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講義08:【行政作用法】行政行為の附款とは?条件・期限・負担の違いを解説

行政書士試験の勉強を進めていると、「行政行為」という言葉には慣れてきた頃かと思います。しかし、行政庁が許可や認可を出す際、単に「いいよ」と言うだけでなく、「ただし、〇〇すること」といった“おまけ”をつけることがよくあります。

この“おまけ”のことを法律用語で「附款(ふかん)」と呼びます。

「運転免許証の『眼鏡等』って附款なの?」「条件と負担って何が違うの?」
実は、この「附款」の分野は、言葉の定義だけでなく、「もし守らなかったらどうなるか?」「法律の根拠がなくても付けられるか?」といった応用論点が試験でよく問われます。

本講義では、行政行為の附款の種類と効力、そして行政裁量との関係について、具体例を交えながら深く掘り下げて解説します。記述式問題のネタにもなりやすい「負担」の性質は、特に重点的にマスターしましょう。

💡 この記事で学べること

  • 附款(条件・期限・負担)の定義と具体的な違い
  • 「負担」に違反した場合、許可本体はどうなるのか?
  • 法律の根拠がなくても附款を付けられるケース(裁量との関係)
  • 附款だけが違法だった場合、許可全体が無効になるのか?

1. 行政行為の附款(ふかん)とは?

附款の定義

行政行為の附款とは、「行政行為の効果を制限したり、特別な義務を課すために、主たる意思表示に付加される従たる意思表示」のことをいいます。

少し難しく聞こえますが、要するにメインの処分(許可など)にくっついている「条件」や「期限」などのことです。行政庁が柔軟に行政目的を達成するために利用されます。

💡 イメージ

「飲食店を営業していいよ(許可=主たる意思表示)」

「ただし、夜10時までね(附款=従たる意思表示)」

2. 附款の4つの種類(条件・期限・負担・撤回権の留保)

行政法学上、附款は主に以下の4種類(+法律効果の一部除外)に分類されます。特に「負担」は行政法特有の概念なので、民法で学ぶ条件・期限との違いを明確に区別する必要があります。

(1) 条件(じょうけん)

行政行為の効力の発生や消滅を、「発生不確実な事実」にかからせるものです。これは民法の条件と同じ考え方です。

  • 停止条件:ある事実が発生したら、効力が発生するもの。
    (例)「工事が完了したら、バス路線の営業を開始してよい」
    → 工事が完了するまでは営業できません。
  • 解除条件:ある事実が発生したら、効力が消滅するもの。
    (例)「一定期間工事に着手しなかったら、道路占用許可は失効する」
    → 着手しないという事実が発生すると、許可が自動的に消えます。

(2) 期限(きげん)

行政行為の効力の発生や消滅を、「発生確実な事実」にかからせるものです。

  • 始期:いつから効力が発生するか。(例)「4月1日から営業してよい」
  • 終期:いつ効力がなくなるか。(例)「許可の有効期間は3月31日までとする」
    ※一般的に運転免許証の有効期限などがこれに当たります。

(3) 負担(ふたん)〜最重要〜

附款の中で最も試験に出やすいのがこの「負担」です。
負担とは、「許可などの授益的行政行為に伴って、相手方に特別の義務を課すこと」をいいます。

具体例:
Aさんが「道路に看板を出したい」と申請し、道路占用許可をもらいました。その際、「占用料として月額1万円を納付すること」という義務が付けられました。これが負担です。

負担の法的特徴(条件との違い)

ここが非常に重要です。「条件」と「負担」は似ていますが、効力に大きな違いがあります。

項目 条件(停止条件) 負担
構造 条件が成就しないと、本体の効力が発生しない 本体の効力は直ちに発生し、それとは別に「義務」が発生する。
不履行の効果 効果が発生しないまま。
(例:工事完了まで営業不可)
本体の効力には影響しない。
(例:占用料を払わなくても、許可自体は有効のまま)
行政庁の対応 特になし(相手が権利を行使できないだけ)。 1. 義務の履行を強制できる(強制執行)。
2. 義務違反を理由に許可を撤回できる。
💡 負担のポイント

負担は、本体の行政行為とは別個独立した義務です。
したがって、「負担(義務)を守らなくても、直ちに許可が無効になるわけではない」という点が引っかけ問題の定番です。
行政庁は、負担違反を理由に、改めて「許可の撤回処分」を行う必要があります。

(4) 撤回権の留保

「ある特定の事由が発生したら、許可を取り消す(撤回する)かもしれないよ」とあらかじめ宣言しておくことです。

具体例:
「この先、道路拡張工事が必要になった場合には、看板設置許可を撤回します」と付記しておく場合などです。
通常、許可の撤回には正当な理由や補償が必要ですが、あらかじめ留保しておくことで、無補償で撤回しやすくなるという効果があります(ただし、無制限に許されるわけではありません)。

(5) 法律効果の一部除外

法令がその行政行為に与えている効果の一部を、特に除外するものです。
(例)公務員に出張を命じる際、「旅費は支給しない」とすること。
※これを行うには、必ず法律の明文の根拠が必要です。

3. 附款を付すことができる場合(付加可能性)

行政庁は、どんな時にでも自由に附款を付けられるわけではありません。「余計な条件をつけるな!」と国民から文句が出る可能性があるからです。
では、どのような場合に附款を付すことが許されるのでしょうか?

