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講義3:【民法】成年後見・保佐・補助の違いを完全攻略!制限行為能力者の催告権も解説

前回は未成年者の法律行為について学びましたが、民法には判断能力が不十分な大人を保護するための「成年後見制度」があります。

「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の3類型は、それぞれ「自分で何ができて、何ができないか(取消しの対象か)」が異なります。また、保護者(後見人など)に与えられる権限(同意権・代理権)の範囲も違うため、ここを正確に区別することが試験対策のカギとなります。

今回は、3類型の比較表と、取引の相手方を守るための「催告権」のルールを中心に解説します。

1. 3つの制限行為能力者(比較まとめ)

まず、3つの類型の定義と、保護者の権限の違いを一覧表で整理しましょう。ここが全ての基礎です。

類型 判断能力の程度 保護者の権限
(原則)
本人が単独でできる行為
成年被後見人 事理弁識能力を
欠く常況
代理権・取消権
(同意権はない)
日用品の購入など日常生活に関する行為のみ
被保佐人 事理弁識能力が
著しく不十分
同意権・取消権
(代理権は原則なし)
重要な財産行為(13条1項)以外の行為
被補助人 事理弁識能力が
不十分
(審判で決める)
同意権・代理権のどちらか、または両方
審判で同意権の対象とされた行為以外の行為
💡 保護者の「同意権」の有無

成年後見人には「同意権」がありません。
なぜなら、成年被後見人は判断能力を欠いているため、たとえ後見人が同意を与えても、その通りに行動できる保証がないからです。したがって、成年被後見人の行為は「同意があっても取り消せる」のが原則です。

2. 各類型の詳細

(1) 成年被後見人

精神上の障害により事理を弁識する能力を「欠く常況」にある者です。家庭裁判所の審判を受けて初めて成年被後見人となります。

  • 原則:行った法律行為は取り消すことができます。
  • 例外:日用品の購入など「日常生活に関する行為」は取り消せません(確定的に有効)。

(2) 被保佐人

能力が「著しく不十分」な者です。

  • 原則:単独で契約できます。
  • 例外:民法13条1項に列挙された「重要な財産行為」(借金、不動産の売買、訴訟行為など)をするには、保佐人の同意が必要です。同意なく行った場合は取り消せます。

※家庭裁判所の審判により、保佐人に「代理権」を与えることもできます(本人の同意が必要)。

(3) 被補助人

能力が「不十分」な者です。軽度の認知症の方などが想定されます。

  • 特徴:補助開始の審判には、必ず本人の同意が必要です(自己決定権の尊重)。
  • 権限:補助人には当然には何の権限もありません。「特定の行為」について、同意権または代理権を与える審判を個別に受けます。

3. 制限行為能力者の相手方の保護(催告権)

制限行為能力者と契約した相手方は、後で取り消されるかもしれない不安定な立場に置かれます。そこで、相手方から「はっきりしてください(追認しますか?)」と返事を求める権利(催告権)が認められています。

試験では、「誰に対して催告したか」によって、返事がない場合の効果(追認みなし or 取消しみなし)が異なる点が頻出です。

(1) 催告の相手と効果のまとめ

催告の相手方 状況 確答がない場合の効果
能力者となった本人 未成年者が成人した場合など
(単独で追認できる)
追認したものとみなす
法定代理人・保佐人・補助人 保護者に対して催告
(単独で追認できる)
追認したものとみなす
被保佐人・被補助人 本人に対して催告
(単独では追認できない)
取り消したものとみなす
💡 覚え方のコツ

「単独で追認できる人」(能力者になった本人や保護者)が無視したら「追認(有効)」
「単独で追認できない人」(被保佐人・被補助人)が無視したら「取消し(無効)」
※なお、未成年者や成年被後見人は「受領能力」がないため、彼らに直接催告しても無効です。

(2) 詐術(さじゅつ)による取消権の排除

制限行為能力者が、相手に対して「自分は能力者だ(成人だ)」と信じさせるために詐術を用いた場合、その行為は取り消せなくなります(21条)。

判例(最判昭44.2.13):単に「未成年であることを黙っていた」だけでは詐術に当たりません。他の言動と相まって相手を信じ込ませた場合に詐術となります。


4. 実戦問題にチャレンジ

問1:制限行為能力者の種類と権限
制限行為能力者制度に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 成年後見人は、成年被後見人の財産管理について包括的な代理権を有するほか、成年被後見人が行った不利益な法律行為について同意を与える権限を有する。
2. 被保佐人が不動産を売却するには保佐人の同意が必要であるが、日用品を購入する場合であっても、保佐人の同意を得なければ取り消すことができる。
3. 家庭裁判所は、本人、配偶者等の請求により補助開始の審判をすることができるが、本人の同意がない場合には、補助開始の審判をすることはできない。
4. 被補助人が補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が同意をしないときは、被補助人はその行為を単独で行うことができ、取り消されることもない。
5. 成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った不動産の売買契約は、確定的に有効なものとなり、後から取り消すことはできない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。成年後見人に「同意権」はありません。

