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講義15:【行政手続法】目的・定義・適用除外を完全攻略!

行政書士試験において、行政手続法は「満点を狙うべき科目」です。
条文数が少なく、出題パターンも決まっているため、しっかりと対策すれば確実に得点源になります。

しかし、条文の読み込みが甘いと、「申請と届出の違い」や「適用除外の細かい規定」で思わぬ失点をしてしまいます。
「地方公共団体の処分には行政手続法が適用されるのか?」「公立学校の生徒に対する処分はどうなるのか?」

今回の講義では、行政手続法の全体像(目的・定義)と、試験で最も引っかけ問題が出やすい「適用除外」について、整理して解説します。

💡 この記事で学べること

  • 行政手続法の4つの柱(処分・行政指導・届出・命令等)
  • 「申請」と「届出」の決定的な違い(諾否の応答義務)
  • 「不利益処分」に含まれないもの(事実上の行為など)
  • 地方公共団体の処分に対する適用除外のルール

1. 行政手続法の目的と対象

(1) 目的(1条)

行政手続法は、行政運営における「公正の確保」「透明性の向上」を図り、もって「国民の権利利益の保護」に資することを目的としています。

💡 キーワード:透明性

「透明性」とは、行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいいます(1条1項)。
つまり、「なぜその処分がされたのか」「どんな基準で審査されたのか」をブラックボックスにせず、オープンにしましょうということです。

(2) 4つの規制対象

行政手続法がルールを定めているのは、以下の4つの活動です。

  1. 処分(申請に対する処分・不利益処分)
  2. 行政指導
  3. 届出
  4. 命令等(意見公募手続など)

※注意:行政計画、行政契約、行政調査、即時強制などは、行政手続法の対象外です。

2. 重要用語の定義(2条)

試験では、定義の正確な理解が問われます。特に「申請」と「届出」の違いは頻出です。

(1) 申請(しんせい)

定義:
法令に基づき、自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を求める行為であって、行政庁が「諾否の応答をすべきこととされているもの」

ポイント:
行政庁には「許可する(諾)」か「拒否する(否)」かを答える義務があります。
したがって、応答義務のない「請願」や「陳情」は申請には当たりません。

(2) 届出(とどけで)

定義:
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請を除く)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの。

ポイント:
申請との最大の違いは、行政庁に「諾否の応答義務がない」ことです。
形式上の要件さえ整っていれば、役所の窓口に到達した時点で手続きは完了します(受理という処分を待つ必要はありません)。

項目 申請 届出
行政庁の応答 必要(許可・不許可の処分) 不要(到達すれば完了)
効果発生時期 処分がされた時 到達した時

(3) 不利益処分

定義:
行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分。

除外されるもの(重要):
以下のものは、形式的に不利益に見えても、行政手続法上の「不利益処分」には含まれません。

  • 事実上の行為(行政指導、即時強制など)
  • 申請を拒否する処分(これは「申請に対する処分」として扱われます)
  • 同意の下でする処分(相手が納得しているなら手続保護は不要)
  • 届出による失効処分(廃業届を出して許可が消える場合など)
💡 試験のツボ

「申請拒否処分」は、申請者にとって不利益な結果ですが、法律上は「不利益処分」ではなく「申請に対する処分」に分類されます。
したがって、不利益処分の手続(聴聞や弁明)ではなく、申請に対する処分の手続(審査基準や標準処理期間)が適用されます。

(4) 行政指導

行政機関が、その任務・所掌事務の範囲内で、特定の人に一定の行為を求める指導・勧告・助言です。
処分に該当しないもの(強制力がないもの)に限られます。

(5) 命令等

内閣や行政機関が定めるルールです。以下の4つが含まれます。

  • 法律に基づく命令・規則(政令、省令など)
  • 審査基準(申請の許可基準)
  • 処分基準(不利益処分の量定基準)
  • 行政指導指針(行政指導のマニュアル)

※これらを定める際には、原則として「意見公募手続(パブリックコメント)」が必要です。

3. 適用除外(ここが出る!)

行政手続法は「一般法」ですが、すべての行政活動に適用されるわけではありません。
性質上なじまないものや、別の制度で手厚く保護されているものは「適用除外」とされています(3条)。

(1) 地方公共団体の適用除外(3条3項)

地方自治の尊重のため、地方公共団体の活動には行政手続法の適用が一部除外されます。

対象 根拠 行政手続法の適用 対応
処分・届出 法律に基づくもの
(例:生活保護の決定)
適用あり 国の法律に従う
条例・規則に基づくもの
(例:路上喫煙過料)
適用なし 行政手続条例を定める(努力義務)
行政指導 根拠を問わず 適用なし 行政手続条例を定める(努力義務)
命令等 根拠を問わず 適用なし 行政手続条例を定める(努力義務)
💡 覚え方

地方公共団体が行うことでも、「法律に基づく処分・届出」だけは行政手続法が適用されます。
それ以外(条例に基づく処分、行政指導、命令制定など)はすべて適用除外です。

(2) 個別の適用除外事項(3条1項)

以下の分野は、行政手続法の「処分」「行政指導」「届出」の規定が適用されません(命令等制定手続は適用される場合があります)。

  • 国会・裁判所の行為:三権分立の観点から除外。
  • 刑事・国税犯則事件:刑事訴訟法などの特別手続があるため除外。
  • 学校・刑務所・公務員:特別な関係(部分社会)における規律のため除外。
    (例:公立学校の生徒に対する退学処分、公務員への懲戒処分)
  • 外国人の出入国・難民認定:外交・安全保障に関わるため除外。
  • 試験・検定の結果:専門的な判断であり、手続になじまないため除外。
💡 注意点

「税務調査(行政調査)」は、14号で適用除外とされています。
また、「不服申立てに対する裁決(行政審判)」も、行政不服審査法という特別の手続きがあるため、15号で適用除外です。

4. 実戦問題で確認!

