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講義17:【行政手続法】不利益処分を完全攻略!聴聞と弁明の使い分け

「営業停止処分」や「免許取消処分」など、国民にとってダメージの大きい「不利益処分」
いきなりこんな処分が届いたら、誰だって「言い分を聞いてくれ!」と思いますよね。

行政手続法は、不利益処分を行う前に、相手方に言い訳のチャンス(意見陳述の機会)を与えることを義務付けています。
しかし、その方法は「聴聞(ちょうもん)」「弁明(べんめい)の機会の付与」の2種類があり、どちらが行われるかは処分の重さによって決まります。

この「使い分け」や「例外的に手続を省略できる場合」は、行政書士試験の記述式や多肢選択式で頻出の論点です。
今回の講義では、不利益処分の事前手続の流れと重要ポイントを、図解イメージとともに徹底解説します。

💡 この記事で学べること

  • 処分基準の設定義務(努力義務)と公表義務
  • 「聴聞」と「弁明の機会の付与」の明確な振り分け基準
  • 意見陳述手続を省略できる「緊急時」などの例外ケース
  • 理由提示の程度に関する重要判例(一級建築士免許取消事件)

1. 不利益処分の全体像

不利益処分を行う際の手続きは、大きく分けて以下の3ステップで進みます。

  1. 事前準備:処分基準の設定(努力義務)
  2. 意見陳述手続:聴聞または弁明の機会の付与(法的義務)
  3. 処分の決定:理由の提示(法的義務)

特に重要なのは、「意見陳述手続」の振り分けです。重い処分には手厚い「聴聞」、軽い処分には簡易な「弁明」が用意されています。

2. 処分基準の設定と公表(12条)

「どんな悪いことをしたら、どれくらいの処分を受けるのか」という基準(処分基準)についてです。

(1) 設定義務と公表義務

行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければなりません(努力義務)。

💡 審査基準との違い(最重要)

審査基準(申請に対する処分):設定も公表も「法的義務」
処分基準(不利益処分):設定も公表も「努力義務」

なぜ処分基準は努力義務なのか?
不利益処分の原因となる事実(違反行為など)は千差万別で、あらかじめ基準を作るのが難しい場合があるからです。また、基準を公表すると「ここまでは違反しても大丈夫」という脱法行為を招く恐れがあるためです。

(2) 基準の内容

処分基準を定める場合は、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければなりません(12条2項)。

3. 意見陳述手続(聴聞と弁明の使い分け)

不利益処分をする場合、原則として相手方に意見を言うチャンスを与えなければなりません(13条1項)。
その方法は、処分の重さによって以下の2つに分かれます。

(1) 聴聞(ちょうもん)が必要な場合

相手方へのダメージが大きい、重い処分を行う場合の手続きです。口頭で言い分を言えるなど、手厚い保護があります。

【対象となる処分】

  1. 許認可等を取り消す処分
    (例:営業許可の取消し、医師免許の取消し)
    ※「停止」は含まれません。
  2. 資格・地位を直接剥奪する処分
    (例:解職命令)
  3. 役員の解任・除名を命ずる処分
    (名あて人が法人の場合)
  4. その他、行政庁が相当と認める場合
💡 覚え方

「取消し・剥奪・解任・除名」といった、息の根を止めるような処分は聴聞です。
逆に、「営業停止」や「業務改善命令」などは、まだ生き残れるので聴聞ではありません。

(2) 弁明の機会の付与が必要な場合

聴聞に該当しない、比較的軽い処分を行う場合の手続きです。
原則として書面審理で行われます。

【対象となる処分】

  • 許認可等の停止処分(営業停止など)
  • 金銭納付命令
  • 改善命令
  • その他、聴聞対象以外のすべての不利益処分

(3) 手続を省略できる場合(例外)

以下の場合には、聴聞も弁明も行わずに、いきなり不利益処分をすることができます(13条2項)。

  1. 公益上、緊急に処分する必要がある場合
    (例:食品衛生法違反で食中毒が拡大しそうな時の営業禁止処分)
  2. 資格の喪失が明白な場合
    (例:欠格事由である「禁錮以上の刑」が確定したことが判決書で明らかな場合)
  3. 基準未達が数値で明らかな場合
    (例:検査の結果、基準値を下回っていることが計測で明らかな場合)
  4. 金銭の額を確定する処分など
    (例:納付すべき金額を決めるだけの処分。数が多く定型的だから)
  5. 著しく軽微な処分
    (政令で定めるもの)

4. 理由の提示義務(14条)

不利益処分をする場合、なぜその処分をするのか「理由」を示さなければなりません。

(1) 提示の要件

  • 時期:処分と同時に。
  • 方法:書面で処分するときは、理由も書面で示さなければならない。

(2) 提示の程度(判例知識)

単に「法〇条違反のため」と書くだけでいいのでしょうか?
最高裁は、理由提示の目的(行政の慎重な判断の担保と、争訟提起の便宜)に照らし、以下のように判断しています。

重要判例:一級建築士免許取消処分事件(最判平23.6.7)

【事案】
耐震偽装事件に関与した建築士に対し、国交大臣が免許取消処分を行いました。通知書には「設計内容を偽った」としか書かれていませんでした。

【判旨】
処分の原因となる事実関係や、処分の根拠法条、処分基準の適用関係などを具体的に示し、「いかなる事実に基づき、いかなる法規を適用して処分がされたのか」を処分の名あて人が知ることができる程度に記載しなければならない。
本件の記載は不十分であり、理由提示の不備として違法(取消し)である。

💡 理由の差替え(追記)

理由提示が不十分だった場合、後から裁判で「実はこういう理由もありました」と追加・変更(差替え)することは許されるでしょうか?
判例は、原則として許されないとしています(当初の理由提示の不備という違法性は治癒されない)。

(3) 例外(緊急時)

緊急の必要がある場合は、とりあえず理由を示さずに処分できます。
ただし、処分後相当の期間内に、理由を示さなければなりません(事後提示)。

5. 実戦問題で確認!

