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講義16:【民法物権】所有権と相隣関係|枝の切除や通行権のルールを徹底解説

「隣の家の木の枝が伸びてきた」「道路に出るために他人の土地を通らなければならない」といったご近所トラブルは、民法の「相隣関係(そうりんかんけい)」で解決されます。

特に、2023年の民法改正により「隣地の枝を自分で切ることができる」ようになった点は、試験でも狙われやすい最新トピックです。

また、建物が増築された場合の所有権(付合)や、誰のものかわからない物を拾った場合(遺失物拾得)などの「所有権の取得」に関するルールも、記述式で問われる可能性があります。

今回は、所有権の取得原因と、隣地との調整ルール(相隣関係)について、改正点を踏まえて解説します。

1. 所有権の取得(原始取得)

所有権は、売買や相続(承継取得)以外にも、一定の事実によって新たに発生する(原始取得)ことがあります。

(1) 無主物先占・遺失物・埋蔵物

対象 取得要件 帰属先
所有者のない動産
(野生動物など)
所有の意思をもって占有 占有者が取得(早い者勝ち)
所有者のない不動産 (なし) 国庫に帰属(勝手に占拠してもダメ)
遺失物(落とし物) 公告後3ヶ月以内に所有者が判明しない 拾得者が取得
埋蔵物 公告後6ヶ月以内に所有者が判明しない 発見者が取得
※他人の土地なら発見者と所有者で折半

(2) 付合(ふごう)

別々の物がくっついて一つになった場合、所有権はどうなるでしょうか?

① 不動産の付合(242条)

不動産に動産(エアコン、エレベーター、増築部分など)がくっついた場合、原則として「不動産の所有者」が動産の所有権も取得します。

例外:権原(賃借権など)があって附属させた場合、附属させた者に所有権が留保されます。
※ただし、増築部分が建物と一体化して独立性がない場合は、賃借人が建てても大家さんのものになります(最判昭38.5.31)。

② 動産の付合(243条)

動産同士がくっついた場合、「主たる動産の所有者」が合成物の所有権を取得します。主従の区別がつかないときは、価格の割合で共有となります。

💡 加工(246条)

他人の材料で工作した場合、原則は「材料の所有者」のものですが、工作によって価格が著しく増加したときは「加工者」のものになります(例:他人のキャンバスに名画を描いた場合)。

2. 相隣関係(隣地とのルール)

お互いが気持ちよく暮らすために、所有権を少し制限して協力し合うルールです。

(1) 隣地使用権(209条)

境界付近での工事や測量のために、必要な範囲で「隣地を使わせてくれ」と請求できます。
※改正により、「承諾」がなくても(拒まれても)権利として使用できるようになりましたが、「住家(家の中)」に入るには居住者の承諾が必須です。

(2) 囲繞地(いにょうち)通行権(210条〜)

公道に出られない土地(袋地)の所有者は、公道に出るために、囲んでいる土地(囲繞地)を通行することができます。

  • 原則:通行のために最も損害が少ない場所・方法を選ぶ。償金(通行料)を支払う必要がある。
  • 例外(無償通行権):土地の分割や譲渡によって袋地が生じた場合、その原因となった土地(残余地)のみを通行でき、この場合は償金を払わなくてよい

(3) 竹木の枝・根の切除(233条)【重要改正】

隣の家から植物が越境してきた場合のルールです。「枝」と「根」で扱いが異なります。

対象 原則 例外(自分で切れる場合)
自分で切り取ることができる (原則通り)
所有者に「切ってください」と頼む
(勝手に切れない)
以下のいずれかの場合、自分で切れる
1. 催告しても相当期間内に切らないとき
2. 所有者が不明・所在不明のとき
3. 急迫の事情があるとき
💡 改正のポイント

以前は「枝」は絶対に自分で切れませんでしたが、所有者が対応してくれない場合や空き家で所有者不明の場合に、自分で切除できるようになりました。記述式でも狙われやすいポイントです。

(4) 境界線付近の建築制限(234条)

建物を建てる時は、境界線から50cm以上離さなければなりません。
違反して建てようとしている人には、中止や変更を請求できます。ただし、建築着手から1年経過または完成後は、損害賠償請求しかできません。

💡 目隠しの設置(235条)

境界線から1m未満の距離で、隣を覗ける窓やベランダを設ける場合は、目隠しを付けなければなりません。


3. 実戦問題にチャレンジ

問1:所有権の取得(付合など)
所有権の取得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らして妥当なものはどれか。

1. 所有者のない不動産を、所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有した者は、時効によってその所有権を取得するが、占有開始時に無主物であった場合は、直ちに所有権を取得する。
2. 賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に増築を行った場合、増築部分が建物と一体化して独立性を有しないときであっても、増築部分は賃借人の所有に属する。
3. Aが所有する動産にBが工作を加えて新たな物を作成した場合、加工によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときであっても、加工物の所有権は材料所有者Aに帰属する。
4. 土地の賃借人Aが権原に基づいて植栽した樹木は、土地に付合せずAの所有となるが、権原のないBが勝手に植栽した樹木は、土地所有者の所有となる。
5. 埋蔵物が発見された場合、公告後6ヶ月以内に所有者が判明しなかったときは、発見者が単独で所有権を取得し、発見場所の土地所有者には何らの権利も発生しない。
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正解 4