(1) 法律の明文規定がある場合

これは当然可能です。個別の法律に「許可には条件を付することができる」と書いてあれば、それに従って附款を付すことができます。

(2) 法律の規定がない場合(裁量行為と覊束行為)

ここが論点です。法律に「条件を付けられる」と書いていない場合でも、附款を付けられるでしょうか?
判例・通説は、「行政庁に裁量が認められる場合」には、明文の規定がなくても附款を付すことができるとしています。

  • 裁量行為の場合
    行政庁は「許可しない(拒否する)」という選択もできる強大な権限を持っています。それならば、「無条件許可」と「拒否」の中間である「条件付き許可(一部拒否)」をすることも、当然に含まれていると考えられます(大は小を兼ねる)。
    明文規定がなくても附款を付せる。
  • 覊束(きそく)行為の場合
    行政庁に判断の余地がなく、要件を満たせば必ず許可しなければならない行為(例:建築確認)では、勝手に余計な条件をつけることは許されません。
    明文規定がなければ附款を付せない。
💡 建築確認の例

建築確認は「確認的行為」であり、裁量の余地がない覊束的な行為です。したがって、法律に根拠がない限り、建築確認に附款(条件など)を付すことはできません。

4. 附款の限界と瑕疵(かし)の処理

附款を付すことができる場合でも、無制限ではありません。また、もし付けられた附款が違法だった場合、許可全体がどうなるかも問題となります。

(1) 附款の限界

附款は、以下のルールを守らなければなりません。

  • 目的の範囲内であること:法律の趣旨と無関係な条件をつけてはいけません(不当な他事考慮の禁止)。
  • 比例原則(必要最小限):必要な限度を超えて重い負担を課してはいけません。
  • 履行可能であること:実行不可能な義務を課してはいけません。

(2) 附款に瑕疵(違法)がある場合の効力

もし、行政庁が違法な附款(例えば、絶対に達成できない条件など)を付けてしまった場合、どうなるのでしょうか?
以下の2つのパターンに分けて考えます。

① 附款が「重要な要素」である場合

「この条件がないなら、絶対に行政庁は許可を出さなかったはずだ」といえる場合です。
この場合、附款と本体は一体不可分です。したがって、附款の違法は本体にも波及し、行政行為全体が違法(取消しの対象)となります。

② 附款が「重要な要素でない」場合

「まあ、この条件がなくても許可は出せただろう」といえる場合です。
この場合、本体から附款を切り離すことができます。したがって、附款の部分だけが無効(または取消し)となり、本体の許可は無条件の許可として存続します。

(3) 附款に対する不服申立て(争訟)

国民側が「許可は嬉しいけど、この条件だけは納得できない!」という場合、「条件だけ取り消してくれ」という訴訟(一部取消訴訟)はできるでしょうか?

  • 負担の場合
    負担はそれ自体が独立した義務付け処分としての性質を持つため、負担のみを対象とした取消訴訟が可能と解されています。
  • その他の附款(条件・期限など)の場合
    これらは本体と一体であり、独立性がないため、原則として附款だけの取消しを求めることはできません。許可全体の取消しを求めるか、あるいは変更の申請をする必要があります。

5. 実戦問題で確認!

問1:行政行為の附款の種類
行政行為の附款に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1. 「条件」とは、行政行為の効力の発生または消滅を、発生確実な事実にかからせる意思表示をいう。
2. 「期限」とは、行政行為の効力の発生または消滅を、発生不確実な事実にかからせる意思表示をいう。
3. 「負担」とは、授益的行政行為に付加して、相手方に特別の義務を課す意思表示をいい、相手方がこれに従わない場合、行政行為の効力は当然に消滅する。
4. 「撤回権の留保」とは、一定の事由が生じた場合に行政行為を撤回する権利を行政庁に留保するものであり、これにより行政庁は無制限に撤回権を行使できる。
5. 「法律効果の一部除外」とは、法律が当該行政行為に付与している効果の一部を発生させないとするものであり、これを付すには必ず法律の根拠が必要である。
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正解 5

解説:

