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講義43:【地方自治法】議会の運営ルール!招集・定足数・表決数を完全攻略

「地方議会って、いつ開かれているの?」「多数決で決まるっていうけど、過半数でいいの?」
ニュースで議会の様子を見ることはあっても、その裏側にある厳格な運営ルールまでは意外と知らないものです。

地方自治法における「議会の運営」は、数字(定足数や表決数)や権限の所在(誰が招集するか)が細かく規定されており、行政書士試験の択一式問題で頻繁に狙われるポイントです。
特に、「特別多数決」が必要なケースや、「臨時会の招集請求」の手続きは、正確に暗記していないと正解できません。

今回の講義では、議会の招集から閉会までのルール、そして議決に必要な要件について、比較表や具体例を使いながら徹底解説します。

💡 この記事で学べること

  • 定例会と臨時会の違い、通年会期制の仕組み
  • 長が臨時会を招集しない場合、議長が招集できる例外
  • 「秘密会」を開くための厳格な要件
  • 試験に出る「特別定足数」と「特別多数決」の完全リスト
  • 議員が自分に関係する議案に参加できない「除斥」制度
  • 本試験レベルの多肢選択式問題による実戦演習

1. 議会の招集と会期

議会は勝手に集まって会議を始めるわけではありません。法的な手続きに則って「招集」され、「会期」の間だけ活動するのが原則です。

(1) 招集権者(原則と例外)

議会を招集する権限は、原則として「長(知事・市町村長)」にあります(101条1項)。
議長ではありません。ここが最初のひっかけポイントです。

【招集の告示期限】
長は、開会の日前に以下の期間を置いて告示しなければなりません(緊急時は短縮可)。
・都道府県・市:7日前まで
・町村:3日前まで

(2) 定例会と臨時会

種類 開催時期 扱える案件
定例会 毎年、条例で定める回数招集される。
(通常は年4回:3月、6月、9月、12月)
すべての案件を審議可能。
臨時会 必要がある場合に、その都度招集される。 原則として、長があらかじめ告示した事件に限られる。
(※ただし、議会の同意があれば他の事件も審議可能)
💡 通年会期制(102条の2)

条例で定めれば、定例会・臨時会という区分を廃止し、「1年(条例で定める日から翌年の前日まで)」を会期とすることも可能です。
この場合、長は招集する必要がなく、議長が会議を開く日(定例日)を決めたり、必要に応じて会議を開いたりします。

(3) 臨時会の招集請求(重要)

長が招集しないと議会が開けないのでは、議会側のチェック機能が働きません。
そこで、議会側から長に対して「臨時会を開いてくれ」と請求する権利が認められています。

【請求できる人】
1. 議長(議会運営委員会の議決を経て)
2. 議員(議員定数の4分の1以上の者)

【長が無視した場合の特例】
請求があった日から20日以内に長が招集しないときは、「議長」が臨時会を招集することができます(101条5項)。
※これは平成24年改正で追加された、議会の自律権を強化する重要な規定です。

2. 議会の運営原則

議会が開かれた後の運営ルールについて見ていきましょう。

(1) 会議公開の原則(115条)

地方議会の会議は、原則として「公開」しなければなりません(傍聴の自由)。
しかし、プライバシーに関わる案件など、公開が適当でない場合は「秘密会」を開くことができます。

【秘密会の要件】
以下の2つのステップが必要です。
1. 発議:議長 または 議員3人以上
2. 議決:出席議員の3分の2以上の多数

💡 注意点

「過半数」ではなく「3分の2以上」という特別多数決が必要です。密室政治を防ぐため、ハードルが高く設定されています。

(2) 会期不継続の原則(119条)

会期中に議決に至らなかった案件(審議未了)は、次の会期には引き継がれず、廃案となります。
ただし、議決によって「閉会中の継続審査」とすれば、次の会期でも審議を続けることができます。

(3) 一事不再議の原則

一度議決された事件は、同じ会期中には再び審議・議決することはできません(地方自治法には明文規定はありませんが、会議規則の標準として一般に認められています)。

3. 定足数と表決数(数字の暗記必須!)

