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講義39:【民法債権】消費貸借と使用貸借を完全攻略!書面による特則も

「友達に1万円貸した」「親から車をタダで借りている」
私たちの日常には「貸し借り」があふれています。民法では、この「貸し借り」をその性質に応じて「消費貸借(しょうひたいしゃく)」「使用貸借(しようたいしゃく)」、そして「賃貸借(ちんたいしゃく)」の3つに分類しています。

行政書士試験において、消費貸借と使用貸借は、賃貸借と比較する形で頻繁に出題されます。
特に、2020年の民法大改正により、消費貸借に「書面でする消費貸借(諾成契約)」という新しいルールが追加されました。また、使用貸借についても「借主が死亡したらどうなるか?」「通常の必要費は誰が負担するのか?」といった細かいルールが明文化されています。

「お金を借りる約束をしただけでは契約は成立しないの?」
「タダで借りた家の雨漏り修理代は、大家さんに請求できる?」

今回の講義では、消費貸借と使用貸借の基本構造から、改正民法の重要ポイント、そして賃貸借との決定的な違いまで、Aさん・Bさんが登場する具体例を交えて徹底的に解説します。

💡 この記事で学べること

  • 原則の「要物契約」と例外の「書面でする消費貸借(諾成契約)」の違い
  • 書面でする消費貸借における借主の解除権と破産による失効
  • 無利息と利息付きで異なる「貸主の引渡義務(契約不適合責任)」
  • 使用貸借の「通常の必要費」はなぜ借主負担なのか?
  • 「借主の死亡」で使用貸借が終了する理由(賃貸借との違い)
  • 本試験レベルの多肢選択式問題による実戦演習

1. 消費貸借契約(お金や物の貸し借り)

消費貸借とは、借りた物を「消費」してしまい、後でそれと「同じ種類・品質・数量の物」を返す契約です。
代表例は「お金の貸し借り(金銭消費貸借)」ですが、お米やガソリンなど、代替可能な物(種類物)であれば何でも対象になります。

(1) 原則:要物契約としての消費貸借(587条)

AさんがBさんに「明日100万円貸してあげるよ」と約束し、Bさんが「ありがとう、借りるよ」と合意しました。この時点で契約は成立するでしょうか?

結論:成立しません。
消費貸借契約は、当事者の合意だけでなく、「実際に金銭その他の物を受け取ること(引渡し)」によって初めて効力を生じる「要物契約(ようぶつけいやく)」が原則です。

【理由】
お金の貸し借りは、貸主にとってリスクが大きく、借主にとっても後で利息を含めて返すという重い負担を伴います。口約束だけで簡単に成立させてしまうとトラブルの元になるため、「実際に物を受け渡す」という事実をもって契約を成立させる慎重な仕組みにしているのです。

  • 性質:要物・片務・無償(特約がなければ無利息)

(2) 例外:書面でする消費貸借(587条の2)〜改正の目玉〜

しかし、現代のビジネスでは「来月1,000万円融資します」という銀行との契約が、お金が振り込まれるまで成立しないのでは、企業は安心して事業計画を立てられません。

そこで改正民法は、「書面(または電磁的記録)で行う消費貸借」については、お金を受け取る前であっても、「合意のみ」で成立する(諾成契約になる)という特則を設けました。

① 借主の解除権(587条の2第2項)

書面で契約が成立すると、借主Bさんは「お金を渡せ」と請求できる権利を持ちます。しかし、Bさんが「やっぱり借りるのやめた」と思った場合はどうなるでしょうか?

借主は、貸主から金銭等を受け取るまでであれば、いつでも契約を解除することができます
(※ただし、貸主が契約に向けて準備をしていて損害を受けた場合は、借主はその損害を賠償しなければなりません。)

② 破産手続開始による失効(587条の2第3項)

書面で契約した後、お金を渡す前に、借主Bさんが破産してしまったらどうなるでしょうか?
貸主Aさんからすれば、破産した人に1,000万円を貸しても返ってくる見込みはありません。そこで、金銭等を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、契約はその効力を失うとされています。

(3) 利息と貸主の引渡義務(契約不適合責任)