1. 妥当でない。発生確実な事実にかからせるのは「期限」です。

2. 妥当でない。発生不確実な事実にかからせるのは「条件」です。

3. 妥当でない。負担に従わない場合でも、行政行為の効力は当然には消滅しません。行政庁が撤回処分を行うことで初めて消滅します。

4. 妥当でない。撤回権の留保があっても、撤回権の行使は公益上の必要性などの制約を受けます(無制限ではありません)。

5. 妥当である。法律効果の一部除外は、法律が定めた効果を変更するものであるため、必ず法律の明文の根拠が必要です(行政庁の裁量ではできません)。

問2:裁量行為と附款
行政行為に附款を付すことができる場合に関する次の記述のうち、判例・通説の趣旨に照らし妥当なものはどれか。
1. 行政行為に附款を付すことは、国民の権利義務に新たな制約を加えるものであるから、いかなる場合であっても必ず法律の明文の根拠が必要である。
2. 行政庁に裁量が認められる行政行為(裁量行為)であっても、法律の明文の根拠がなければ、原則として附款を付すことはできない。
3. 羈束行為(きそくこうい)については、行政庁の判断の余地がないため、法律に「附款を付すことができる」旨の規定がない限り、附款を付すことはできない。
4. 道路法に基づく道路の占用許可は、行政庁の裁量行為であるが、占用料の徴収という財産的義務(負担)を課す場合には、別途、財産権を侵害するとして法律の根拠が不可欠である。
5. 飲食店の営業許可は、講学上の「許可」にあたり、国民の本来の自由を回復させるものであるから、これに条件等の附款を付すことは一切認められない。
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正解 3

解説:

1. 妥当でない。裁量行為であれば、法律の根拠がなくても附款を付せると解されています。

2. 妥当でない。裁量行為には、法律の根拠がなくても附款を付すことができます(許可しないこともできる以上、制限付きで許可することもできるという「大は小を兼ねる」理論)。

3. 妥当である。羈束行為(例:建築確認)には、法律の根拠がない限り附款を付せません。

4. 妥当でない。占用許可が裁量行為であれば、それに伴う負担も裁量の範囲内で付加可能です(ただし比例原則等は守る必要があります)。

5. 妥当でない。許可であっても、食品衛生法などの目的の範囲内で必要な条件を付すことは認められます。

問3:負担の法的性質と訴訟
行政行為に付された「負担」に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
1. 負担は、主たる行政行為とは別個の独立した行政行為としての性質を有するため、相手方は負担のみの取消しを求めて取消訴訟を提起することができる。
2. 負担が履行されない場合、行政庁は、負担の不履行を理由として主たる行政行為を撤回することができるほか、法律の根拠があれば強制執行を行うこともできる。
3. 負担に重大かつ明白な瑕疵があり無効である場合、主たる行政行為の重要な要素となっていなければ、負担のみが無効となり、主たる行政行為は無条件の行政行為として存続する。
4. 負担が付された行政行為において、主たる行政行為自体が無効である場合でも、負担は独立性を有するため、負担のみが有効に存続することがある。
5. 行政庁が負担を付すことができる場合であっても、その内容は行政行為の目的の範囲内であり、かつ必要最小限度のものでなければならない。
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正解 4

解説:

1, 2, 3, 5はすべて妥当な記述です。

4. 妥当でない。附款はあくまで「従たる意思表示」です。主たる行政行為(本体)が無効であれば、それに付随する附款も当然に効力を失います(従は主に付き従う)。本体が死んでおまけだけ生き残ることはありません。

6. まとめと学習のアドバイス

行政行為の附款は、以下の3つのポイントを押さえれば怖くありません。

  • 定義の区別:「不確実=条件」「確実=期限」「義務=負担」。
  • 負担の特殊性:独立性があるため、違反しても本体は消えない。負担だけ訴訟で争える。
  • 付加のルール:裁量行為なら法律の根拠なしでOK。覊束行為ならNG。

特に「負担」に関しては、記述式試験で「行政庁はどのような措置をとることができるか?(答え:許可の撤回など)」や「Aはどのような訴訟を提起すべきか?(答え:負担の取消訴訟)」といった形で問われる可能性があります。ロジックをしっかり理解しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「負担」と「条件」の見分け方は?
文言だけでなく実質で判断します。「もし~しなければ許可は効力を失う」という書きぶりなら「条件(解除条件)」、「許可する。ただし~せよ」という書きぶりで、義務違反しても直ちに失効しない仕組みなら「負担」です。行政庁が後から撤回するかどうか選べるのが負担の特徴です。
Q2. なぜ「負担」だけ独立して取り消せるのですか?
負担は、それ自体が「~せよ」という命令(下命処分)の性質を持っているからです。他の附款(期限など)は、本体の効力の枠組みそのものなので切り離せませんが、負担は本体にくっついた別の命令なので、切り離して争うことが認められています。
Q3. 違法な附款がついた許可をもらったらどうすればいいですか?
附款(特に負担)だけで争える場合は一部取消訴訟を提起します。しかし、附款が本体と不可分で切り離せない場合は、許可全体の取消しを求めるか、あるいは行政庁に対して「附款のない許可への変更」を申請し、それが拒否されたら拒否処分の取消訴訟をやるなど、戦術が複雑になります。

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