議会が有効に成立し、意思決定をするためには、一定数以上の議員の出席と賛成が必要です。
原則と例外(特別多数決)をしっかり区別しましょう。

(1) 原則的なルール

  • 定足数(ていそくすう)
    議員定数の半数以上の出席が必要です(113条)。
  • 表決数(ひょうけつすう)
    出席議員過半数で決します(116条1項)。
    ※「議員定数」の過半数ではない点に注意!

【可否同数の場合】
賛成と反対が同数の場合は、「議長」が決します(議長決裁権)。
※この場合、議長は「議員としての1票」は持たず、最後に決める権限だけを持ちます。

(2) 例外:特別定足数と特別多数決

重要な案件については、より慎重な審議と多くの賛成が求められます。
以下の表は試験直前に必ず確認してください。

案件 定足数(出席要件) 表決数(賛成要件)
原則 定数の1/2以上 出席議員の過半数
秘密会の議決 定数の1/2以上 出席議員の2/3以上
議員の資格決定
(被選挙権の有無など)
定数の1/2以上 出席議員の2/3以上
除名
(最も重い懲罰)
定数の2/3以上 出席議員の3/4以上
議員・長の解職請求
(リコール投票の結果)
投票総数の過半数
(※議会の議決ではない)
主要公務員の解職
(副知事など)
定数の2/3以上 出席議員の3/4以上
長の不信任決議 定数の2/3以上 出席議員の3/4以上
💡 覚え方のコツ

「クビにする系(除名、解職、不信任)」は、定数2/3出席・出席3/4賛成という「一番厳しい要件」
「秘密会」「資格決定」は、出席2/3賛成という「中くらいの要件」
・それ以外は過半数。

4. 議案の提出と除斥

(1) 議案の提出権者

議会で審議するネタ(議案)を出せるのは誰でしょうか?

  • :予算、条例案など。
    「予算」を提出できるのは長だけです(議員は出せません)。
  • 議員:条例案、意見書案など。
    ※提出には、議員定数の12分の1以上の賛成者が必要です(112条)。
  • 委員会:所管事務について提出可能。

(2) 除斥(じょせき)

議員が、自分や家族の個人的な利益に関わる議案の審議に参加することを禁止する制度です(117条)。
公正さを保つためです。

【除斥の対象となる事件】
・自己または父母、祖父母、配偶者、子、孫、兄弟姉妹の一身上に関する事件
・自己または上記親族の従事する業務に直接の利害関係のある事件

【効果】
議事に参与できません(退場しなければなりません)。
ただし、「議会の同意」があれば、会議に出席し、発言することができます(議決には加われません)。

💡 判例:除斥違反の効力

除斥されるべき議員が参加してなされた議決は、その議員の参加が議決の結果に影響を及ぼさない場合(その1票を除いても可決される場合など)を除き、違法・無効となります。

5. 会議録(123条)

議会の内容は記録に残さなければなりません。

  • 作成義務者:議長(事務局長等に作成させる)。
  • 署名:議長 + 議会で定めた2人以上の議員。
    (※全員の署名は不要です。)
  • 公開:住民は会議録の閲覧を請求できます。

6. 実戦問題で確認!

問1:議会の招集
普通地方公共団体の議会の招集に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 議会の招集権限は議長にあり、長は議長に対して招集を請求することができる。
2. 臨時会は、必要がある場合において、その事件に限り招集されるものであり、長があらかじめ告示した事件以外は審議することができない。
3. 議員定数の4分の1以上の者から臨時会の招集請求があった場合、長は請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならない。
4. 長が上記の期間内に臨時会を招集しないときは、議員定数の4分の1以上の者は、自ら臨時会を招集することができる。
5. 通年会期制を採用する場合、定例会および臨時会の区別はなくなり、議長が会議を開く日を定めるが、条例で定期的に会議を開く日(定例日)を定めなければならない。
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正解 5

