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講義50:【民法親族法】婚姻・離婚の成立要件と財産分与・重要判例

行政書士試験の民法において、「親族・相続」分野は私たちの日常生活に最も密着している法律です。「結婚する」「家を買う」「離婚する」といったライフイベントに直結するため、イメージが湧きやすく、得点源にしやすい分野でもあります。

しかし、日常用語としての「親戚」と法律上の「親族」は範囲が異なったり、夫婦間の財産ルール(日常家事債務など)には厳密な規定があったりと、正確な条文知識が求められます。また、「浮気をした夫から離婚を請求できるのか?」といったドロドロとしたトラブルについては、最高裁判所の重要な判例がいくつも存在し、本試験で頻繁に問われます。

この記事では、Aさん・Bさん夫婦のストーリーを交えながら、婚姻の成立から夫婦の財産ルール、そして離婚の効力や重要判例まで、初学者にも直感的に理解できるように分かりやすく解説します。特に「死別」と「離婚(離別)」によるルールの違いは試験の超頻出ポイントですので、しっかり整理していきましょう。

💡 この記事で学べること

  • 法律上の「親族の範囲」と親等の数え方
  • 婚姻の成立要件と、近親婚などの「婚姻障害」のルール
  • 婚姻の無効・取消しの違いと、届出に関する重要判例
  • 夫婦財産制(日常家事債務の連帯責任と特有財産)
  • 離婚の効力(財産分与・復氏)と「死別」との違い
  • 有責配偶者からの離婚請求が認められるための3要件(判例)
  • 本試験レベルの多肢選択式問題による実戦演習

1. 婚姻と親族の基本ルール

(1) 法律上の「親族」の範囲とは?

A男さんとB女さんが結婚(婚姻)すると、お互いが「配偶者」となり、新たな親族関係が生まれます。では、法律上「親族」とはどこまでの範囲を指すのでしょうか。

民法上、親族とは「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」を意味します(民法725条)。

  • 血族(けつぞく):血のつながった親族(自然血族)や、養子縁組による親族(法定血族)のこと。
  • 姻族(いんぞく):配偶者の血族のこと。例えば、A男さんから見た「B女さんの両親(義理の父母)」や「B女さんの兄弟(義理の兄弟)」が姻族です。
  • 親等(しんとう):親族の遠近を示す単位。親子関係を「1親等」として、世代をさかのぼったり下ったりするごとに「1」を足して計算します(例:兄弟姉妹は、自分→親(1)→兄弟(2)で「2親等」)。

(2) 婚姻の成立要件と婚姻障害

婚姻が成立するためには、当事者間に「結婚しよう」という婚姻意思の合致(実質的要件)と、役所への婚姻の届出(形式的要件)が必要です。届出は、当事者双方と成年の証人2人以上が署名した書面等で行う必要があります(民法739条)。

さらに、以下の「婚姻障害」に該当しないことが求められます。

① 婚姻適齢と重婚の禁止

婚姻は、男女ともに18歳にならなければすることができません(民法731条)。また、すでに配偶者がいる者は、重ねて婚姻をすることができません(重婚の禁止。民法732条)。
※なお、成年被後見人が婚姻する場合、判断能力が一時的に回復していれば、成年後見人の同意は不要で単独で婚姻できます(民法738条)。結婚という極めて個人的な身分行為は、本人の意思が最大限尊重されるからです。

② 近親者間などの婚姻禁止

家族秩序の混乱を防ぐため、以下の者同士の婚姻は禁止されています。

  • 直系血族又は3親等内の傍系血族:親子や祖父母と孫(直系)、兄弟姉妹や「おじ・おば」と「おい・めい」(傍系3親等)の結婚は禁止です(※いとこは4親等なので結婚できます)。
  • 直系姻族間:例えば「夫と、妻の母親(義母)」の結婚は禁止です。これは離婚や死別で姻族関係が終了した後でも禁止されます(民法735条)。
  • 養親子等間:養親と養子などの間も、離縁によって親族関係が終了した後でも結婚できません(民法736条)。