問1:処分基準の設定と公表
行政手続法における処分基準に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 行政庁は、処分基準を定めなければならず、これを定めたときは、行政上特別の支障があるときを除き、公にしておかなければならない。
2. 行政庁は、処分基準を定めるよう努めなければならないが、これを定めたときは、公にしておかなければならない。
3. 行政庁は、処分基準を定めるよう努めなければならず、これを公にしておくよう努めなければならない。
4. 行政庁は、処分基準を定めなければならないが、これを公にしておくかどうかは行政庁の裁量に委ねられている。
5. 処分基準の設定および公表は、申請に対する処分の審査基準と同様に、いずれも法的義務とされている。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

処分基準の設定も公表も、ともに「努力義務」です(12条1項)。
1. 誤り。法的義務ではありません。

2. 誤り。公表も努力義務です。

3. 正しい。条文通りです。

4. 誤り。設定は努力義務です。

5. 誤り。審査基準(法的義務)とは異なります。

問2:意見陳述手続の種類
次の不利益処分のうち、行政手続法の規定により、原則として「聴聞」を行わなければならないものはどれか。
1. 飲食店に対する3日間の営業停止処分
2. 建築基準法違反の建築物に対する除却命令
3. 医師法に基づく医師免許の取消処分
4. 廃棄物処理法に基づく改善命令
5. 放置違反金納付命令
正解・解説を見る

正解 3

解説:

聴聞が必要なのは「許認可等の取消し」「資格・地位の剥奪」「役員の解任・除名」です。
1. 停止処分なので弁明。
2. 是正命令(作為義務)なので弁明。
3. 正しい。免許の取消しなので聴聞。
4. 改善命令なので弁明。
5. 金銭納付命令なので弁明(または省略)。

問3:理由提示の程度
不利益処分の理由提示に関する最高裁判所の判例(最判平23.6.7)の趣旨として、妥当なものはどれか。
1. 不利益処分の理由提示は、処分の根拠となる法令の条文を示すだけで足り、具体的な事実関係まで示す必要はない。
2. 理由提示が不十分であったとしても、処分の要件となる事実が存在していれば、その処分は適法であり、取消しの対象とはならない。
3. 理由提示の程度は、処分の名あて人が、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がされたのかを知り得るものでなければならない。
4. 理由提示に不備があった場合でも、後の取消訴訟において行政庁が理由を追加・修正すれば、当初の処分の瑕疵は治癒される。
5. 処分基準が公表されている場合には、単に処分基準の適用結果を示すだけで足り、個別の事情についての説明は省略することができる。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 妥当でない。根拠条文だけでは不十分です。

2. 妥当でない。理由提示不備は手続上の瑕疵として、それだけで取消事由になります。

3. 妥当である。判例の規範そのものです。

4. 妥当でない。理由の差替えや追完による瑕疵の治癒は原則として認められません。

5. 妥当でない。処分基準がある場合でも、どの事実が基準に該当したかを具体的に示す必要があります。

6. まとめと学習のアドバイス

不利益処分の分野は、以下の「対比」をマスターすれば得点源になります。

  • 審査基準(法的義務) vs 処分基準(努力義務)
  • 聴聞(重い処分・口頭) vs 弁明(軽い処分・書面)

特に「聴聞」の対象となる処分(取消し・剥奪・解任・除名)は、語呂合わせなどで確実に暗記しましょう。それ以外は基本的に「弁明」です。
また、理由提示の判例(一級建築士事件)は、記述式で「どのような理由提示が必要か?」と問われる可能性があるので、「いかなる事実に基づき、いかなる法規を適用して…」というフレーズを書けるようにしておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ「営業停止」は聴聞ではなく弁明なのですか?
営業停止は、期間が過ぎればまた営業できるため、免許取消し(永久に失う)に比べれば不利益の程度が小さいと考えられているからです。ただし、行政庁が「これは重大だ」と判断すれば、裁量で聴聞を行うことも可能です(13条1項1号ニ)。
Q2. 理由提示を忘れたら、処分は無効ですか?取消しですか?
原則として「取消し」の原因となります(無効まではいかないのが一般的)。ただし、理由提示制度の趣旨を没却するような重大な不備であれば無効になる可能性もありますが、試験対策上は「違法として取り消される(取消事由)」と覚えておけば十分です。
Q3. 聴聞と弁明の最大の違いは何ですか?
審理の方式です。聴聞は「口頭」で、主催者(裁判官役)の前で直接言い分を言えます。弁明は原則「書面」提出のみです。聴聞の方が、対面で反論できる分、手厚い手続きと言えます。

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