事務所の所在地の「行政書士会を経由」して行わなければなりません。直接郵送は不可です。
2. 妥当である。これが登録拒否事由の一つです。2026年改正で新設された「職責」規定ともリンクする重要な要件です。
3. 妥当でない。登録拒否の場合、資格審査会の議決に加え、申請者に「弁明の機会」を与えなければなりません。
4. 妥当でない。不作為によるみななし否認の期間は「3ヶ月」です。また、審査請求先は「総務大臣」です。
5. 妥当でない。行政書士会への入会は「強制(当然入会)」です。選択権はありません。
1. 日本行政書士会連合会は、行政書士が偽りその他不正の手段により登録を受けたことが判明したときは、その登録を取り消さなければならない。
2. 日本行政書士会連合会は、行政書士が引き続き2年以上行政書士の業務を行わないときは、その登録を抹消することができる。
3. 登録の取消し処分を行おうとするときは、日本行政書士会連合会は、資格審査会の議決を経なければならない。
4. 行政書士が死亡したときは、日本行政書士会連合会は、その登録を抹消しなければならないが、この場合は資格審査会の議決を経る必要はない。
5. 行政書士の登録が抹消されたときは、その者またはその相続人は、直ちに行政書士証票を廃棄しなければならない。
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正解 5
解説:
1. 妥当である。不正登録は必要的取消事由です。
2. 妥当である。2年以上の不稼働は「任意的抹消事由」です。
3. 妥当である。登録取消しの際は、資格審査会の議決が必要です。
4. 妥当である。死亡などの「必要的抹消」の場合は、事実に基づく事務処理であるため、資格審査会の議決は不要です。
5. 妥当でない。登録抹消時は、証票を「日本行政書士会連合会に返還」しなければなりません。勝手に廃棄してはいけません。
1. 行政書士会は、都道府県の区域ごとに設立される法人であり、その会則を定め、または変更するには、日本行政書士会連合会の承認を受けなければならない。
2. 行政書士会は、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするほか、会員の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員に対し研修を実施することができる。
3. 日本行政書士会連合会は、全国の行政書士を直接の会員とする組織であり、行政書士の登録に関する事務を行う。
4. 行政書士会が、その会員である行政書士に対して注意または勧告を行った場合、当該行政書士は、その処分について総務大臣に審査請求をすることができる。
5. 行政書士法に違反する行為をした行政書士に対する懲戒処分は、当該行政書士が所属する行政書士会の長が行う。
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正解 2
解説:
1. 妥当でない。単位会の会則の認可権者は「都道府県知事」です。連合会の承認ではありません。
2. 妥当である。研修の実施は行政書士会の重要な役割の一つです。
3. 妥当でない。連合会の会員は「行政書士会(単位会)」です。個々の行政書士は間接的な構成員となります。
4. 妥当でない。行政書士会による注意・勧告は、内部的な指導措置であり、行政不服審査法の対象となる「行政庁の処分」には該当しないと解されています。
5. 妥当でない。懲戒処分権者は「都道府県知事」です。行政書士会長ではありません(※次回詳しく解説します)。
6. まとめ:登録制度と会の役割を整理
今回は、行政書士法の中核である「登録」と「会」について解説しました。
最後にポイントを整理します。
- 登録ルート:申請者 → 単位会(経由) → 連合会(登録・証票交付)。
- 登録拒否:資格審査会の議決+弁明の機会が必要。「職責」に照らした適格性審査が重要。
- 抹消と取消し:不正登録は「取消し」。死亡や廃業は「抹消」。手続きの違い(議決の有無など)に注意。
- 行政書士会:強制入会制。単位会は知事、連合会は大臣が監督。
2026年改正で「職責」が明文化されたことにより、登録審査や会の指導監督機能はより厳格に、かつ重要なものとなります。「品位ある専門職」としての自覚が、受験生の段階から求められていると言えるでしょう。
次回は、いよいよ実務に直結する「行政書士の業務」と、違反した場合の「懲戒処分・罰則」について解説します。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 行政書士会への入会金や会費はどれくらいですか?
- 都道府県によって異なりますが、入会金は15万円~25万円程度、月会費は6,000円~7,000円程度が一般的です。登録免許税(3万円)とは別に必要になるため、開業資金として準備しておく必要があります。
- Q2. 引越しで事務所を他県に移転する場合、登録はどうなりますか?
- 「変更の登録」の手続きが必要です。移転先の都道府県行政書士会を経由して申請を行います。この際、移転前の会は自動的に退会となり、移転先の会に入会することになります(移転先の入会金等が別途必要になる場合があります)。
- Q3. 登録拒否された場合、「弁明」と「審査請求」はどう違うのですか?
- 「弁明」は処分が下される前に、日行連に対して「拒否しないでくれ」と言い分を主張する手続きです。「審査請求」は処分が下された後に、監督官庁である総務大臣に対して「その処分は不当だ」と訴える不服申立て手続きです。タイミングと相手方が異なります。
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