問1:行政手続法の定義
行政手続法の定義に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
2. 「不利益処分」とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいい、申請により求められた許認可等を拒否する処分もこれに含まれる。
3. 「行政指導」とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいい、地方公共団体の機関が行うものも含まれる。
4. 「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているものをいい、行政庁が当該届出を受理することによって初めて手続が完了する。
5. 「命令等」とは、内閣又は行政機関が定めるものをいい、法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。)又は規則に限られ、審査基準や処分基準は含まれない。
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正解 1

解説:

1. 正しい。申請の定義そのものです。

2. 誤り。申請拒否処分は「申請に対する処分」であり、不利益処分からは除外されています(2条4号ロ)。

3. 誤り。定義上は含まれますが、地方公共団体の機関が行う行政指導は、3条3項により適用除外となります。

4. 誤り。届出は、形式上の要件を満たして到達すれば完了します。行政庁の受理は要件ではありません(37条)。

5. 誤り。命令等には、審査基準、処分基準、行政指導指針も含まれます(2条8号)。

問2:地方公共団体と適用除外
地方公共団体の機関が行う行為に対する行政手続法の適用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 地方公共団体の長が、法律の規定に基づいて行う不利益処分については、行政手続法の規定は適用されない。
2. 地方公共団体の長が、条例の規定に基づいて行う申請に対する処分については、行政手続法の規定が適用される。
3. 地方公共団体の機関が行う行政指導については、その根拠が法律にあるか条例にあるかを問わず、行政手続法の規定は適用されない。
4. 地方公共団体の機関が命令等を定める場合には、その根拠が法律にあるときは、行政手続法の意見公募手続の規定が適用される。
5. 地方公共団体の機関に対する届出については、その根拠が法律にあるか条例にあるかを問わず、行政手続法の規定は適用されない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。法律に基づく処分には、行政手続法が適用されます。

2. 誤り。条例・規則に基づく処分には、行政手続法は適用されません(適用除外)。

3. 正しい。地方公共団体の行う行政指導は、根拠を問わずすべて適用除外です。

4. 誤り。地方公共団体の機関が定める命令等(条例案の提出なども含む)については、根拠を問わず適用除外です。

5. 誤り。法律に基づく届出には、行政手続法が適用されます。

問3:個別の適用除外事項
行政手続法3条1項に規定する適用除外事項に該当しないものはどれか。
1. 公立高等学校の校長が生徒に対して行う退学処分
2. 税務署長が所得税法に基づいて行う更正処分
3. 警察官が道路交通法に基づいて行う反則金の納付通告
4. 建築主事が建築基準法に基づいて行う建築確認処分
5. 入国審査官が出入国管理及び難民認定法に基づいて行う上陸許可の証印
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正解 4

解説:

1. 該当する(適用除外)。学校における生徒に対する処分は適用除外です(7号)。

2. 該当する(適用除外)。国税犯則事件等に関する処分は適用除外です(6号)。※通常の更正処分も国税通則法等の手続があるため除外されることが多いですが、選択肢の中では4が明確に適用対象です。

3. 該当する(適用除外)。刑事事件に関する法令に基づく処分(反則金制度)は適用除外です(5号・6号類推)。

4. 該当しない(適用対象)。建築確認は、一般的な「申請に対する処分」であり、行政手続法の適用を受けます。適用除外列挙事由には含まれません。

5. 該当する(適用除外)。外国人の出入国に関する処分は適用除外です(10号)。

5. まとめと学習のアドバイス

行政手続法の第1回目は、以下のポイントを確実に暗記してください。

  • 申請 vs 届出:「応答義務があるかないか」で見分ける。
  • 不利益処分:「申請拒否」は含まれない。
  • 地方公共団体:「法律に基づく処分・届出」だけが適用対象。行政指導や命令等は全部除外。

特に「地方公共団体の適用除外」は、表を書いて自分で整理できるようになるまで繰り返しましょう。ここが曖昧だと、本試験で確実に1問落とすことになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ地方公共団体の行政指導は適用除外なのですか?
地方自治の尊重のためです。行政指導や命令制定の手続きなどは、地域の実情に合わせて柔軟に行うべきであり、国が一律にルール(行政手続法)を押し付けるのは好ましくないと考えられているからです。その代わり、各自治体で「行政手続条例」を作って対応することが努力義務とされています。
Q2. 「処分等の求め(36条の3)」とは何ですか?
平成26年の改正で追加された制度です。誰でも、法令違反の事実を発見した場合に、行政庁に対して「是正のための処分や行政指導をしてくれ」と申し出ることができる制度です。これも行政手続法の対象ですが、適用除外の規定(3条)の影響を受けます。
Q3. 公立学校の退学処分に手続法が適用されないなら、いきなり退学にできるのですか?
いいえ、そうではありません。行政手続法の「聴聞」などの規定は適用されませんが、憲法31条の適正手続の保障や、判例法理によって、告知・聴聞の機会を与えるべきとされています。行政手続法が適用されないからといって、適正な手続きが不要になるわけではありません。

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