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講義03:【行政法】公物とは?分類と成立過程をわかりやすく解説

私たちが普段何気なく利用している「道路」や「公園」、あるいは手続きで訪れる「市役所」。これらは行政法学上、まとめて「公物(こうぶつ)」と呼ばれます。

「公物なんて言葉、試験に出るの?」と思われるかもしれません。しかし、公物は国家賠償法(道路の管理瑕疵など)や、取得時効(公道は自分のものにできるか?)といった重要論点の基礎となる概念です。
特に、「道路(人工公物)」と「河川(自然公物)」の違いは、記述式や多肢選択式で問われるポイントでもあります。

今回の講義では、行政上の法律関係における「公物」の定義と分類、そしてそれらがどのようにして生まれ(公用開始)、消滅するのか(公用廃止)について、具体例を交えて解説します。

💡 この記事で学べること

  • 「公物」の正確な定義(電波は含まれる?)
  • 試験に出る3つの分類(目的・成立過程・所有権)
  • 人工公物と自然公物の決定的な違い(公用開始行為の要否)

1. 公物とは何か?(定義と要素)

まずは定義をしっかり押さえましょう。行政法において公物とは、以下のように定義されます。

「国又は地方公共団体等の行政主体が、直接、公の目的で供用する有体物」

この定義には、試験対策上重要な3つの要素が含まれています。

(1) 「公の目的」で供用される

行政主体が持っている物でも、すべてが公物ではありません。例えば、国有地であっても、使い道が決まっておらず放置されている土地(普通財産)は公物ではありません。「みんなのために使う(道路)」や「役所として使う(庁舎)」といった公的な目的で提供されている必要があります。

(2) 「有体物」に限られる

ここがひっかけポイントです。公物は、土地、建物、動産などの「有体物(形があるもの)」に限られます。
したがって、「電波」や「空気」などの無体物は公物には含まれません。電波法などで規制されていても、行政法上の公物とは扱わないのです。

(3) 所有権の所在は問わない(私有公物)

ここが最も誤解しやすい点です。「公物=国の持ち物」とは限りません。
行政主体が管理権を持って公の目的に使っていれば、所有者が民間人(私人)であっても公物となります。これを「私有公物」といいます。

💡 具体例:私有公物

例えば、Aさんが所有する土地を、市が借り受けて「市営公園」として開放している場合、その土地はAさんの所有物ですが、行政法上は「公物」として扱われます。

2. 公物の分類(試験に出る3つの切り口)

公物はその性質によっていくつかのグループに分類されます。それぞれの違いを整理しましょう。

(1) 目的による分類:公用物 vs 公共用物

「誰がメインで使うか」による分類です。

分類 定義 具体例 イメージ
公用物 行政主体自身が自らの事務や活動のために使用するもの。 市役所の庁舎、警察署、公立学校の校舎、消防車、パトカー 行政の「道具」や「オフィス」
公共用物 一般公衆(私たち国民)の自由な使用に供されるもの。 道路、公園、河川、海岸、港湾、公立図書館 みんなの「共有スペース」

注意点:
公用物(市役所の中など)は、行政の活動場所なので、一般人の立ち入りが制限されることがあります。一方、公共用物(道路や公園)は、原則として誰でも自由に使えますが、デモ行進や屋台の出店など「特別な使い方」をする場合は許可が必要になります。

(2) 成立過程による分類:人工公物 vs 自然公物(重要)

「人の手が加わっているか」による分類です。この分類は、後述する「公用開始行為」が必要かどうかに関わるため、試験対策上非常に重要です。

分類 定義 具体例 公用開始行為
人工公物 行政主体が、人の力を加えて(工事などをして)公物としての形態を整えたもの。 道路、公園、運河、堤防 必要
(宣言しないと公物にならない)
自然公物 人の手が加わっておらず、自然の状態のままで公の役に立っているもの。 河川、湖沼、海浜(ビーチ) 不要
(自然発生的に公物となる)

なぜ自然公物には「公用開始行為」が不要なのか?

