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講義16:【行政手続法】申請に対する処分を完全攻略!審査基準と標準処理期間

「飲食店を開きたいから許可申請を出したのに、いつまで経っても返事が来ない…」
「不許可通知が来たけれど、理由が書いてなくて納得できない!」

もし行政手続法がなかったら、私たちはこのような理不尽な対応に泣き寝入りするしかありません。
行政手続法の第2章「申請に対する処分」は、国民が行政庁に対して許認可等を求めた際に、行政庁が守るべきルールを定めています。

この分野は、行政書士試験において最も出題頻度が高い超重要エリアです。
特に、「審査基準」と「標準処理期間」の義務の性質(法的義務か努力義務か)の違いや、形式不備の際の対応などは、正確に暗記していないと即失点につながります。

今回の講義では、申請から処分に至るまでのプロセス(審査基準の設定、審査、応答、理由提示など)を時系列で追いながら、試験で問われるポイントを徹底解説します。

💡 この記事で学べること

  • 審査基準と標準処理期間の「義務の性質」の違い
  • 申請書に不備があった場合の行政庁の正しい対応(補正 vs 拒否)
  • 拒否処分における「理由の提示」はどこまで詳しく書くべきか(判例)
  • 標準処理期間を過ぎたら直ちに違法になるのか?

1. 申請に対する処分の全体像

まずは、申請をしてから処分(許可・不許可)が出るまでの流れを確認しましょう。
行政手続法は、このプロセスの透明性と公正さを確保するために、行政庁に対して様々な義務を課しています。

【基本的な流れ】

  1. 事前準備:行政庁が「審査基準」や「標準処理期間」を設定・公表する。
  2. 申請:国民が申請書を窓口に提出する。
  3. 審査:行政庁が審査を開始する(形式審査・実質審査)。
  4. 応答:行政庁が「許可」または「拒否(不許可)」の処分を行う。
  5. 理由提示:拒否の場合は理由を示す。

2. 審査基準の設定と公表(5条)

「どういう条件なら許可が降りるのか」という基準(審査基準)が秘密にされていたら、国民は安心して申請できません。そこで、以下のルールが定められています。

(1) 設定義務と内容

行政庁は、審査基準を定めるものとし(法的義務)、その内容は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません。

(2) 公表義務

行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければなりません(法的義務)。

※「公にする」とは、事務所に備え付けたり、Webサイトに掲載したりして、誰でも見られる状態にしておくことです。

💡 ポイント

審査基準の設定も公表も、原則として「法的義務」です。「努めなければならない(努力義務)」ではない点に注意しましょう。

3. 標準処理期間の設定と公表(6条)

「申請してから何日くらいで結果が出るのか」という目安(標準処理期間)についてのルールです。ここは審査基準との対比でよく出題されます。

(1) 設定義務

行政庁は、標準処理期間を定めるよう努めなければなりません(努力義務)。

理由:
処分の種類によっては、個別の事情が複雑で「一律に〇日」と決めるのが難しい場合があるからです。そのため、設定自体は努力義務にとどめられています。

(2) 公表義務

標準処理期間を定めたときは、これを公にしておかなければなりません(法的義務)。

つまり、「定めるかどうかは努力目標だけど、もし定めたなら、隠さずに公表しなさい」ということです。

(3) 期間の計算(重要)

標準処理期間には、以下の時間は含まれません。

  • 形式上の不備を補正するために要する期間(申請者が書き直している時間)
  • 申請の処理の途中で申請者が内容を変更するために要する期間
  • 審査のため特に必要とする実験・検査等に要する期間(※これは含まれる場合と含まれない場合がありますが、補正期間が含まれない点が最重要です)
💡 期間経過の効果

標準処理期間を過ぎたからといって、直ちに不作為が違法になるわけではありません。あくまで「目安」だからです。
ただし、著しく長期間放置すれば、不作為の違法確認訴訟で違法と判断される要素にはなります。

【比較まとめ表】審査基準 vs 標準処理期間

項目 審査基準(5条) 標準処理期間(6条)
設定義務 法的義務
(定めるものとする)
努力義務
(定めるよう努める)
公表義務 法的義務
(公にしておかなければならない)
法的義務
(定めたときは、公にしておかなければならない)

