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講義22:【行政不服審査法】審査請求の手続(1)請求先と期間制限を完全攻略

「処分に不服があるときは、誰に対して、いつまでに審査請求をすればいいの?」
行政不服審査法の学習が進むと、登場人物(処分庁、審査庁、審理員、行政不服審査会…)が増えてきて、誰が何をするのか混乱してしまいがちです。

しかし、この「手続きの流れ」こそが、行政不服審査法の心臓部であり、本試験でも頻出のエリアです。
特に、「審査請求期間(3ヶ月・1年)」の数字や、「代理人と総代の権限の違い」などは、正確に覚えていないと命取りになります。

今回の講義では、審査請求のスタート地点である「請求先(審査庁)」の選び方から、審理の主役である「審理員」の役割、そしてタイムリミットである「期間制限」までを、体系的に整理して解説します。

💡 この記事で学べること

  • 「処分」と「不作為」で異なる審査請求の要件
  • 複雑な「審査請求先(審査庁)」の振り分けルール
  • 平成26年改正で登場した「審理員」の役割と指名手続
  • 「総代」と「代理人」の権限の違い(取下げができるか?)
  • 絶対に暗記すべき「審査請求期間」の数字と起算点

1. 審査請求ができるのは誰?(不服申立資格)

行政庁に文句を言えるのは、その処分によって影響を受ける当事者だけです。誰でもかれでも文句を言えるわけではありません。

(1) 処分についての審査請求

行政庁の処分に「不服がある者」が審査請求できます(2条)。
この「不服がある者」とは、単に感情的に納得できない人ではなく、「法律上の利益がある者」を指します(最判昭53.3.14)。

💡 法律上の利益とは

当該処分により、自己の権利や法律上保護された利益を侵害された、または必然的に侵害されるおそれのある者のことです。
(例)営業停止処分を受けた店主は当然OKですが、単に「近所の店が営業停止になって悲しい」というだけの客はNGです。

(2) 不作為についての審査請求

申請をしたのに無視されている(不作為)場合、審査請求ができるのは「当該申請をした者」に限られます(3条)。
申請もしていない第三者が「あの人の申請を早く処理してあげて」と審査請求することはできません。

【不作為の要件】
1. 法令に基づく申請であること(単なる陳情などは対象外)。
2. 相当の期間が経過したこと。
3. 何らの処分もしないこと(何か返事が来たら、それは「処分」に対する不服になります)。

2. どこに提出すればいい?(審査請求先)

審査請求書を提出する相手(審査庁)は、原則として「最上級行政庁」ですが、例外も多くあります。以下のフローチャートで整理しましょう。

(1) 原則:最上級行政庁(4条4号)

処分庁(処分をした役所)に上級行政庁(監督する役所)がある場合は、その最上級行政庁に対して審査請求をします。
(例)県知事の処分 → 担当大臣へ

(2) 例外:処分庁に直接請求する場合(4条1号)

以下の場合は、処分をした行政庁(処分庁)自身が審査庁になります。

  • 上級行政庁がない場合(例:大臣の処分、独立性の高い委員会の処分など)
  • 処分庁が「主任の大臣」「宮内庁長官」「外局の長(庁の長官)」である場合

(3) その他の例外

  • 宮内庁長官・外局の長が上級庁の場合:その長官等に請求(4条2号)。
  • 主任の大臣が上級庁の場合:その大臣に請求(4条3号)。
💡 試験対策上のまとめ

基本は「一番偉いところ(最上級庁)」に出す。
ただし、処分庁自体が大臣や外局の長(金融庁長官など)なら、「そこ(処分庁)」に出す。
※なお、窓口を間違えないように、処分庁を経由して提出することも認められています(21条)。

3. 審査請求の手続の流れ(全体像)

審査請求が行われると、以下のような流れで手続きが進みます。平成26年改正で導入された「審理員」と「行政不服審査会」がポイントです。

  1. 審査請求書の提出
  2. 審理員の指名:審査庁が、処分に関与していない職員を指名する。
  3. 審理手続:審理員が、審査請求人と処分庁の言い分を聞く(主張・証拠提出)。
  4. 審理員意見書の提出:審理員が「こう裁決すべき」という意見書を作る。
  5. 行政不服審査会への諮問:審査庁が、第三者機関(審査会)に「これでいい?」と聞く。
  6. 答申:審査会が「OK(または修正すべき)」と答える。
  7. 裁決:審査庁が最終決定を下す。