例えば「一級河川」のような大きな川は、行政が「今日からここは川です!」と宣言しなくても、最初から川として存在し、治水や利水という公的な機能を果たしています。
そのため、自然公物は「自然の状態そのままで」公物としての性質を持つと考えられており、行政庁による指定(公用開始行為)は不要とされています。

(3) その他の分類

  • 国有公物・公有公物・私有公物:所有権が「国」「地方公共団体」「私人」のどこにあるかによる分類。前述の通り、誰の持ち物であっても公物になり得ます。
  • 予定公物:現在はまだ公物ではないが、将来公物として使われることが決定しているもの。
    • 例:道路予定地、建設中の庁舎など。
    • これらはまだ完全な公物ではありませんが、準公物として一定の法的保護を受けます。

3. 公物の成立と消滅(公用開始・廃止)

特に「人工公物(道路など)」や「公用物(庁舎など)」が、いつ公物になり、いつ公物でなくなるのか。ここには法的な手続きが関わってきます。

(1) 公用開始行為

定義:
行政主体が、特定の有体物について「これを公物として一般の使用に供します(使います)」という意思決定を行い、それを外部に表示することです。

  • 性質: 行政法学上の「行政行為(行政処分)」に当たります。
  • 具体例: 道路法に基づいて、知事が「ここを県道〇〇号線として供用開始する」と告示すること。

人工公物(道路など)の場合、単に道路の形をしていても、この「公用開始行為」が行われない限り、法的な意味での公物(道路法上の道路)にはなりません。

(2) 公用廃止行為

定義:
行政主体が、「この公物はもう使いません(公物としての性質を消滅させます)」という意思表示をすることです。

  • 性質: これも行政行為の一種です。
  • 効果: 公用廃止されると、その物は公物としての性格を失い、単なる行政主体の私有財産(普通財産)に戻ります。

普通財産に戻れば、行政主体はそれを民間の不動産会社に売却したり、誰かに貸し付けたりすることが自由にできるようになります。
逆に言えば、公用廃止行為が行われていない公物は、原則として売却したり、私権を設定したり(抵当権をつけるなど)することができません(融通性の制限)。

【重要】黙示の公用廃止

原則として、公用廃止には明確な意思表示(告示など)が必要です。しかし、判例は例外的に「黙示の公用廃止」を認めています。

💡 黙示の公用廃止とは(最判昭51.12.24)

明確な廃止手続きがなくても、以下の要件を満たせば、公用が廃止されたとみなされます。

  1. 長年の間、事実上公の目的に使われていない(放置されている)。
  2. 公物としての形態・機能を完全に喪失している(道路に見えない)。
  3. 他人の占有を認めても、公の目的が害されない。

この状態になれば、その土地は時効取得の対象となります。

4. 公物の法的特質(私権の制限)

公物になると、民法上の所有権とは異なる特別な制限がかかります。

  • 融通性の制限: 公物は原則として売却(譲渡)できません。売るためには「公用廃止」が必要です。
  • 強制執行の禁止: 市役所の庁舎がいきなり借金のカタに差し押さえられたら行政がストップしてしまいます。そのため、公物に対する強制執行(差押え)は禁止されています。
  • 取得時効の制限: 「みんなのもの」なので、誰かが勝手に占拠していても、原則として時効取得できません(前述の「黙示の公用廃止」がある場合を除く)。

5. 実戦問題で確認!

問1:公物の定義と分類
公物に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1. 公物とは、国または地方公共団体が所有する有体物を指すため、私人が所有する土地が公物となることはあり得ない。
2. 公物は有体物に限られるため、電気や電波のように物理的な実体を持たないものは、行政法上の公物には含まれない。
3. 公共用物とは、官公署の庁舎のように、行政主体が自らの事務や事業のために直接使用する公物をいう。
4. 公用物とは、道路や公園のように、一般公衆の自由な使用に供されることを目的とする公物をいう。
5. 予定公物とは、将来公物となることが予定されているものを指すが、現時点では公物ではないため、いかなる法的保護も受けることはない。
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正解 2

解説:

