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講義14:【民法物権】取消し・解除後の第三者|登記との関係を総まとめ

民法の物権変動で最も受験生を悩ませるのが、「第三者との関係で、いつ登記が必要になるか?」という問題です。

「詐欺取消し前の第三者には登記はいらない?」「解除後の第三者は登記が必要?」
これらの結論は、単なる暗記ではなく、「対抗関係(二重譲渡)」になるかどうかというロジックで理解することが重要です。

今回は、取消し・解除・取得時効の3つの場面における登記の要否(対抗問題)について、時系列で整理して解説します。

1. 取消しと登記(詐欺取消しを中心に)

契約が取り消されると、遡って無効となり、互いに原状回復義務を負います。しかし、その物が既に第三者に転売されていた場合はどうなるでしょうか。

(1) 取消し「前」の第三者

AがBに騙されて土地を売り、BがCに転売した後、Aが詐欺取消しをしたケース。

  • ルール:詐欺取消しは「善意無過失の第三者」に対抗できない(96条3項)。
  • 登記の要否:Cが保護されるために登記は不要です。
💡 制限行為能力・強迫の場合

制限行為能力や強迫を理由とする取消しは、第三者保護規定がありません(絶対的取消し)。したがって、第三者Cが善意無過失で登記を備えていても、AはCに対して返還請求ができます。

(2) 取消し「後」の第三者(復帰的物権変動)

AがBとの契約を取り消したが、登記を戻さない間に、BがCに転売したケース。

  • ロジック:取消しにより所有権は「B→A」に戻りますが、その後「B→C」へ売却されたため、Bを起点としてAとCに二重譲渡されたのと同じ状態(対抗関係)になります。
  • 結論登記を先に備えた方が勝ちます(177条)。Cの善意・悪意は問いません(背信的悪意者は除く)。

2. 解除と登記

AがBに土地を売ったが、Bが代金を払わないので解除したケースです。

(1) 解除「前」の第三者(545条1項ただし書)

Aが解除する前に、BがCに転売していた場合。

  • ルール:解除は「第三者の権利を害することはできない」。
  • 登記の要否:判例は、Cが保護されるためには「登記(対抗要件)」が必要としています(最判昭33.6.14)。
💡 詐欺との違いに注意

詐欺(取消し前)の第三者は登記不要ですが、解除(解除前)の第三者は登記が必要です。解除権者(被害者A)の保護とのバランスをとるためです。

(2) 解除「後」の第三者

Aが解除したが登記を戻さない間に、BがCに転売したケース。

  • 結論:取消し後と同様、対抗関係(登記が必要)となります(最判昭35.11.29)。
  • 理由:Bを起点とした二重譲渡と同様の関係になるため。

3. 取得時効と登記

Aの土地をBが時効取得した場合の、元の所有者Aや第三者Cとの関係です。

(1) 時効完成「前」の第三者

Bの占有中に、AがCに土地を売却し、その後Bの時効が完成した場合。

  • 結論:Bは登記なくしてCに対抗できます。
  • 理由:時効完成時の所有者はCです。BはCの土地を時効取得した「当事者」の関係になるため、登記は不要です。

(2) 時効完成「後」の第三者

Bの時効完成後に、AがCに土地を売却した場合。

  • 結論対抗関係(登記が必要)となります(最判昭33.8.28)。
  • 理由:Aを起点として、「Bへの時効による移転」と「Cへの売買による移転」という二重譲渡類似の関係になるため。

(3) 再度の時効取得(応用論点)

時効完成後にCが登場して登記を備えてしまい、Bが負けたとしても、そこからさらに時効期間(10年や20年)占有を継続すれば、Cから時効取得することができます(再度の時効取得)。この場合、Bは登記なくしてCに対抗できます。


4. 実戦問題にチャレンジ

問1:取消し・解除と登記
不動産物権変動と登記に関する判例の趣旨に照らして、第三者が保護されるために登記が必要とされるケースはどれか。全て選べ。

ア. AがBに土地を売却したが、Aが強迫を理由に取り消す前に、Bが善意無過失のCに転売した場合のC。
イ. AがBに土地を売却したが、Aが詐欺を理由に取り消した後に、Bが善意のCに転売した場合のC。
ウ. AがBに土地を売却したが、Bの債務不履行を理由にAが解除する前に、Bが善意のCに転売した場合のC。
エ. AがBに土地を売却したが、Bの債務不履行を理由にAが解除した後に、Bが善意のCに転売した場合のC。
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正解 イ、ウ、エ

解説:

ア. 強迫取消しは善意無過失の第三者にも対抗できるため、Cは登記があっても保護されません(登記の有無に関わらずAが勝つ)。

イ. 必要。取消し「後」の第三者は対抗関係となるため、登記が必要です。

ウ. 必要。解除「前」の第三者が保護されるには、登記が必要です(545条1項ただし書の判例解釈)。

エ. 必要。解除「後」の第三者は対抗関係となるため、登記が必要です。

問2:取得時効と登記
A所有の甲土地をBが占有し、取得時効が完成した場合に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当なものはどれか。

1. Bの時効完成前にAから甲土地を買い受けたCに対して、Bは登記がなければ時効取得を対抗することができない。
2. Bの時効完成後にAから甲土地を買い受けて登記を備えたDに対して、Bは登記がなければ時効取得を対抗することができない。
3. Bの時効完成後にAから甲土地を買い受けたEが背信的悪意者である場合であっても、Eが先に登記を備えれば、BはEに対抗できない。
4. Bの時効完成後にAがFに抵当権を設定し登記された場合、Bはその後に時効取得を援用しても、Fの抵当権の負担付きの所有権を取得することになる。
5. Bの時効完成後にAがGに譲渡し登記を移転したが、その後もBが占有を継続し、Gへの譲渡時からさらに取得時効期間が経過した場合であっても、BはGに対して登記なくして時効取得を主張することはできない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。時効完成「前」の第三者Cは当事者と同視されるため、登記不要です。

2. 正しい。時効完成「後」の第三者Dとは対抗関係になり、先に登記したDが勝ちます。

3. 誤り。背信的悪意者に対しては、登記なくして対抗できます。

4. 誤り。時効の遡及効により、起算日以降に設定された抵当権は消滅します(ただし、Bが抵当権の存在を容認していた等の特段の事情がある場合は別ですが、原則は消滅します)。

5. 誤り。再度の時効取得が成立すれば、その時点の所有者Gは「当事者」となるため、登記なくして対抗できます。

問3:総まとめ(対抗関係)
不動産物権変動の対抗関係に関する次の記述のうち、判例に照らして「対抗関係に立つ(登記の先後で決する)」ものはどれか。

1. AがBに土地を売却し、その後Aが死亡してCが単独相続した場合の、BとC。
2. A所有の土地をBが時効取得し、その時効完成前にAから土地を買い受けたCとB。
3. AがBに土地を売却し、Aが詐欺を理由に取り消した後、AがさらにDに売却した場合の、BとD。
4. AがBに土地を売却したが、Bの代金不払いを理由にAが解除する前に、Bから土地を買い受けたCとA。
5. AがBに土地を売却したが、Aが錯誤を理由に取り消す前に、Bから土地を買い受けた善意無過失のCとA。
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正解 3

解説:

1. 立たない。相続人は当事者(前主)の地位を承継するため、第三者ではありません。

2. 立たない。時効完成前の第三者は当事者と同視され、登記不要で対抗できます。

3. 立つ。取消し「後」の第三者Dと、復帰したA(実質的にはBから権利が戻るA)は対抗関係です。

4. 立たない(※)。解除「前」の第三者Cは、登記を備えれば保護される(545条1項但書)という関係であり、純粋な177条の対抗関係(早い者勝ち)とは少し性質が異なります(Cが登記を持っていればAは解除の効果を主張できない)。

5. 立たない。95条4項によりAはCに対抗できない(Cが優先する)関係であり、登記の先後ではありません。

5. まとめ

今回は、取消し・解除・時効と登記の関係について解説しました。

  • 取消し・解除「後」:対抗関係(登記必要)。
  • 時効完成「後」:対抗関係(登記必要)。
  • 解除「前」:第三者の保護要件として登記必要。
  • 詐欺取消し「前」・時効完成「前」:登記不要(第三者保護規定や当事者関係で処理)。

「〇〇後なら対抗関係」という鉄則を覚えておくだけで、多くの問題に対応できます。図を描いて時系列を確認する習慣をつけましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ「後」の第三者は対抗関係になるのですか?
A. 取消しや解除、時効完成によって、権利はいったん元の持ち主(A)に戻ろうとします。しかし、そのタイミングでBがCに売ってしまうと、Bを起点として「Aに戻る」のと「Cに行く」のとが二重譲渡のような形になるからです。どちらもBから権利を取得しようとする立場なので、公平に登記の先後で決めます。
Q. 解除前の第三者に登記が必要なのはなぜですか?
A. 解除権者(売主)は、代金が支払われないという被害者です。一方で第三者も取引の安全のために保護されるべきです。この両者のバランスをとるため、単に善意なだけでは足りず、「登記」という確実な要件を備えた場合のみ第三者を勝たせることにしました。
Q. 時効完成後の第三者が背信的悪意者だったらどうなりますか?
A. 背信的悪意者は177条の「第三者」に含まれないため、登記がなくても時効取得者は対抗できます(勝てます)。

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