4. 審理の主役たち(審理員・代理人・総代)

(1) 審理員(しんりいん)

審査庁の職員の中から指名されますが、公正さを保つため、「処分に関与した者」はなれません(9条)。
※行政手続法の「聴聞の主宰者」は処分担当者でもなれましたが、不服審査法の「審理員」はダメです。ここが違います。

【指名しなくてよい場合(例外)】
・審査庁が委員会等の場合(合議制なので公正さが担保されている)。
・条例で特別の定めがある場合。
・審査請求を「却下(門前払い)」する場合。

(2) 審査請求人

個人だけでなく、法人や「権利能力なき社団・財団」(町内会やPTAなど)も、代表者の定めがあればその名で審査請求できます(10条)。

(3) 総代(そうだい)

多数の人が共同で審査請求する場合、3人以内の総代を互選(自分たちで選ぶ)することができます(11条)。
総代は、他のメンバーのために手続きを進めますが、「審査請求の取下げ」だけはできません(勝手にやめられたら困るから)。

(4) 代理人

弁護士などに代理させることができます(12条)。
代理人は、各自単独で行為ができますが、「審査請求の取下げ」には特別の委任が必要です。

項目 総代 代理人
人数 3人以内 制限なし
取下げ 不可(全員の同意があっても不可という解釈が一般的だが、条文上は単に「取下げを除き」とある) (ただし特別の委任が必要)

5. 期間の制限(標準審理期間・審査請求期間)

ここが最も暗記が必要な箇所です。数字を正確に覚えましょう。

(1) 標準審理期間(16条)

「審査請求を受けてから裁決までにかかる標準的な期間」のことです。

  • 設定義務努力義務(定めるよう努める)。
  • 公表義務:定めたときは、法的義務(公にしておかなければならない)。

※行政手続法の「標準処理期間」と同じ構造です。

(2) 審査請求期間(18条)〜最重要〜

いつまでも文句を言えるわけではありません。タイムリミットがあります。

① 処分についての審査請求

基準 期間 例外(正当な理由)
主観的期間
(知った日から)
3ヶ月以内 あり(天災など)
客観的期間
(処分があった日から)
1年以内 あり
💡 再調査の請求を経た場合

再調査の請求(処分庁への文句)をして、その決定が出た後に審査請求をする場合は、
・決定を知った日の翌日から1ヶ月以内
・決定があった日の翌日から1年以内
となります。期間が短くなる点に注意!

② 不作為についての審査請求

期間制限はありません。
不作為(無視されている状態)が続いている限り、いつでも審査請求できます。

③ 期間計算の特例

郵送で提出する場合、「送付に要した日数」は算入されません(18条3項)。
つまり、消印有効(発信主義)のような扱いです(厳密には到達主義ですが、期間計算上は郵送日数が引かれるため、期限ギリギリに投函しても間に合う仕組みです)。

6. 実戦問題で確認!

問1:審査請求先(審査庁)
行政不服審査法に基づく審査請求先に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 処分庁に上級行政庁がある場合には、原則として当該処分庁に対して審査請求をしなければならない。
2. 処分庁が主任の大臣である場合には、当該大臣に上級行政庁はないものとみなされるため、当該大臣に対して審査請求をする。
3. 処分庁が外局の長(例:金融庁長官)である場合、その上級行政庁である主任の大臣(例:内閣総理大臣)に対して審査請求をしなければならない。
4. 地方公共団体の長がした処分については、常に総務大臣に対して審査請求をしなければならない。
5. 処分庁に上級行政庁がない場合には、審査請求をすることができず、直ちに行政事件訴訟を提起しなければならない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。上級行政庁がある場合は、原則として最上級行政庁にします。

