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講義05:【情報公開法・公文書管理法】行政の透明性と説明責任を完全攻略

「一般知識(基礎知識)」の法令科目において、個人情報保護法と並んで重要なのが、今回解説する「情報公開法」「公文書管理法」「番号法(マイナンバー法)」の3点セットです。

これらは一見すると地味な法律に見えますが、試験では「条文の正確な知識」を問う問題が頻出します。「情報公開法には『知る権利』が明記されている?」「公文書を勝手に捨てたら罰則はある?」といった基本的な○×判定で迷ってしまうと、合格ラインに乗ることが難しくなります。

特に情報公開法は、個人情報保護法と対になる「車の両輪」のような関係です。
・個人情報保護法=個人のプライバシーを守る(隠す)
・情報公開法=行政の活動を監視する(見せる)
この対比を意識しながら学習することで、理解の定着度が格段にアップします。

この記事では、これら関連法の重要ポイントを、制度の「趣旨」や「具体例」を交えて徹底解説します。曖昧な知識を整理し、確実に得点源に変えていきましょう!

1. 情報公開法:行政の「説明責任」を果たすためのルール

まず、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)から見ていきます。これは1999年に制定され、行政の透明性を高めるための画期的な法律でした。

(1) 目的規定のポイント(第1条)

法律の第1条(目的)は、その法律の精神を表す最も重要な部分です。試験でもキーワードの穴埋めや正誤判定でよく問われます。

  • 国民主権の理念にのっとる。
  • 政府の有するその諸活動を国民に説明する責務(アカウンタビリティ)が全うされるようにする。
  • 公正で民主的な行政の推進に資する。
💡 最重要ポイント:「知る権利」の不在

憲法で学習した「知る権利」という言葉は、情報公開法の条文には明記されていません。
これは制定当時の政治的な議論の結果ですが、試験対策としては「情報公開法の目的に『知る権利』の保障は含まれていない(明記されていない)」という点を押さえておく必要があります。「説明する責務」がキーワードです。

(2) 「行政文書」とは何か?(対象の定義)

情報公開法に基づいて開示請求できるのは、「行政文書」に限られます。では、役所にある紙はすべて行政文書なのでしょうか?

定義(第2条2項)によれば、以下の3つの要件をすべて満たすものが行政文書です。

  1. 作成・取得:行政機関の職員が職務上作成し、または取得したものであること。
  2. 組織的利用:組織的に用いるものとして管理されていること。
  3. 保有:当該行政機関が保有していること。

【具体例:課長のメモ】
A課長が会議中に手帳に書いた「個人的な備忘録メモ」。
これは職務上作成したものですが、あくまで個人限りのものであり、組織として共有・利用しているものではありません。
したがって、「組織的利用」の要件を満たさず、行政文書には該当しません。つまり、開示請求の対象外です。

行政文書から除外されるもの

行政文書の定義を満たしていても、以下のものは対象外となります。

  • 官報、白書、新聞、雑誌、書籍など(不特定多数に販売されているもの)。
  • 特定歴史公文書等(公文書管理法に基づき、国立公文書館等に移管されたもの)。

(3) 開示請求の手続き(誰が、どうやって?)

請求権者:何人も(なんぴとも)

国籍、住所、年齢、個人・法人を問わず、誰でも請求できます。
「外国人だからダメ」「子供だからダメ」ということはありません。

請求理由:不要

開示請求書には、住所・氏名・文書の特定事項を書きますが、「利用目的」を書く必要はありません。
「行政の監視のために必要だから」という崇高な理由でも、「単なる興味本位」でも、等しく請求権があります。

💡 学習のポイント:手数料

開示請求には手数料がかかります(実費の範囲内)。タダではありません。
請求時と、実際に文書を受け取る時(実施時)の2回に分けて納付するのが原則です。

(4) 開示・不開示の決定と「存否応答拒否」

行政機関は、原則として文書を開示しなければなりませんが、情報公開法5条に列挙された「不開示情報」(個人情報、法人等の事業情報、外交上の秘密など)が含まれる場合は、その部分を黒塗りにして開示(部分開示)したり、全部を不開示にしたりします。

特殊な制度:存否応答拒否(グローマー拒否)

請求に対して、「あるか無いか」を答えるだけで、守るべき秘密が漏れてしまう場合があります。

【具体例:警察への請求】
「私、行政太郎の内偵捜査に関する文書を開示せよ」という請求があったとします。

  • 「文書はありません(不開示)」と答える → 「お、俺は捜査されていないな」とバレる。
  • 「文書はありますが、中身は秘密なので見せません(不開示)」と答える → 「俺は捜査されているんだ!」とバレて逃亡される。

このように、存否自体が秘密にあたる場合は、「文書の存否を明らかにしないで」請求を拒否することができます(第8条)。

2. 審査会設置法:不服がある場合の救済システム

もし開示請求が拒否された場合、請求者は行政不服審査法に基づく「審査請求」を行うことができます。
この際、判断の客観性を担保するために重要な役割を果たすのが「情報公開・個人情報保護審査会」です。