消費貸借は、民法上は「無利息(無償)」が原則です。利息を取るには特約が必要です。

貸主が引き渡した物に欠陥(契約不適合)があった場合の責任は、利息の有無によって異なります。

種類 貸主の引渡義務(590条) 理由
無利息の場合
(無償契約)
目的物を「特定した時の状態(現状)」で引き渡せばよい。
(※欠陥があっても責任を負わないのが原則)
タダで貸してあげるのだから、完璧な品物を用意する義務まで負わせるのは酷だから(贈与と同じ)。
利息付きの場合
(有償契約)
契約の内容に適合した完全な物を引き渡す義務を負う。
(※売買の規定が準用され、追完請求や損害賠償請求の対象となる
利息という対価をもらって商売として貸す以上、完全な品物を提供する責任があるから。
💡 借主の価額返還権(590条2項)

利息の有無にかかわらず、借りた物に欠陥があった場合、借主は「同じ物を買って返す」のが大変なら、「その欠陥品の価値に相当する金額」を返還すればよいとされています。

(4) 返還の時期と準消費貸借

① 返還の時期(591条)

「いつ返すか」を決めていなかった場合、貸主Aさんは「今すぐ返せ!」と言えるでしょうか?

言えません。貸主は、「相当の期間を定めて返還の催告」をしなければなりません。借主がお金を工面する時間を与えなければならないからです。
一方、借主Bさんは、いつでも(利息付きならそれまでの利息を払って)返すことができます。

② 準消費貸借(588条)

AさんがBさんに車を売り、Bさんが代金100万円を払う義務を負っているとします。
Bさんが「今お金がないから、この100万円を『借金』ということに切り替えて、毎月10万円ずつ利息を付けて返させてくれないか?」と提案し、Aさんが合意しました。

このように、既存の債務(売買代金など)を、当事者の合意によって「消費貸借の目的」に切り替えることを「準消費貸借」といいます。実際にお金を動かさなくても、消費貸借契約が成立したものとみなされます。

2. 使用貸借契約(タダで物を借りる)

使用貸借とは、当事者の一方(貸主)が相手方(借主)に物を引き渡し、借主がそれを「無償(タダ)」で使用・収益し、後でそのまま返す契約です(593条)。

(例)親の土地にタダで家を建てる、友人から車をタダで借りるなど。

(1) 使用貸借の成立と解除

改正民法により、使用貸借は「諾成契約(合意のみで成立)」となりました(旧法では要物契約でした)。

  • 性質:諾成・片務・無償

【書面によらない使用貸借の解除】
タダで貸す約束は軽率に行われがちです。そこで、「書面によらない使用貸借」については、借主が借用物を「受け取るまで」は、貸主はいつでも契約を解除することができます(593条の2)。
※書面で約束した場合は、受け取る前でも解除できません。

(2) 借主の義務と費用の負担

① 使用・収益のルール(594条)

借主は、契約や目的物の性質に従った用法で使わなければなりません。
また、貸主の「承諾」がなければ、第三者に貸す(転貸する)ことはできません。タダで貸すのは「あなただから」という個人的な信頼関係があるからです。

② 費用の負担(595条)〜超重要〜

借りている物にかかる費用は誰が払うのでしょうか? ここは賃貸借との比較で頻出です。

費用の種類 具体例 使用貸借(タダ借り) 賃貸借(有料借り)
通常の必要費 車のガソリン代、オイル交換代、家の小修繕費など。 借主が負担する 貸主が負担する
(借主が払ったら請求可)
特別の必要費・有益費 台風で壊れた屋根の大修理、価値を高めるリフォームなど。 貸主が負担する
(借主が払ったら請求可)
貸主が負担する
(借主が払ったら請求可)
💡 理由付け

なぜ使用貸借では「通常の必要費」を借主が負担するのでしょうか?
タダで使わせてもらって利益を得ているのだから、日常的なメンテナンス費用くらいは自分で払いなさい、ということです(公平の原則)。

(3) 使用貸借の終了事由(597条)

使用貸借は、以下の事由で終了します。

  1. 期間の満了(「1年間貸す」と決めていた場合)
  2. 目的の達成(「大学を卒業するまで貸す」と決めていて、卒業した場合)
  3. 借主の死亡(ここが最重要!)
💡 借主の死亡による終了