2. 誤り。日用品の購入は、被保佐人であっても(成年被後見人であっても)単独で確定的に有効に行うことができ、取り消せません。

3. 正しい。補助開始の審判(および代理権・同意権付与の審判)には、本人以外の請求の場合、本人の同意が必要です(15条2項)。

4. 誤り。同意が必要な行為について同意が得られない場合、家庭裁判所の「許可」を得れば単独で行えますが、許可なく行えば取り消すことができます。

5. 誤り。成年後見人には同意権がないため、たとえ同意があっても、成年被後見人の行為は取り消すことができます。

問2:相手方の催告権
制限行為能力者の相手方の催告権に関する記述として、妥当なものはどれか。

1. 未成年者と契約した相手方が、未成年者本人に対して1ヶ月以上の期間を定めて追認するかどうか催告したが、その期間内に確答がなかった場合、その行為は追認されたものとみなされる。
2. 被保佐人と契約した相手方が、被保佐人本人に対して1ヶ月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るよう催告したが、その期間内に確答がなかった場合、その行為は追認されたものとみなされる。
3. 成年被後見人と契約した相手方が、成年後見人に対して1ヶ月以上の期間を定めて追認するかどうか催告したが、その期間内に確答がなかった場合、その行為は追認されたものとみなされる。
4. 制限行為能力者が相手方に対して、能力者であると信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができないが、単に自分が制限行為能力者であることを告げなかった場合も常に詐術に該当する。
5. 相手方が催告を行う場合、その期間は1ヶ月以上でなければならないが、期間内に確答を発すれば足りる(発信主義)か、到達しなければならないかについては、民法の一般原則に従い到達主義が適用される。
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正解 3

解説:

1. 誤り。未成年者には受領能力がないため、未成年者本人への催告は無効です(能力者になった後なら有効)。

2. 誤り。被保佐人は単独で追認できないため、無視した場合は「取り消したもの」とみなされます。

3. 正しい。成年後見人は単独で追認できるため、無視した場合は「追認したもの」とみなされます。

4. 誤り。単なる黙秘は原則として詐術に当たりません。

5. 誤り。確答は期間内に「発する」ことで足ります(発信主義の例外)。20条各項の「確答を発しないとき」という文言から明らかです。

問3:審判相互の関係
後見・保佐・補助の審判に関する記述として、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 被保佐人について、事理弁識能力がさらに低下し、後見開始の審判をする必要がある場合、家庭裁判所は職権で保佐開始の審判を取り消した上で、後見開始の審判をしなければならない。
2. 本人が被補助人である場合において、後見開始の審判をするには、本人または代理人等の請求により、先に補助開始の審判を取り消さなければならない。
3. 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始の審判を取り消さなければならない。
4. 同一の本人について、後見開始の審判と保佐開始の審判が併存することは可能であり、その場合、成年後見人が包括的な代理権を行使する。
5. 任意後見契約が登記されている者については、家庭裁判所は、いかなる場合であっても法定後見(後見・保佐・補助)の開始の審判をすることはできない。
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正解 3

解説:

1. 誤り。審判の請求は必要であり、職権ではできません。また、取消しと開始はセットで行われます。

2. 誤り。以前の審判の取消しは、新たな審判(後見開始)をする際に合わせて行われます(19条)。別途取消しを請求する必要はありません。

3. 正しい。重複して審判を受けることはできないため、より重い審判をする際には、軽い方の審判を取り消さなければなりません。

4. 誤り。重複(併存)はできません。

5. 誤り。本人の利益のために特に必要があると認めるときは、法定後見を開始することができます(任意後見契約法)。

5. まとめ

今回は、成年後見制度を中心に解説しました。

  • 成年後見人:代理権あり、同意権なし。日用品以外は取消し可。
  • 被保佐人:重要な財産行為(13条)には同意が必要。
  • 被補助人:本人の同意が開始要件。権限は個別に設定。
  • 催告権:単独で追認できる人が無視=追認。できない人が無視=取消し。

特に「確答がない場合の効果(追認みなしor取消しみなし)」は、試験直前まで混同しやすいポイントです。「自分で決められる人(保護者など)が黙っていたらOK(追認)」、「自分で決められない人(被保佐人)が黙っていたら現状維持(契約解消=取消し)」とイメージで覚えておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 成年後見人に同意権がないのはなぜですか?
A. 成年被後見人は判断能力を欠いているため、たとえ後見人が「いいよ(同意)」と言っても、その通りに契約できる能力が本人にないからです。そのため、本人が行った行為は同意があっても取り消せます。
Q. 被保佐人の「重要な財産行為」は暗記すべきですか?
A. 13条1項の項目(借金、不動産取引、相続の承認放棄など)は、大まかに把握しておく必要があります。特に「日用品の購入」は同意不要である点との対比で出題されます。
Q. 制限行為能力者の相手方は、契約を取り消せますか?
A. 相手方から契約を取り消すことはできません。取消権は制限行為能力者側(本人と保護者)の権利です。相手方ができるのは「催告(返事を迫る)」と「取消権が行使されるまでの間の撤回(契約をやめる)」です。

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