(1) 審査会の組織と役割

この審査会は、総務省に設置されています。

  • 委員:15人。両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命(国会同意人事)。
  • 役割:審査庁(不服申し立てを受けた役所)からの諮問に応じて、第三者的な立場で調査審議し、答申を行う。

【諮問義務】
審査請求があった場合、行政庁は原則としてこの審査会に諮問しなければなりません。
(※不適法で却下する場合や、全部開示に変更する場合などは例外です。)

(2) 強力な調査権限(インカメラ審理)

審査会が正しく判断するためには、実際の「黒塗り前の文書」を見る必要があります。そこで強力な権限が与えられています。

  • インカメラ審理(9条1項):審査会は、行政庁に対して「現物の文書」の提示を求めることができます。行政庁はこれを拒めません。
  • ヴォーン・インデックス(9条3項):審査会は、文書の内容を分類・整理した資料の作成・提出を求めることができます。
💡 注意点:請求者は見られない

インカメラ審理で提出された「現物の文書」は、審査委員だけが見ることができます。
審査請求人(国民)が「私にも見せて」と求めても、これを開示させることはできません(見せてしまったら元も子もないからです)。
また、審査会の調査審議の手続きは非公開で行われます。

3. 公文書管理法:文書の「ライフサイクル」を管理する

情報公開法があっても、肝心の文書が作成されていなかったり、勝手に捨てられたりしていては意味がありません。
そこで、文書の作成から廃棄・保存までのプロセス(ライフサイクル)を定めたのが「公文書管理法」です(2009年制定)。

(1) 目的:現在および将来の国民への説明責任

情報公開法との最大の違いは、時間軸です。

  • 情報公開法:現在の国民に対する説明責任。
  • 公文書管理法現在および将来の国民に対する説明責任。歴史的事実の記録として、後世に残すことを重視しています。

(2) 文書管理のルールと内閣総理大臣の権限

文書作成義務(4条)

行政機関の職員は、意思決定に至る過程や実績を検証できるよう、文書を作成しなければなりません。

廃棄時のチェック(8条)

保存期間が満了した文書を廃棄しようとするときは、勝手に捨ててはいけません。
内閣総理大臣に協議し、その同意を得る必要があります。
「歴史的に重要だから捨てずに国立公文書館に移管しなさい」と判断される場合があるからです。

💡 試験の落とし穴:罰則はない

公文書管理法には、罰則規定がありません。
職員が違法に公文書を廃棄しても、この法律による刑罰(懲役や罰金)は科されないのです(公用文書毀棄罪などの刑法犯になる可能性はありますが)。
「違法に廃棄した職員は1年以下の懲役」といった選択肢が出たら×です。

4. 番号法(マイナンバー法):行政の効率化

最後に、行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆる「番号法」です。

(1) 3つの目的

マイナンバー制度導入の目的は、以下の3点です。

  1. 行政運営の効率化:役所間の情報のやり取りをスムーズにする。
  2. 国民の利便性の向上:添付書類の削減など。
  3. 公平・公正な社会の実現:所得を正確に把握し、不正受給を防ぐ。

(2) マイナンバーカード(個人番号カード)の仕組み

交付主体

市町村長が交付します(国ではありません)。

利用範囲の拡大

当初は「社会保障」「税」「災害対策」の3分野が基本でしたが、現在は利用範囲が拡大しています。

  • 法定事務:法律で定められた事務(年金、雇用保険、確定申告など)。
  • 独自利用事務:地方公共団体が条例で定めた事務(例:自治体独自の医療費助成の申請など)。

マイナンバーカードのICチップの空き領域は、条例や定款で定めることにより、図書館カードや印鑑登録証などとして、民間利用も含めて多目的に活用することが可能です。

5. 【実戦演習】本試験レベル問題に挑戦

ここまでの知識を整理するために、本試験形式の問題に挑戦してみましょう。

問1:情報公開法の仕組み
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1. 情報公開法の目的規定には、国民主権の理念にのっとり、国民の知る権利を保障することが明記されている。
2. 開示請求権者は「何人も」と規定されているため、日本国籍を有しない外国人や、法人格を有しない権利能力なき社団も開示請求を行うことができる。
3. 行政文書の定義において、行政機関の職員が職務上作成した文書であっても、決済手続きを終了していない未完成の文書や、個人的な検討段階のメモは、一切行政文書には該当しない。
4. 開示請求を行おうとする者は、開示請求書に、氏名又は名称及び住所又は居所のほか、開示を請求する理由を記載しなければならない。
5. 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合には、当該行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することは認められておらず、文書の存在を認めた上で不開示決定をしなければならない。
正解・解説を見る

正解 2

解説:

1. 妥当でない。情報公開法には「知る権利」という文言は明記されていません。「説明する責務(アカウンタビリティ)」がキーワードです。

2. 妥当である。「何人も」請求できるため、外国人や法人、権利能力なき社団なども請求可能です。

3. 妥当でない。決済手続きの完了の有無にかかわらず、組織的に用いるものとして保有していれば行政文書に該当します。個人的なメモは組織共用性がないため該当しませんが、未完成文書がすべて対象外というわけではありません。