解説:

1. 誤り。無主の「不動産」は国庫に帰属するため(239条2項)、無主物先占の対象にはなりません(時効取得は可能ですが、「直ちに」ではありません)。

2. 誤り。独立性がない(構成部分となった)場合は、不動産の付合(242条)により、建物の所有者(賃貸人)のものになります。

3. 誤り。加工価値が材料費を「著しく超える」ときは、加工者Bが所有権を取得します(246条1項ただし書)。

4. 正しい。権原(賃借権)がある場合は付合せず(独立した物としてA所有)、権原がない場合は土地に付合して土地所有者のものになります。

5. 誤り。他人の土地から発見された場合、発見者と土地所有者が「等しい割合で共有」します(241条)。

問2:相隣関係(通行権など)
相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定に照らして誤っているものはどれか。

1. 甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じない場合、甲土地の所有者は、公道に至るために乙土地を通行することができるが、乙土地の損害に対して償金を支払わなければならない。
2. 共有地であった一筆の土地が分割されて袋地が生じた場合、その袋地の所有者は、他の分割者の所有地のみを通行することができ、この場合は償金を支払う必要はない。
3. 土地の所有者は、境界またはその付近において建物を築造または修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができるが、隣人の承諾がなければ、隣家の庭に立ち入ることはできない。
4. 土地の所有者は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、自らその根を切り取ることができる。
5. 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないが、これに反して建築しようとする者がいる場合、隣地所有者は建築の中止または変更を請求することができる。
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正解 3

解説:

1. 正しい。囲繞地通行権(有償)の原則です。

2. 正しい。分割による袋地の場合は、無償通行権が認められます(213条)。

3. 誤り。改正民法により、必要な範囲で隣地を「使用できる」権利となりました。承諾を求めても得られない場合でも権利行使(使用)は可能です(ただし住家への立ち入りは承諾必須)。記述の「庭」であれば、承諾がなくても要件を満たせば使用できます。

4. 正しい。根は自分で切れます(233条4項)。

5. 正しい。50cm規定違反に対する措置です(234条)。

問3:竹木の枝の切除(改正法)
隣地から境界を越えて伸びてきた竹木の枝の切除に関する記述として、民法の規定に照らして正しいものはどれか。

1. 隣地の竹木の枝が境界線を越えている場合、土地所有者は、竹木の所有者に枝を切除させることはできず、常に自ら枝を切り取ることができる。
2. 土地所有者は、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときは、自らその枝を切り取ることができる。
3. 竹木の所有者が行方不明で所在を知ることができない場合であっても、土地所有者が自ら枝を切り取るには、裁判所の許可を得る必要がある。
4. 急迫の事情がある場合であっても、土地所有者が自ら枝を切り取ることは認められず、竹木の所有者またはその代理人に切除を求めなければならない。
5. 越境した枝を土地所有者が自ら切り取った場合、その費用は常に土地所有者が負担しなければならない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。原則は「切除させる(請求する)」であり、自ら切れるのは例外です。

2. 正しい。催告しても切らない場合、自ら切ることができます(233条3項1号)。

3. 誤り。所有者不明の場合は、裁判所の許可なく自ら切ることができます(同項2号)。

4. 誤り。急迫の事情があれば、催告なしで自ら切ることができます(同項3号)。

5. 誤り。本来切除義務を負うのは竹木の所有者なので、費用は竹木の所有者に請求できると解されます(事務管理や不法行為等の理による)。

4. まとめ

今回は、所有権の取得と相隣関係について解説しました。

  • 付合:不動産にくっついたら不動産所有者のもの。権原があれば別。
  • 枝の切除:原則は請求、例外(催告後など)は自分で切れる(改正点)。
  • 通行権:原則は有償、分割・譲渡による袋地は無償(残余地のみ)。

特に「枝の切除」の改正点は、実務でも話題になりやすい重要論点です。「どんな時に自分で切れるか?」の3要件(催告・不明・急迫)をしっかり暗記しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 根は勝手に切れるのに、なぜ枝は原則ダメなのですか?
A. 根は地面の中で邪魔になりやすく、切っても木が枯れにくい一方、枝は景観や日当たりに関わり、素人が切ると木を傷める可能性があるため、所有者に切らせるのを原則としています。ただし、所有者が対応しない等の場合は、改正により自分で切れるようになりました。
Q. 無主の不動産が国庫に帰属するのはなぜですか?
A. 不動産(土地)は有限で重要な資源であり、管理がおろそかになると国土保全上の問題が生じるため、所有者がいない土地はすべて国のもの(所有権者=国)と定めています。早い者勝ち(先占)は認められません。
Q. 囲繞地通行権で「通行料」を払わなかったら通れなくなりますか?
A. いいえ。通行権は法律上当然に発生する権利なので、償金(通行料)を滞納しても通行権自体は消滅しません(債務不履行として金銭請求されるだけです)。

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