(3) 婚姻の無効と取消し

婚姻の要件を満たしていない場合、その婚姻は「無効」または「取消し」の対象となります。両者は効果が大きく異なります。

区分 原因 効力(効果)
無効 ・人違い等で婚姻意思がないとき
婚姻の届出をしないとき
初めから全く効力が生じない。
取消し ・不適齢者の婚姻
・重婚、近親婚
・詐欺や強迫による婚姻
取り消されると、将来に向かってのみ効力が消滅する(初めにさかのぼらない)。生まれた子は嫡出子のまま。
💡 重要判例:婚姻意思と届出に関するトラブル

① 偽装結婚(最判昭44.10.31)
真に夫婦となる意思がなく、単に「子供を嫡出子(婚姻中の子)にするため」などの便法として婚姻届を出した場合、婚姻意思がないため無効となります。

② 届出受理時の意識不明(最判昭45.4.21)
A男とB女が婚姻意思に基づいて婚姻届を作成し、役所へ向かう途中でA男が交通事故に遭い意識不明になったとします。B女がそのまま届出を提出して受理された場合、受理された時点でA男は意識を失っていましたが、事前に確固たる婚姻意思があったため、この婚姻は有効に成立します。

2. 婚姻の効力と夫婦財産制

(1) 夫婦の氏と夫婦間契約の取消権

婚姻した夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏(名字)を称します(民法750条)。

また、夫婦は互いに同居し、協力・扶助する義務を負います。夫婦間で「債権者・債務者」という対立関係になることは家庭の平和を乱すため、夫婦間で結んだ契約は、婚姻中であれば原則としていつでも夫婦の一方から取り消すことができます(民法754条)。

(2) 夫婦財産制(日常家事債務と特有財産)

夫婦の財産関係は、婚姻前に「夫婦財産契約」を結んで登記をすればそれに従いますが、日本ではほとんど利用されていません。通常は民法が定める「法定財産制」に従います。

① 日常家事債務の連帯責任(民法761条)

夫婦の一方が「日常の家事(食料品の購入、家賃の支払い、家具の購入など)」に関して第三者と契約をした場合、もう一方の配偶者も連帯責任を負います。

例えば、専業主婦のB女さんが、A男さんに無断で家具屋Cから生活に必要な家具をツケで購入した場合、家具屋Cは夫であるA男さんに対しても代金の支払いを請求できます。夫婦は生活共同体であり、いちいち「夫の許可はありますか?」と確認しなければならないとすると、取引の安全が害されるからです。

② 夫婦間の財産の帰属(特有財産)

結婚しているからといって、すべての財産が共有になるわけではありません。夫婦の一方が婚姻前から有する財産や、婚姻中であっても自己の名で得た財産(親からの相続財産など)は、その人の単独所有となり、これを「特有財産」と呼びます(民法762条1項)。
※どちらの所有か明らかでない財産は、夫婦の共有と推定されます。

💡 学習のポイント:名義だけを変えた場合は?

A男さんの給料(夫の収益)で購入した不動産を、夫婦の合意で「B女さん(妻)の名義」で登記したとします。この場合、名義が妻だからといって妻の特有財産になるわけではありません。実質的に夫の収入で買ったものであるため、妻の特有財産とは認められないとするのが判例です(最判昭34.7.14)。

3. 離婚の成立と効力

(1) 離婚の効力と「死別」との違い

離婚とは、生存中に将来に向かって婚姻関係を解消することです。離婚すると様々な法的な効果が生じますが、試験では「配偶者が死亡した場合(死別)」との違いがよく問われます。

項目 離婚(離別)の場合 死別の場合
姻族関係の終了 離婚によって当然に終了する。 当然には終了しない。生存配偶者が終了させる意思表示をしたときに終了する。
復氏(名字を戻すか) 当然に婚姻前の氏に復する。
(※離婚から3ヶ月以内に届出をすれば、婚姻中の氏を名乗ることも可能)
当然には復氏しない。生存配偶者が復氏の届出をしたときに復する。