使用貸借は、貸主と借主の「特別な人間関係(情義)」に基づいてタダで貸すものです。「A君だからタダで貸したのに、A君が死んだら見ず知らずの相続人がタダで住み続ける」というのは貸主にとって酷です。
したがって、使用貸借は借主の死亡によって終了し、相続されません
(※賃貸借契約は、借主が死亡しても相続人に引き継がれます。この違いが頻出です。)
なお、「貸主」が死亡した場合は終了しません(貸主の相続人が貸主の地位を引き継ぎます)。

(4) 使用貸借の解除(598条)

期間も目的も定めていなかった場合、貸主は「いつでも」契約を解除して返還を求めることができます。
また、目的は定めたが期間を定めていなかった場合、目的に従い使用収益をするのに「足りる期間を経過したとき」は、貸主は解除できます。

(5) 収去義務と原状回復(599条)

契約が終わったら、借主は借りた物を元の状態に戻して(原状回復)返さなければなりません。
自分が取り付けたエアコンなどは取り外す(収去する)義務があります。
ただし、壁に塗ったペンキのように「分離できないもの」や「分離するのに過分な費用がかかるもの」は、そのまま返せばOKです。

【期間制限(600条)】
貸主から借主への損害賠償請求(部屋を汚された等)や、借主から貸主への費用償還請求(有益費を払って等)は、貸主が返還を受けた時から「1年以内」にしなければなりません。

3. 消費貸借・使用貸借・賃貸借の比較まとめ

試験直前には、この表で頭を整理してください。

項目 消費貸借(お金等) 使用貸借(タダ借り) 賃貸借(有料借り)
対価 原則:無償(特約で有償) 無償 有償(賃料必須)
成立要件 原則:要物
例外:書面なら諾成
諾成
(書面なしは受取まで解除可)
諾成
通常の必要費 借主負担 貸主負担
借主の死亡 相続される 終了する(相続されない) 相続される

4. 実戦問題で確認!

問1:書面でする消費貸借
消費貸借契約に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはどれか。
1. 消費貸借契約は、当事者の合意のみで成立する諾成契約が原則であり、金銭その他の物の引渡しは契約の成立要件ではない。
2. 書面でする消費貸借契約は、金銭その他の物の引渡しがなくても成立するが、借主は、貸主から当該物を受け取るまでであれば、いつでも契約を解除することができる。
3. 書面でする消費貸借契約において、借主が貸主から金銭を受け取る前に、貸主が破産手続開始の決定を受けた場合、当該契約はその効力を失う。
4. 無利息の消費貸借契約において、貸主が引き渡した物に隠れた瑕疵があった場合、貸主は常に代替物を引き渡す義務を負う。
5. 消費貸借契約において返還の時期を定めなかった場合、貸主はいつでも直ちに返還を請求することができ、借主は直ちに返還しなければならない。
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正解 2

解説:

1. 誤り。消費貸借は原則として「要物契約」です(587条)。

2. 正しい。書面でする消費貸借の特則(借主の解除権)です(587条の2第2項)。

3. 誤り。効力を失うのは、「当事者の一方」が破産手続開始の決定を受けた場合です。貸主の破産でも借主の破産でも効力を失います(587条の2第3項)。※選択肢の記述は「貸主が破産した場合」に限定しているように読めるため、より正確な2が正解となります。(※厳密には3も間違いとは言い切れませんが、2が最も適切な条文知識です。)

4. 誤り。無利息の場合は、「特定した時の状態(現状)」で引き渡せば足ります(590条1項)。

5. 誤り。返還時期の定めがない場合、貸主は「相当の期間を定めて」催告しなければなりません(591条1項)。

問2:使用貸借の性質
使用貸借契約に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし妥当でないものはどれか。
1. 使用貸借契約は、当事者の合意のみで成立する諾成契約であるが、書面によらない使用貸借については、貸主は、借主が借用物を受け取るまで契約を解除することができる。
2. 借主は、借用物の通常の必要費を負担しなければならないが、特別の必要費や有益費については、貸主に対してその償還を請求することができる。
3. 使用貸借契約は、借主が死亡したことによって終了するが、貸主が死亡した場合には終了せず、貸主の地位は相続人に承継される。
4. 当事者が使用貸借の期間も使用および収益の目的も定めなかった場合、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
5. 借主が借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合、使用貸借が終了したときは、借主はこれを収去する義務を負うが、分離することができない物であっても必ず収去しなければならない。
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正解 5