解説:

1. 誤り。招集権者は原則としてです。

2. 誤り。原則は告示事件に限られますが、議会の同意があれば他の事件も審議できます(102条5項)。

3. 誤り。20日以内に「招集しなければならない」とされていますが、正確には「招集の告示」等を行う義務です。しかし、より明確な正解は5です。

4. 誤り。長が招集しない場合、招集できるのは「議長」です(101条5項)。請求した議員ではありません。

5. 正しい。通年会期制の規定(102条の2)通りです。

問2:特別多数決
次の議決事項のうち、出席議員の4分の3以上の同意が必要とされるものはどれか。
1. 秘密会の開催
2. 議員の資格決定(被選挙権の有無など)
3. 議員の除名
4. 条例の制定・改廃
5. 決算の認定
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正解 3

解説:

1. 秘密会:出席議員の2/3以上。
2. 資格決定:出席議員の2/3以上。
3. 除名:出席議員の3/4以上(かつ定数の2/3以上の出席)。
4. 条例:過半数。
5. 決算:過半数。

問3:議会の運営
議会の運営に関する次の記述のうち、地方自治法の規定に照らし妥当でないものはどれか。
1. 議長および議員は、自己の配偶者の一身上に関する事件については、議事に参与することができないが、議会の同意があったときは会議に出席し発言することができる。
2. 議会の会議は公開しなければならないが、議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
3. 議員が予算を除く議案を提出するには、議員定数の12分の1以上の者の賛成が必要である。
4. 議会において可否同数となった場合、議長は議決権を行使して可否を決するが、この場合、議長は議員としての表決権も有する。
5. 会期中に議決に至らなかった事件は、後会に継続しないのが原則であるが、委員会に付託された事件については、議会の議決により閉会中の継続審査が可能である。
正解・解説を見る

正解 4

解説:

1. 妥当である。除斥の規定(117条)です。

2. 妥当である。秘密会の要件(115条1項)です。

3. 妥当である。議案提出権の要件(112条)です。

4. 妥当でない。議長が決裁権を行使する場合、議長は「議員としての議決権(1票)」を有しません(116条2項)。二重に投票できるわけではありません。

5. 妥当である。会期不継続の原則と例外(109条8項)です。

7. まとめと学習のアドバイス

議会の運営は、数字の暗記が合否を分けます。

  • 招集:長が原則。臨時会請求は1/4。無視されたら議長。
  • 定足数:原則半数。除名・不信任等は2/3。
  • 表決数:原則過半数。秘密会・資格は2/3。除名・不信任等は3/4。
  • 提出権:議員は1/12。予算は長のみ。

特に「除名」や「不信任」といった重い処分には、最も厳しい要件(定数2/3出席+出席3/4賛成)が必要だというイメージを持っておくと、忘れにくいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 議長に議決権はないのですか?
はい、原則としてありません。議長は公平な立場で議事を進行する役目なので、通常の採決には加わりません。ただし、賛成と反対が同数(可否同数)になった場合に限り、最終決定権(議長決裁権)を行使します。つまり、議長は「1票」を持っているわけではなく、「同点の時の決定権」だけを持っています。
Q2. 通年会期制のメリットは何ですか?
従来の定例会・臨時会制では、閉会中は議会活動(委員会の審査など)が原則としてできませんでした(専決処分が増える原因にもなります)。通年会期制にすると、1年中いつでも会議を開いたり委員会を開催したりできるため、災害時などの緊急対応がしやすくなり、議会の監視機能が強化されるというメリットがあります。
Q3. 専決処分(せんけつしょぶん)とは何ですか?
本来は議会の議決が必要な事項(条例や予算など)を、緊急の場合などに長が代わって決めてしまうことです(179条)。
・議会を招集する暇がないとき
・議会が成立しないとき(定足数不足など)
・議会が議決しないとき
などに行えますが、次の議会で「承認」を求めなければなりません(不承認でも効力は消えませんが、長は政治的責任を負います)。

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