PR

講義18:【行政手続法】聴聞手続の流れと文書閲覧請求権を完全図解

前回の講義では、不利益処分を行う前に「聴聞(ちょうもん)」か「弁明の機会の付与」のどちらかを行う必要があることを学びました。
今回は、その中でも特に手厚い手続きである「聴聞」の具体的な流れについて深掘りします。

「聴聞」と聞くと、裁判のような厳格なシーンを思い浮かべるかもしれません。しかし、行政手続法上の聴聞には、独自のルールや権利(文書閲覧請求権など)が細かく定められています。

「代理人を選ぶのに許可はいる?」「文書閲覧はいつまでできる?」「弁明手続でも閲覧請求はできる?」
これらの問いに即答できない場合は、本試験で失点する可能性が高いです。手続きの時系列に沿って、受験生が躓きやすいポイントを整理していきましょう。

💡 この記事で学べること

  • 聴聞の通知から終結までのタイムライン
  • 記述式で狙われる「文書閲覧請求権」の要件と期間
  • 「代理人」と「補佐人」の選任ルールの違い
  • 聴聞調書・報告書の役割と行政庁の参酌義務
  • 「弁明の機会の付与」で準用されない規定(閲覧請求権など)

1. 聴聞手続の流れ(スタートからゴールまで)

聴聞は、行政庁が一方的に処分を決めるのではなく、相手方の言い分をしっかり聞いてから判断するためのプロセスです。全体像は以下のようになります。

  1. 通知:行政庁から「あなたを聴聞に呼びます」と知らせる。
  2. 審理:主宰者の進行のもと、意見を述べたり証拠を出したりする。
  3. 調書・報告書作成:主宰者が結果をまとめる。
  4. 処分の決定:行政庁が報告書を参考にして処分を決める。

2. 聴聞の通知(15条)

(1) 通知事項と教示

行政庁は、聴聞の期日までに「相当な期間」をおいて、以下の事項を書面で通知しなければなりません。

  • 予定される不利益処分の内容と根拠法令
  • 不利益処分の原因となる事実
  • 聴聞の期日・場所
  • 担当組織の名称・所在地

また、この通知書面には、相手方の権利(出頭して意見を述べること、証拠を出せること、文書閲覧請求ができること)を教示(教えてあげること)しなければなりません。

💡 判例知識

聴聞の通知をせずに、いきなり聴聞手続を行って不利益処分をした場合、その処分は手続違法として取消事由となります(大阪地判昭55.3.19)。

(2) 所在不明時の「公示送達」

相手方がどこにいるか分からない(所在不明)場合は、通知書を届けることができません。
この場合、行政庁の掲示場に「いつでも通知書を渡すよ」と掲示することで、通知したとみなすことができます(公示送達)。

効力発生時期: 掲示を始めた日から2週間を経過したとき。

3. 聴聞のプレイヤー(主宰者・当事者・参加人)

(1) 主宰者(しゅさいしゃ)

聴聞の司会進行役です。行政庁が指名する職員などが務めます。
【重要】公平性の確保(19条)
公正な審理を行うため、以下の人は主宰者になれません(除斥事由)。
・当該処分の当事者や参加人
・その配偶者や親族
・その他密接な利害関係者
※ただし、「当該処分に関与した行政庁の職員(担当者)」が主宰者になることは禁止されていません(ここが裁判官とは違う点です)。

(2) 当事者と参加人

  • 当事者:処分の名あて人(通知を受けた人)。
  • 参加人:当事者以外の利害関係人(関係人)で、主宰者の許可を得て参加する人。

(3) 代理人と補佐人(比較重要)

当事者は一人で戦うのが不安な場合、助っ人を呼ぶことができます。

種類 役割 選任の許可 権限
代理人 本人に代わって何でもできる人。
(弁護士など)
不要
(自由に選べる)
聴聞に関する一切の行為ができる。
補佐人 本人の横にいてサポートする人。
(専門家など)
必要
(主宰者の許可が要る)
本人の補佐にとどまる。
💡 覚え方

「代理人は本人そのものだから許可不要、補佐人は付き添いだから許可が必要」と覚えましょう。
なお、代理人の資格は書面で証明する必要があります。

4. 審理における当事者の権利(18条・20条)