4. 妥当でない。開示請求書に「請求の理由」を記載する必要はありません。

5. 妥当でない。存否を答えるだけで不開示情報を開示するのと同様の結果となる場合は、存否を明らかにしないで拒否することができます(存否応答拒否)。

問2:審査会と公文書管理法
情報公開・個人情報保護審査会および公文書管理法に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
1. 情報公開・個人情報保護審査会は、総務省に置かれ、行政機関等の長からの諮問に応じて、不服申立てについて調査審議する機関である。
2. 審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、不開示決定に係る行政文書の提示を求めることができ、諮問庁はこれを拒んではならない(インカメラ審理)。
3. 審査会がインカメラ審理のために提示させた行政文書については、審査請求人も、審査会に対して当該文書の開示を求めることができる。
4. 公文書管理法は、現在のみならず将来の国民に対する説明責任を全うすることを目的としており、歴史公文書等の保存・利用についても規定している。
5. 行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイルを廃棄しようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない。
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正解 3

解説:

1. 妥当である。設置場所(総務省)や役割に関する正しい記述です。

2. 妥当である。インカメラ審理(9条1項)に関する正しい記述です。

3. 妥当でない。審査会に提示された行政文書については、何人も(審査請求人も含め)開示を求めることはできません(9条1項後段)。見せてしまったら不開示決定の意味がなくなるからです。

4. 妥当である。公文書管理法の目的(1条)に関する正しい記述です。

5. 妥当である。廃棄時の内閣総理大臣への協議・同意義務(8条)に関する正しい記述です。これが公文書管理法の重要なチェック機能です。

問3:番号法(マイナンバー法)
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1. 番号法の目的は、行政運営の効率化を図ることに特化しており、国民の利便性の向上や公平・公正な社会の実現については目的に含まれていない。
2. 個人番号カード(マイナンバーカード)は、都道府県知事が作成し、市町村長を経由して交付される。
3. 個人番号カードは、社会保障・税・災害対策の分野に限らず、条例で定めることにより、地方公共団体の独自の行政事務(独自利用事務)においても利用することができる。
4. 個人番号カードの裏面に記載された個人番号(マイナンバー)は、レンタルDVD店等の民間事業者が本人確認のためにコピーして保管することが推奨されている。
5. 番号法は、個人情報保護法の特例法としての位置づけを持たないため、個人番号を含む個人情報の取り扱いについては、一般の個人情報保護法の規定のみが適用される。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 妥当でない。番号法の目的は「行政運営の効率化」「国民の利便性の向上」「公平・公正な社会の実現」の3つです。

2. 妥当でない。個人番号カードを交付するのは「市町村長」です。

3. 妥当である。いわゆる「独自利用事務」として、条例で定めることで利用範囲を拡大できます。

4. 妥当でない。個人番号(マイナンバー)そのものは、法律で認められた事務以外で収集・保管することは禁止されています。民間事業者が本人確認で使うのはカード表面(顔写真側)であり、裏面の番号をコピー・保管してはいけません。

5. 妥当でない。番号法は、個人情報保護法に対する特例法(より厳しい規制)としての性質を持っています(特定個人情報としての保護)。

6. まとめ:関連法規の学習のコツ

今回解説した3つの法律は、以下のキーワードで整理して記憶しましょう。

  • 情報公開法:行政文書、何人も請求可、理由不要、手数料あり、存否応答拒否、説明責任(知る権利なし)。
  • 審査会設置法:総務省、インカメラ審理、ヴォーン・インデックス、非公開手続。
  • 公文書管理法:現在および将来の国民、廃棄時に総理大臣の同意、罰則なし。

これらは単独で出題されることもあれば、個人情報保護法との比較問題として出題されることもあります。
「隠す法律(個情法)」と「出す法律(情報公開法)」の違いを意識しながら、過去問演習を繰り返してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「行政文書」と「法人文書」の違いは何ですか?
基本的な定義は同じです。「行政文書」は国の行政機関が保有する文書、「法人文書」は独立行政法人等が保有する文書を指します。それぞれ「情報公開法」と「独立行政法人等情報公開法」に基づいて開示請求を行いますが、試験対策としてはほぼ同じルールと考えて差し支えありません。

Q2. インカメラ審理は裁判所が行うのですか?
いいえ。ここで解説したインカメラ審理は、行政不服審査の段階で「情報公開・個人情報保護審査会」が行うものです。ただし、裁判(取消訴訟)になった場合も、裁判所が文書を取り寄せて密室で見る手続き(インカメラ審理)が行政事件訴訟法で認められています。制度としては似ていますが、行う主体が異なります。

Q3. 公文書を捨てても罰則がないなら、捨て放題ではありませんか?
公文書管理法上の直接的な罰則はありませんが、刑法の「公用文書等毀棄罪」に問われる可能性はあります。また、懲戒処分の対象にもなります。法律に罰則規定がないからといって、適当に扱ってよいわけではありませんが、試験対策としては「公文書管理法自体には罰則がない」という点が重要です。

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