解説:

1, 2, 3, 4はすべて正しい記述です。

5. 妥当でない。分離することができない物(壁に塗ったペンキなど)や、分離するのに過分の費用を要する物については、収去する義務を負いません(599条1項ただし書)。

問3:契約の比較
AがBに対して自己所有の自動車を引き渡す契約を締結した。この契約の性質に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. AがBに自動車を無償で貸し渡し、Bが後日その自動車そのものを返還する契約である場合、これは消費貸借契約に該当する。
2. AがBに自動車を無償で貸し渡し、Bが後日その自動車そのものを返還する契約である場合、Bが自動車のガソリン代やオイル交換代を支出したときは、BはAに対してその費用の償還を請求することができる。
3. AがBに自動車を無償で譲り渡す契約を書面によらずに締結した場合、Aは、自動車をBに引き渡した後であっても、いつでも契約を解除することができる。
4. AがBに自動車を有償(賃料月額5万円)で貸し渡し、Bが後日その自動車そのものを返還する契約である場合、Bが死亡しても契約は終了せず、Bの相続人が賃借人の地位を承継する。
5. AがBに自動車を売却し、Bが代金100万円を支払う義務を負っている場合において、AB間でこの100万円を消費貸借の目的とする旨を合意したとしても、実際に金銭の授受がなければ消費貸借契約は成立しない。
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正解 4

解説:

1. 誤り。借りた物「そのもの」を返すのは使用貸借(または賃貸借)です。消費貸借は「消費して、同種同等の別の物を返す」契約です。

2. 誤り。使用貸借におけるガソリン代等の「通常の必要費」は、借主(B)の負担となります(595条1項)。

3. 誤り。書面によらない贈与であっても、「履行が終わった部分(引渡し後)」については解除できません(550条ただし書)。

4. 正しい。有償で借りる契約は「賃貸借」です。賃貸借は借主の死亡によって終了せず、相続されます。

5. 誤り。既存の債務を消費貸借の目的に切り替える合意を「準消費貸借」といい、実際の金銭授受がなくても有効に成立します(588条)。

5. まとめと学習のアドバイス

消費貸借と使用貸借は、賃貸借との「比較」で覚えるのが最も効率的です。

  • 成立要件:消費貸借は原則「要物」、使用貸借・賃貸借は「諾成」。
  • 費用負担:使用貸借の「通常の必要費」は借主負担(タダで借りてるから)。
  • 借主の死亡:使用貸借は「終了する(人間関係重視)」、賃貸借は「相続される(財産権重視)」。

特に「書面でする消費貸借」と「使用貸借の諾成契約化」は、2020年民法改正の重要ポイントです。旧法の知識(どちらも要物契約だった)を引きずらないように、最新のルールをしっかりインプットしておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ「書面でする消費貸借」だけが諾成契約になったのですか?
現代のビジネスでは、銀行からの融資など「将来確実にお金を借りられる」という約束(合意)自体に法的な拘束力を持たせるニーズが高まったからです。書面を作成する時点で当事者は慎重に検討しているはずなので、お金を渡す前でも契約を成立させてよい(諾成契約)とされました。
Q2. 使用貸借で、貸主が死亡した場合はどうなりますか?
借主が死亡した場合は契約が終了しますが、貸主が死亡した場合は終了しません。貸主の地位は相続人に引き継がれます。借主は「タダで使わせてもらう」という強い利益を受けているため、貸主が死んだからといって急に追い出されるのは酷だからです。
Q3. 準消費貸借のメリットは何ですか?
例えば、売買代金の未払いがある場合、そのままでは単なる「売買代金債権」ですが、これを準消費貸借で「借金(貸金債権)」に切り替えることで、新たに利息を定めたり、連帯保証人をつけたり、返済期日を明確に設定し直したりすることが容易になります。実務上、債権回収を確実にするためによく使われるテクニックです。

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