- 行政法(択一・記述)
- 2026年2月25日
講義28:【行政事件訴訟法】取消訴訟の訴訟要件③「訴えの利益・被告適格・出訴期間」を完全攻略
「裁判に勝ちたい!」と思って訴訟を起こしても、裁判所から「も……
行政書士試験の行政法において、最も出題頻度が高く、かつ最も重要なテーマが「行政行為(ぎょうせいこうい)」です。
しかし、テキストを開くと「公定力」「不可争力」といった難解な用語や、「許可」「認可」「特許」といった似たような言葉が並び、混乱してしまう受験生が後を絶ちません。
「なぜ違法な処分でも、勝手に無視してはいけないのか?」
「農地の売買にはなぜ許可が必要で、勝手に行うとどうなるのか?」
これらの疑問は、行政行為の「効力」と「分類」を正しく理解することで、すっきりと解消します。本講義では、行政作用法の核となるこれらの概念を、具体的なストーリーを交えて徹底的に解説します。
行政機関が国民に対して行う活動を「行政作用」といいます。
昔の行政はシンプルで、「法律を作る」→「命令する(行政行為)」→「従わなければ強制する」という流れが基本でした。
しかし、現代の行政活動は複雑化しており、命令だけでなく「お願い(行政指導)」や「契約(行政契約)」など、多様な手法が使われています。まずはそれぞれの違いを整理しましょう。
| 種類 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 行政行為 (処分) |
行政庁が一方的に国民の権利義務を決める行為。 (例:営業許可、課税処分、違法建築の除却命令) |
権力的・一方的 国民の同意は不要。 |
| 行政立法 | 法律を実施するための細かいルール作り。 (例:政令、省令) |
一般的・抽象的 不特定多数に向けられたルール。 |
| 行政指導 | 行政目的実現のための協力要請。 (例:指導、勧告、助言) |
非権力的 相手方の任意の協力が必要(強制力なし)。 |
| 行政契約 | 対等な立場で結ぶ合意。 (例:公共工事の請負契約、用地買収) |
対等・合意 民法上の契約に近いが、公益性が考慮される。 |
行政法学において「行政行為」とは、以下の5つの要素を満たすものを指します。
具体例として、Aさんが自分の土地に違法な建物を建て、市役所から「撤去命令」を受けたケースで考えてみましょう。
東京都がごみ焼却場を設置しようとした際、住民が反対して取消訴訟を起こしました。
しかし、最高裁は「焼却場の設置決定は、都の内部的な意思決定に過ぎず、直接国民の権利義務を形成するものではない」として、行政処分(行政行為)性を否定しました。
つまり、単なる内部手続きや計画段階では、まだ行政行為とは呼べず、訴訟で争うことはできないということです。
行政行為には、民法上の行為(一般人の契約など)にはない、特殊な4つのパワー(効力)が認められています。
なぜこのような強い力が認められているかというと、行政活動を円滑に進め、公共の利益を守るためです。
「たとえ違法な処分であっても、権限ある機関によって取り消されるまでは、一応有効なものとして扱われる効力」です。
具体例:
税務署長が間違って、課税されるはずのないBさんに「100万円納税しろ」という処分を下しました(違法な処分)。
しかし、公定力があるため、Bさんは「これは間違いだから無効だ!」と勝手に無視することはできません。放っておくと滞納処分を受けます。
Bさんがこの効力を消すためには、正式な手続き(審査請求や取消訴訟)で取り消してもらう必要があります。
処分の違法性が誰の目から見ても明らかで、かつ重大である場合(例:死んだ人に課税したなど)は、その処分は最初から「無効」です。この場合、公定力は働きません。
「一定の期間(出訴期間)が過ぎると、もはや国民側から処分の効力を争うことができなくなる効力」です。
理由:
いつまでも「あの処分は違法だ」と蒸し返されると、行政関係が安定しないからです。
原則として、処分を知った日から3ヶ月(審査請求)または6ヶ月(取消訴訟)が経過すると、もう争えなくなります。
「処分をした行政庁自身も、自ら処分を変更・取消しできなくなる効力」です。
注意点:
これは全ての行政行為にあるわけではありません。審査請求に対する「裁決」のような、裁判に近い手続きを経て行われる行為(紛争解決的な行為)にのみ認められる例外的な効力です。
通常の処分(営業許可など)には不可変更力はないので、行政庁は間違いに気づけば自分で取り消すことができます。
「相手方が義務を果たさない場合、裁判所の判決を得ることなく、行政庁自らの力で強制執行できる効力」です。
民事との違い:
民法では、借金を返さない人がいても、いきなり家に押し入って差し押さえることは禁止されています(自力救済の禁止)。必ず裁判をして勝つ必要があります。
しかし、行政(例えば税金の滞納)では、裁判なしで差押えが可能です。
行政行為は、その内容によって分類されます。試験対策上、以下の3つの違い(特に裁量の広さと無許可行為の効力)を明確に区別することが合格のカギです。
定義:
公共の安全などのために一般的な禁止をかけ、特定の場合にその禁止を解除して、本来の自由を回復させる行為。
定義:
本来国民が持っていない新たな権利や地位を設定し、与える行為(「設権行為」とも言います)。
定義:
私人間の法律行為(契約など)を補充して、その法的な効力を完成させる行為。
法律の条文では「許可」と書いてあっても、学問上(試験上)の分類は異なる場合があります。
(例)
・農地法の「許可」 → 性質は「認可」
・電気事業法の「許可」 → 性質は「特許」
試験では「条文上の言葉」ではなく「法的性質」を問われます。
特定の事実や法律関係の存否を公に判断・確定する行為です。
正解 1
解説:
1. 妥当である。公定力の定義そのものです。
2. 妥当でない。「重大かつ明白な瑕疵」がある処分は当然に無効であり、公定力は働きません。したがって、無効確認訴訟等で争うことができます。
3. 妥当でない。不可争力は「国民側」が争えなくなる効力です。行政庁側を拘束するものではないため、行政庁は期間経過後でも職権取消しが可能です。
4. 妥当でない。不可変更力は、裁決などの紛争解決的な行為にのみ認められる例外的効力です。通常の処分には認められません。
5. 妥当でない。自力執行力が認められるには、必ず法律の根拠が必要です(法律の留保)。すべての行政行為に認められるわけではありません。
正解 5
解説:
1, 2, 3, 4はすべて妥当な記述です。
5. 妥当でない。認可は、法律行為の効力を完成させる「効力要件」です。したがって、認可を受けないで行った契約は無効となります(例:農地の売買契約は無効)。
正解 2
解説:
1. 妥当でない。建築確認の性質は講学上の「確認」です。
2. 妥当である。最判昭60.7.16の趣旨通りです。確認は裁量の余地のない行為です。
3. 妥当でない。建築確認を受けないと工事に着手できないという法的効果があるため、行政処分に該当します。
4. 妥当でない。行政指導を理由に処分を不当に遅らせることは違法となります(最判昭60.7.16)。
5. 妥当でない。確認処分に公定力があっても、実体法違反(違法建築)があれば、別途、違反是正命令を発することは可能です。
今回の範囲は、行政法の基礎にして最重要パートです。
特に「無許可営業の売買契約は有効か?」「無認可の農地売買は有効か?」という問いは、記述式でも頻出の論点です。「許可は取締りだから契約は有効、認可は効力発生要件だから契約は無効」という理屈(リーガルマインド)をしっかり身につけておきましょう。
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