ここが聴聞の核心部分です。当事者には防御のために強力な権利が与えられています。

(1) 文書閲覧請求権(18条)〜最重要〜

「行政庁はどんな証拠を持っているんだ?」これを知らないと反論できません。
そこで、当事者(および参加人)は、資料の閲覧を求めることができます。

  • 請求できる期間:聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時まで
    (※処分が下されるまでではありません。審理が終わるまでです。)
  • 対象:調査結果の調書、その他の証拠資料。
  • 拒否できる場合:第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるとき。
  • 許可の要否:閲覧請求自体に主宰者の許可は不要です(権利だから)。

(2) 審理の方式(20条)

聴聞は、原則として「非公開」で行われます(個人のプライバシーを守るため)。ただし、行政庁が相当と認めれば公開できます。

【当事者ができること】

  • 意見を述べる(冒頭で行政庁職員から説明を受けた後)。
  • 証拠書類等を提出する。
  • 行政庁の職員に対して質問を発する(ただし、主宰者の許可が必要)。
💡 陳述書による代用(21条)

聴聞の期日に出頭できない場合、代わりに「陳述書(言いたいことを書いた紙)」や証拠書類を提出することができます。

5. 聴聞の終結と決定(24条・26条)

(1) 聴聞調書と報告書

審理が終わると、主宰者は以下の2つの書類を作成し、行政庁に提出します。

  • 聴聞調書:審理の経過(誰が何を言ったか)を記録したもの。
  • 報告書:当事者の主張に理由があるかどうか(処分すべきかどうか)の主宰者の意見を書いたもの。

※当事者は、これらの書類を閲覧することができます(24条4項)。

(2) 処分の決定(参酌義務)

行政庁は、不利益処分をするかどうか決める際、主宰者が作成した聴聞調書と報告書を「十分に参酌(さんしゃく)」しなければなりません(26条)。
「参酌」とは、「参考にするけど拘束はされない」という意味ですが、「十分に」とあるため、合理的な理由なく無視することは違法となる可能性があります。

(3) 審査請求の制限(27条)

ここが少しややこしい点です。

  • × できない:聴聞手続の中でされた処分(例:主宰者が質問を許可しなかった、閲覧を拒否したなど)に対する審査請求。
  • 〇 できる:聴聞を経て最終的に下された「不利益処分(免許取消など)」に対する審査請求。

つまり、手続きの途中でいちいち文句を言うな、文句があるなら最後の処分が出てからまとめて言え、ということです。

6. 弁明の機会の付与(簡易な手続き)

軽い処分(営業停止など)の場合に行われる「弁明の機会の付与」は、聴聞と比べて何が違うのでしょうか?

(1) 書面審理が原則(29条)

聴聞は「口頭」で言いたいことを言えましたが、弁明は原則として「弁明書」という書面を提出して行います。
(※行政庁が認めれば口頭でもOKです。)

(2) 準用される規定・されない規定(試験のツボ)

聴聞のルールのうち、弁明にも使われるもの(準用あり)と、使われないもの(準用なし)の区別が頻出です。

項目 聴聞 弁明(準用の有無)
通知の公示送達 あり あり(所在不明なら掲示でOK)
代理人の選任 あり あり(代理人に弁明書を出させてもOK)
文書閲覧請求権 あり なし(ここが最大の違い!)
利害関係人の参加 あり なし
主宰者・報告書 あり なし(行政庁が直接判断する)
💡 なぜ弁明には閲覧請求権がない?

弁明は軽い処分に対する簡易・迅速な手続きだからです。わざわざ資料を見せて議論するほどではない、という割り切りがあります。
(※ただし、条文上権利がないだけで、行政庁が任意に見せてくれることはあります。)

7. 実戦問題で確認!