1. 妥当でない。公物の要素に「所有権の所在」は含まれません。行政主体が管理権に基づき公の用に供していれば、私人の所有物であっても公物(私有公物)となります。

2. 妥当である。公物は「有体物」に限られるため、電波などの無体物は含まれません。

3. 妥当でない。行政主体が事務のために使う庁舎などは「公用物」です。記述は「公共用物」の説明になっています。

4. 妥当でない。一般公衆が使う道路や公園は「公共用物」です。記述は「公用物」の説明になっています(3と4が逆)。

5. 妥当でない。予定公物であっても、公物としての実態を備えつつある場合などには、一定の法的保護(例えば、勝手な占有の排除など)が及ぶことがあります。

問2:人工公物と自然公物
人工公物と自然公物に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
1. 人工公物とは、道路や公園のように、行政主体が人為的な工事等を施して公用を開始したものをいい、その成立には原則として公用開始行為が必要である。
2. 自然公物とは、河川や湖沼のように、自然の状態のままで公の用に供し得る実態を備えているものをいい、その成立には公用開始行為は不要である。
3. 人工公物について公用廃止行為がなされると、当該公物は公物としての性質を失い、行政主体の普通財産となる。
4. 自然公物である河川についても、河川法に基づく河川区域の指定などの行政処分がなされなければ、公物としての性質を有することはない。
5. 人工公物であっても、長年の間事実上公の目的に供されることなく放置され、公物としての機能を喪失し、黙示的に公用が廃止されたと認められる場合には、取得時効の対象となり得る。
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正解 4

解説:

1. 妥当である。人工公物の成立には、物理的な実態だけでなく、意思表示としての「公用開始行為」が必要です。

2. 妥当である。自然公物は自然の状態そのままで公物性を有するため、公用開始行為は不要と解されています。

3. 妥当である。公用廃止行為により、行政財産としての性質を失い、私法上の取引対象となる普通財産になります。

4. 妥当でない。自然公物は、河川区域の指定などの行為を待つことなく、自然現象として当然に公物として成立します。河川法の指定は確認的なものに過ぎません。

5. 妥当である。判例(最判昭51.12.24)による黙示の公用廃止の論点です。

問3:公用開始行為の法的性質
公用開始行為に関する次の記述のうち、行政法の一般的な理解に照らし妥当なものはどれか。
1. 公用開始行為は、行政内部における単なる事実上の行為に過ぎず、国民の権利義務に直接影響を及ぼすものではないため、行政行為(処分)には該当しない。
2. 公用開始行為は、特定の有体物について公物としての法的地位を付与する行為であり、これにより一般公衆に使用権などの法的効果が生じるため、講学上の行政行為(処分)と解される。
3. 道路のような人工公物だけでなく、河川や海岸のような自然公物についても、公物として成立するためには必ず公用開始行為が必要不可欠である。
4. 私人が所有する土地について公用開始行為を行うことは、憲法の財産権保障に反するため認められず、公用開始行為の対象は国または地方公共団体が所有するものに限られる。
5. 一度公用開始行為がなされた公物は、いかなる場合であっても、明示的な公用廃止行為(告示等)がなされない限り、公物としての性質を失うことはない。
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正解 2

解説:

1. 妥当でない。公用開始行為は、私権を制限したり公衆に使用権を与えたりする法的効果を持つため、行政行為(処分)に該当します。

2. 妥当である。公用開始行為の法的性質に関する正しい記述です。

3. 妥当でない。自然公物には公用開始行為は不要です。

4. 妥当でない。所有者の承諾(権原取得)などがあれば、私人の所有地を公用開始して私有公物とすることは可能です。

5. 妥当でない。例外的に「黙示の公用廃止」が認められる場合があります。

6. まとめと学習のアドバイス

今回は「公物」の基本概念について解説しました。ポイントを復習しましょう。

  • 定義:行政主体が、公の目的で供用する有体物(所有権は問わない)。
  • 分類:
    • 公用物(役所) vs 公共用物(道路・公園)
    • 人工公物(開始行為が必要) vs 自然公物(開始行為は不要)
  • 変動:公用開始行為で生まれ、公用廃止行為で消える(黙示の廃止もあり)。

この分野は、単独で大問が出ることは少ないですが、国家賠償法や地方自治法など、他の分野と絡めて出題されることが多い基礎知識です。「道路は人工、川は自然」という具体例を頭に入れておくだけで、問題文の理解度がぐっと上がります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「普通財産」とは何ですか?
行政主体が持っている財産のうち、公物(行政財産)以外のものを指します。例えば、廃校になった校舎や、税金の物納で取得した土地などです。これらは行政目的には使われていないため、民間の土地と同じように売却したり貸したりすることができます。
Q2. 私有公物(個人の土地が道路になっている場合)の固定資産税はどうなりますか?
一般的に、地方税法により非課税となります。公共の用に供されている道路(公衆用道路)などは、所有者に収益性がなく、公益性が高いため、固定資産税・都市計画税が免除される規定があります。
Q3. 公用開始行為は具体的にどんな手続きですか?
例えば道路の場合、道路法に基づき、路線の名称、区間、供用開始の期日などを決定し、公報などで「告示」することによって行われます。そして、現地に看板などを設置して一般の人に知らせます。

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