(2) 財産分与と慰謝料

離婚をした者の一方は、相手方に対して「財産の分与」を請求することができます(民法768条)。財産分与には、以下の3つの要素が含まれます。

  1. 清算:婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を分け合うこと。
  2. 扶養:離婚後、経済力のない配偶者の生活を維持するための援助。
  3. 慰謝料:相手方の有責行為(不倫など)に対する精神的苦痛の賠償。
💡 重要判例:財産分与と慰謝料の二重請求

夫の不倫が原因で離婚し、すでに「財産分与」を受け取っていた妻が、後から別途「慰謝料」を請求できるでしょうか?
判例は、財産分与の制度は共同財産の清算や扶養を目的とするものであり、慰謝料とは性質が必ずしも同じではないため、すでに財産分与がなされたからといって、別途不法行為を理由として慰謝料を請求することは妨げられないとしています(最判昭46.7.23)。(※ただし、財産分与の中に慰謝料分が十分に考慮されて支払われている場合は、重ねて請求することはできません。)

(3) 裁判離婚の原因と「有責配偶者からの離婚請求」

夫婦の話し合いで離婚がまとまらない場合、家庭裁判所の調停を経て、最終的に「裁判離婚」を求めることになります。裁判で離婚が認められるためには、以下のいずれかの原因が必要です(民法770条1項)。

  • ① 配偶者に不貞な行為(不倫)があったとき
  • ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき(生活費を渡さず家出するなど)
  • ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  • ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

■ 有責配偶者からの離婚請求(超重要判例)

自ら不倫をして家を出て行った夫A(有責配偶者)が、妻Bに対して「もう夫婦関係は破綻しているから離婚してくれ」と裁判を起こした場合、認められるでしょうか?

かつての判例は「自ら原因を作った者からの請求は許されない」として一切認めていませんでした。しかし、現在の判例(最大判昭62.9.2)は、夫婦関係が完全に破綻しているのに戸籍上だけ夫婦にしておくのは不自然であるとし、以下の3つの厳しい要件をすべて満たす場合には、例外的に有責配偶者からの離婚請求を認めるようになりました。

  1. 夫婦の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居していること。
  2. その間に未成熟子(独立して生活できない子供)がいないこと。
  3. 相手方配偶者が、離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれないこと。

この3要件は、本試験の多肢選択式や記述式でも狙われるキーワードですので、必ず暗記してください。

4. 実戦問題で確認!

問1:婚姻の要件と無効・取消し
婚姻に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、正しいものはどれか。
1. 成年被後見人が婚姻をするには、事理を弁識する能力が一時的に回復していたとしても、常に成年後見人の同意を得なければならない。
2. 婚姻意思に基づいて婚姻届出書が作成された場合であっても、その届出が受理された当時に当事者の一方が交通事故等により意識を失っていたときは、当該婚姻は無効となる。
3. 直系姻族の間では婚姻をすることができないが、離婚や死別によって姻族関係が終了した後であれば、婚姻をすることができる。
4. 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができるが、取り消された場合であっても、婚姻の効力は将来に向かってのみ消滅する。
5. 当事者間に真に夫婦としての共同生活を設定する意思がなく、単に子に嫡出子たる身分を与えるための方便として婚姻届を提出した場合、その婚姻は取り消すことができる。
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正解 4

解説:

1. 誤り。成年被後見人が婚姻する場合、成年後見人の同意は不要です(民法738条)。

2. 誤り。届出受理時に意識を失っていても、事前に婚姻意思があり届出書が作成されていれば、婚姻は有効に成立します(最判昭45.4.21)。

3. 誤り。直系姻族間の婚姻は、姻族関係が終了した後であっても禁止されています(民法735条)。

4. 正しい。婚姻の取消しの効力は、初めにさかのぼらず、将来に向かってのみ消滅します(民法748条1項)。

5. 誤り。真に夫婦となる意思がない仮装結婚は、取消しではなく「無効」となります(最判昭44.10.31)。

問2:夫婦財産制と日常家事債務
夫婦の財産関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、誤っているものはどれか。
1. 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産となる。
2. 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される。
3. 夫婦間の合意により、夫の収益によって購入した不動産を妻名義で登記した場合、当該不動産は妻の特有財産として認められる。
4. 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方も、これによって生じた債務について連帯責任を負うのが原則である。
5. 夫婦間で締結した契約は、婚姻中であれば、原則としていつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる。
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正解 3