問1:文書閲覧請求権
行政手続法に定める聴聞における文書閲覧請求権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 当事者等は、聴聞の通知があった時から当該不利益処分がされるまでの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書等の閲覧を求めることができる。
2. 行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときは、閲覧請求を拒むことができるが、その場合であっても、閲覧を拒む理由を書面で示さなければならない。
3. 当事者等が閲覧を請求することができる資料は、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料に限られ、行政庁が不利益処分をするかどうかの判断のために作成した内部的な検討資料は含まれない。
4. 聴聞の主宰者は、当事者等から閲覧請求があった場合、閲覧の日時及び場所を指定することができるが、閲覧を許可するかどうかの権限は行政庁にある。
5. 弁明の機会の付与の手続においても、当事者の権利保護の観点から、聴聞における文書閲覧請求権の規定が準用されている。
正解・解説を見る

正解 3

解説:

1. 誤り。閲覧できる期間は「聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時まで」です。処分がされるまでではありません。

2. 誤り。閲覧拒否の理由を書面で示す義務規定はありません。

3. 正しい。閲覧対象は「原因となる事実を証する資料」です。内部的な決裁文書などは含まれません。

4. 誤り。閲覧請求権は行政庁に対して行使するものであり、主宰者の許可は不要です。日時場所の指定も行政庁が行います。

5. 誤り。弁明手続には文書閲覧請求権の規定は準用されていません(31条)。

問2:聴聞の主宰者と審理
聴聞の主宰者および審理に関する次の記述のうち、行政手続法の規定に照らし妥当でないものはどれか。
1. 聴聞の主宰者は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者がなるが、当該不利益処分の原因となる事実の調査に関与した職員は、主宰者となることができない。
2. 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。
3. 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
4. 主宰者は、当事者の全部又は一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、陳述書等の提出もしない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べる機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
5. 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、聴聞調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌しなければならない。
正解・解説を見る

正解 1

解説:

1. 妥当でない。除斥事由(主宰者になれない人)は、当事者やその親族等です。「処分に関与した職員」は除斥事由に含まれていないため、主宰者になることができます

2. 妥当である。聴聞は原則非公開です。

3. 妥当である。質問には主宰者の許可が必要です。

4. 妥当である。正当な理由なくサボった場合は、そのまま終わらせることができます。

5. 妥当である。十分な参酌義務があります。

問3:弁明手続と準用規定
弁明の機会の付与に関する手続において、聴聞に関する規定が準用されているものはどれか。
1. 文書等の閲覧(資料の閲覧請求権)
2. 利害関係人の参加(参加人)
3. 代理人の選任
4. 審理の公開
5. 聴聞調書及び報告書の作成
正解・解説を見る

正解 3

解説:

弁明手続において準用されているのは、以下の2つのみです(31条)。
代理人の選任(16条)
公示送達(15条3項)
それ以外(閲覧、参加人、公開、調書など)は準用されていません。

8. まとめと学習のアドバイス

聴聞手続は、登場人物と権利関係を整理することが重要です。

  • 主宰者:公平な進行役。処分担当者でもなれる。
  • 閲覧請求権:聴聞の最大の武器。「通知~終結」の期間制限を覚える。
  • 弁明との違い:「弁明には閲覧請求権がない」は超頻出。

特に「弁明手続で準用されるもの(代理人と公示送達のみ)」は、消去法で正解を導くための強力な武器になります。ここを確実に暗記しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 聴聞の主宰者は誰がなるのですか?
通常は、処分を行う行政庁の職員(課長補佐クラスなど)が指名されます。裁判官のような独立した第三者機関ではありません。ただし、公平性を保つため、当事者の親族などはなれませんが、事件の調査を担当した職員がなることは禁止されていません。
Q2. 代理人と補佐人の違いは何ですか?
代理人は本人の代わりに全ての手続きを行える人で、選任に許可は不要です。補佐人は本人の横でアドバイスをする人で、選任(出頭)には主宰者の許可が必要です。「代理人は本人そのもの、補佐人は付き添い」というイメージです。
Q3. なぜ弁明手続では文書閲覧ができないのですか?
弁明手続は、比較的軽い処分(営業停止など)に対して行われる簡易・迅速な手続きだからです。重い処分(聴聞)の場合は、生活の糧を奪われる可能性があるため、証拠を見て反論する権利(閲覧権)が保障されていますが、弁明ではそこまでの負担を行政に課していないのです。

↓行政法の全体像を確認する↓

行政法Webテキスト一覧ページへ戻る
タイトルとURLをコピーしました