2. 正しい。主任の大臣は最上級庁としての性格を持つため、大臣自身に審査請求します(4条1号)。

3. 誤り。外局の長(庁の長官)の処分については、当該庁の長官に審査請求します(4条1号)。大臣ではありません。

4. 誤り。地方公共団体の長の処分で、上級庁がない場合(自治事務など)は、その長自身に審査請求します。

5. 誤り。上級庁がない場合は、処分庁に対して審査請求をします。

問2:審理員・総代・代理人
審査請求の手続における登場人物に関する次の記述のうち、行政不服審査法の規定に照らし妥当なものはどれか。
1. 審査庁は、審査請求がされたときは、原則として審査庁に所属する職員の中から審理員を指名しなければならないが、処分に関与した職員を指名することも認められている。
2. 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができ、総代は、審査請求の取下げを含め、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。
3. 審査請求人は、代理人を選任することができるが、代理人が審査請求を取り下げるためには、特別の委任が必要である。
4. 権利能力なき社団は、代表者の定めがある場合であっても、法人格を有しないため、その名で審査請求をすることはできない。
5. 審理員となるべき者の名簿を作成することは、審査庁となるべき行政庁の法的義務とされている。
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正解 3

解説:

1. 妥当でない。処分に関与した者は審理員になれません(9条2項)。

2. 妥当でない。総代は審査請求の取下げはできません(11条3項)。

3. 妥当である。代理人は特別の委任があれば取下げ可能です(12条2項)。

4. 妥当でない。代表者の定めがあれば、その名で審査請求できます(10条)。

5. 妥当でない。名簿の作成は努力義務です(17条)。作成した場合は公表義務があります。

問3:審査請求期間
処分についての審査請求期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 処分があったことを知った日の翌日から起算して6ヶ月を経過したときは、正当な理由がない限り、審査請求をすることができない。
2. 処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、正当な理由がない限り、審査請求をすることができない。
3. 不作為についての審査請求は、申請から相当の期間が経過した日の翌日から起算して3ヶ月以内にしなければならない。
4. 審査請求書を郵便で提出した場合、審査請求期間の計算においては、送付に要した日数が算入されるため、期間内に審査庁に到達していなければならない。
5. 再調査の請求についての決定を経た後に審査請求をする場合、その期間は、当該決定があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内である。
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正解 2

解説:

1. 誤り。知った日の翌日から3ヶ月です(18条1項)。

2. 正しい。客観的期間は1年です(18条2項)。

3. 誤り。不作為についての審査請求には期間制限はありません

4. 誤り。送付に要した日数は算入されません(18条3項)。

5. 誤り。再調査を経た場合は、決定を知った日の翌日から1ヶ月以内です(18条1項)。

7. まとめと学習のアドバイス

今回の範囲は、数字と役割分担を正確に覚えることが合格への近道です。

  • 期間:「知って3ヶ月、あって1年」。再調査後は「1ヶ月」。
  • 審理員:「処分関与者はNG」。
  • 総代 vs 代理人:「総代は取下げ不可、代理人は特別委任で可」。

特に「審査請求期間」は、行政事件訴訟法の「出訴期間(知って6ヶ月、あって1年)」と混同しやすいので、比較して覚えるようにしましょう。
次回は、いよいよ審理の中身(審理手続)に入ります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「法律上の利益」とは具体的にどういう意味ですか?
「その処分を取り消すことで回復される利益が、法律によって保護されていること」を意味します。例えば、公衆浴場の営業許可に対して、既存の業者が「商売敵が増えるから困る」と文句を言えるかは、公衆浴場法が「既存業者の経営保護」を目的にしているかどうかで決まります(判例は肯定)。単なる事実上の利益(反射的利益)しか持たない人は、審査請求できません。
Q2. 不作為の審査請求に期間制限がないのはなぜですか?
不作為とは「申請したのに無視されている状態」のことです。この状態は現在進行形で続いており、違法状態が継続しているため、「いつから起算して〇ヶ月」と区切る意味がないからです。無視されている限り、いつでも「早く返事をしろ」と言えます。
Q3. 総代と代理人の違いがよく分かりません。
「総代」は、共同で審査請求をしている仲間の中から選ばれたリーダーです。あくまで当事者の一人です。
「代理人」は、弁護士などの外部の専門家(または知人)に頼んで代わりにやってもらう人です。
総代は仲間を代表しているだけなので、勝手に「やーめた(取下げ)」とは言えませんが、代理人は依頼者の意思(特別委任)があれば取下げも可能です。

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