解説:

1. 正しい。特有財産の定義です(民法762条1項)。

2. 正しい。帰属不明の財産は共有と推定されます(民法762条2項)。

3. 誤り。夫の収益で購入した不動産を妻名義で登記しても、実質的な資金の出所から判断され、妻の特有財産とは認められません(最判昭34.7.14)。

4. 正しい。日常家事債務の連帯責任の規定です(民法761条)。

5. 正しい。夫婦間契約の取消権の規定です(民法754条)。

問3:離婚の効力と有責配偶者からの離婚請求
離婚に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、正しいものはどれか。
1. 夫婦が離婚した場合、姻族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をしなければ終了しない。
2. 婚姻によって氏を改めた者は、離婚によって当然に婚姻前の氏に復するが、配偶者が死亡した場合には、当然に婚姻前の氏に復する。
3. 離婚に伴う財産分与がすでになされている場合、相手方の有責な行為によって精神的苦痛を被ったとしても、別途不法行為を理由として慰謝料を請求することは一切許されない。
4. 自ら不貞行為を行った有責配偶者からの離婚請求は、信義誠実の原則に反するため、いかなる事情があっても裁判所がこれを認容することはない。
5. 裁判所は、民法が定める裁判離婚の原因(不貞行為や悪意の遺棄など)が存在する場合には、一切の事情を考慮することなく、必ず離婚の請求を認容しなければならない。
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正解 1

解説:

1. 正しい。離婚の場合は当然終了、死別の場合は終了の意思表示が必要です(民法728条)。

2. 誤り。死別の場合、当然には復氏しません。生存配偶者が「復氏の届出」をしたときに復氏します(民法751条1項)。

3. 誤り。財産分与と慰謝料は性質が異なるため、財産分与がなされていても別途慰謝料請求をすることは妨げられません(最判昭46.7.23)。

4. 誤り。有責配偶者からの請求であっても、「相当の長期間別居」「未成熟子がいない」「相手方が極めて苛酷な状態におかれない」という要件を満たせば、例外的に認められます(最大判昭62.9.2)。

5. 誤り。裁判離婚の原因があっても、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます(民法770条2項)。

5. まとめと学習のアドバイス

親族法の学習において最も重要なのは、「似ている制度の比較」です。

  • 無効と取消し:婚姻意思がない(偽装結婚)なら「無効」。不適齢や詐欺なら「取消し(将来に向かって消滅)」。
  • 離婚(離別)と死別:離婚なら姻族関係は「当然終了」、復氏も「当然復氏」。死別ならどちらも「生存配偶者のアクション(意思表示や届出)」が必要。

また、判例知識としては「有責配偶者からの離婚請求の3要件」が圧倒的に重要です。単に「認められることがある」と覚えるだけでなく、「相当の長期間別居」「未成熟子なし」「苛酷な状態なし」という具体的なキーワードを記述式対策としても書けるようにしておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 婚姻の取消しと無効はどう違うのですか?
「無効」は、最初から全く結婚の効力が生じなかったことになります(偽装結婚など)。一方「取消し」は、取り消されるまでの間は有効な結婚として扱われ、取り消された時点から「将来に向かってのみ」効力が消滅します。そのため、取り消される前に生まれた子供は「婚姻中の子(嫡出子)」として扱われます。
Q2. 夫が勝手に借金を作った場合、妻も返済しなければなりませんか?
その借金が「日常の家事(食費、家賃、光熱費、生活に必要な家具の購入など)」に関するものであれば、妻も連帯責任を負うため返済義務があります。しかし、夫の個人的なギャンブルの借金や、事業のための借金など、日常家事の範囲を超えるものであれば、妻が連帯責任を負うことはありません。
Q3. 自分が浮気をして家を出た場合でも、離婚裁判を起こせますか?
自ら原因を作った有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。ただし、例外として「①相当の長期間別居している」「②未成熟の子供がいない」「③相手が離婚によって極めて苛酷な状態におかれない」という3つの厳しい条件をすべて満たした場合には、裁判で離婚が認められることがあります。

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