4. 審査開始義務と応答(7条)

申請書が窓口に届いたら、行政庁はどうすべきでしょうか。

(1) 到達主義と審査開始義務

申請が事務所に到達したときは、遅滞なく審査を開始しなければなりません。
「まだ担当者が忙しいから受け取らない」といった運用は許されません。

(2) 形式上の要件に適合しない場合の対応(最重要)

申請書にハンコ漏れがあったり、添付書類が足りなかったりする場合(形式的不備)、行政庁は以下のいずれかの措置をとらなければなりません。

  1. 補正を求める(「直して再提出してください」と言う)
  2. 許認可等を拒否する(「不備があるから不許可です」と処分する)

ここが試験のツボ:
行政庁は、「補正を求めずに、いきなり拒否処分をする」ことも可能です。
試験では「必ず補正を求めなければならない」という選択肢が出ますが、それは誤りです。速やかな処理のために、補正か拒否かを選択できるのです。

💡 注意点

「申請書を突き返す(返戻)」という対応は法律上認められていません。受け取った上で、「補正を求める」か「拒否処分をする」かの二択です。

5. 理由の提示義務(8条)

行政庁が申請を拒否する処分をする場合、なぜダメだったのか理由を教える必要があります。

(1) 提示の要件

  • 対象:申請を拒否する処分(許可する場合は不要)。
  • 時期:処分と同時に。
  • 方法:書面で処分するときは、理由も書面で示さなければならない。

(2) 理由提示の程度(判例知識)

「要件を満たさないから」といった抽象的な理由でいいのでしょうか?
判例(旅券発給拒否事件・最判昭60.1.22など)は、以下のように述べています。

「いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がされたのかを、申請者が了知しうる程度」に示す必要がある。

つまり、単に「法〇条に該当する」と条文を挙げるだけでは不十分で、具体的にどの事実がどの要件に引っかかったのかが分かるように書かなければなりません(不服申立ての便宜のため)。

(3) 例外(簡易な理由提示)

法令や審査基準が数値で明確に決まっていて(例:点数不足など)、申請内容から不適合が明らかな場合は、とりあえず理由を示さずに拒否できます。
ただし、その場合でも、申請者の求めがあれば、後から理由を示さなければなりません。

6. その他の努力義務(9条・10条・11条)

以下の規定はすべて「努力義務」です。法的義務とのひっかけに注意しましょう。

(1) 情報の提供(9条)

行政庁は、申請者の求めに応じて、以下の情報を提供するよう努めなければなりません。
① 審査の進行状況
② 処分の時期の見通し(いつ頃結果が出るか)

※「許可される見込み(成否の見通し)」まで教える義務はありません。

(2) 公聴会の開催等(10条)

申請者以外の利害関係人(近隣住民など)がいる場合、公聴会を開くなどして意見を聞くよう努めなければなりません。

(3) 複数の行政庁が関与する場合(11条)

一つの事業に複数の許認可が必要な場合、行政庁同士が連絡を取り合って、審査を促進するよう努めなければなりません。
※ただし、他の行政庁の審査中であることを理由に、自分の審査を「殊更に遅延させること」は禁止されています(これは法的義務)。

7. 実戦問題で確認!

問1:審査基準と標準処理期間
行政手続法の定める審査基準および標準処理期間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 行政庁は、審査基準を定めるものとされているが、行政上特別の支障があるときは、これを公にしておく必要はない。
2. 行政庁は、標準処理期間を定めるものとされており、これを定めたときは、公にしておかなければならない。
3. 行政庁が標準処理期間を定めて公にしている場合において、当該期間を経過しても申請に対する処分がなされないときは、当該不作為は直ちに違法となる。
4. 審査基準は、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならないが、これは努力義務にとどまる。
5. 標準処理期間には、申請の補正のために要する期間も含まれるため、行政庁は補正期間を含めて標準処理期間内に処分を行わなければならない。
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正解 1

解説:

1. 正しい。審査基準の公表は法的義務ですが、「行政上特別の支障があるとき」は例外として公表しなくてよいとされています(5条3項)。

2. 誤り。標準処理期間の設定は「努力義務」です(6条)。定めた場合の公表は法的義務ですが、設定自体は義務ではありません。

3. 誤り。標準処理期間はあくまで目安であり、経過しても直ちに違法とはなりません。

4. 誤り。審査基準を具体的にすることは「法的義務」です(5条2項)。

5. 誤り。標準処理期間には、補正に要する期間は含まれません(6条)。

問2:形式上の要件に適合しない申請
法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請が行政庁の事務所に到達した場合の行政庁の対応に関する次の記述のうち、行政手続法の規定に照らし正しいものはどれか。
1. 行政庁は、速やかに、申請者に対して相当の期間を定めて当該申請の補正を求めなければならず、直ちに当該申請を拒否することはできない。
2. 行政庁は、速やかに、当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならず、申請者に補正を求めることはできない。
3. 行政庁は、速やかに、申請者に対して相当の期間を定めて当該申請の補正を求めるか、または、当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
4. 行政庁は、当該申請を受理することなく、速やかに申請者に返戻しなければならない。
5. 行政庁は、当該申請の補正を求めるか否かについて裁量を有するが、補正を求める場合には、補正が完了するまで審査を開始してはならない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。直ちに拒否することも可能です。

2. 誤り。補正を求めることも可能です。

3. 正しい。行政庁は「補正を求める」か「拒否する」かのいずれかを選択しなければなりません(7条)。

4. 誤り。法律上「返戻」という対応は規定されていません。

5. 誤り。審査開始義務は到達時点で発生します。

問3:理由の提示義務
申請に対する処分の理由の提示に関する次の記述のうち、判例および行政手続法の規定に照らし妥当でないものはどれか。
1. 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合は、原則として、申請者に対し、同時に当該処分の理由を示さなければならない。
2. 許認可等を拒否する処分を書面でするときは、その理由は必ず書面で示さなければならない。
3. 理由の提示の程度については、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がされたのかを、申請者が了知しうる程度に示す必要がある。
4. 申請を認容する処分(許可処分)をする場合であっても、行政運営の透明性を確保するため、行政庁は当該処分の理由を示さなければならない。
5. 法令等の要件が数量的指標により明確に定められており、申請がこれに適合しないことが明らかである場合、行政庁は、申請者の求めがあったときに理由を示せば足りる。
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正解 4

解説:

1, 2, 3, 5は正しい記述です。

4. 妥当でない。理由の提示義務があるのは「不利益な処分(拒否処分)」の場合です。申請通りの許可(認容処分)をする場合には、理由は不要です(8条1項)。

8. まとめと学習のアドバイス

申請に対する処分は、以下の「義務の強弱」を整理することが合格への近道です。

  • 法的義務(絶対やる):審査基準の設定・公表、審査開始、補正or拒否、理由提示。
  • 努力義務(頑張る):標準処理期間の設定、情報の提供、公聴会、複数行政庁の連携。
  • 例外:標準処理期間も「設定したら」公表は法的義務になる。

特に「標準処理期間の設定は努力義務」という点は、過去問で何度も問われている超頻出ポイントです。理由(個別の事情で時間が読めないこともあるから)とセットで覚えておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 標準処理期間を過ぎたら、申請は自動的に許可になりますか?
なりません。標準処理期間はあくまで事務処理の目安(努力目標)であり、経過したからといって自動的に許可(みなし許可)になる効力はありません。また、直ちに違法(不作為の違法)になるわけでもありませんが、著しい遅延があれば違法と判断される要素にはなります。
Q2. 理由の提示は「法令の条文」を書くだけではダメなのですか?
原則としてダメです。判例(一級建築士免許取消処分事件など)は、単に根拠条文を示すだけでは不十分であり、どの事実がその条文のどの要件に該当したのかを具体的に示す必要があるとしています。これは、申請者が不服申立てをする際に、争点を明確にするためです。
Q3. 補正命令に従わない場合はどうなりますか?
行政庁が補正を求めたにもかかわらず、申請者が相当の期間内に補正しない場合、行政庁はその申請を拒否する処分をすることができます。補正命令は「直してくれたら審査を進めますよ」というチャンスなので、それを無視すれば形式要件不備として却下(拒否)されることになります。

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