PR

講義47:【地方自治法】監査制度を完全攻略!監査委員と外部監査人の違い

「自治体のお金が正しく使われているか、誰がチェックしているの?」
地方自治法では、執行機関(長など)が適正に事務を行っているかを監視するために、独立した機関として「監査委員」を置くことを義務付けています。

さらに、内部の監査委員だけでは「身内びいき」になる恐れがあるため、外部の専門家(公認会計士や弁護士)がチェックする「外部監査制度」も導入されています。

この分野は、「監査委員の定数は?」「包括外部監査が義務付けられている自治体は?」といった細かい知識が問われやすい部分です。
また、住民監査請求(前回学習)とも密接に関わるため、セットで理解しておく必要があります。

今回の講義では、地方自治体のチェック機能である「監査制度」について、監査委員と外部監査人の違いを中心に徹底解説します。

💡 この記事で学べること

  • 監査委員の選任方法、定数、任期のルール
  • 「財務監査(定例監査)」と「行政監査(随時監査)」の違い
  • 包括外部監査契約と個別外部監査契約の決定的な違い
  • 外部監査人になれる資格(税理士はなれる?)
  • 本試験レベルの多肢選択式問題による実戦演習

1. 監査委員制度(内部のチェック役)

監査委員は、地方公共団体の財務や事務の執行を監査するために、すべての普通地方公共団体に必ず置かなければならない執行機関です(195条1項)。
長から独立した地位を持っています。

(1) 選任と組織

監査委員は、長が「議会の同意」を得て選任します(196条1項)。
選任される人の内訳は以下の通りです。

  • 識見を有する者:専門知識を持つ人(公認会計士、税理士、元公務員など)。
  • 議員:議会から選出された人(※条例で「議員を選任しない」とすることも可能です)。

定数(195条2項)

自治体の規模によって定数が決まっています。

自治体の種類 定数 備考
都道府県・政令指定都市 4人 条例で定数を増加することができます。
その他の市町村 2人

任期(197条)

  • 識見選任委員4年
  • 議員選任委員議員の任期による。
💡 兼職禁止

監査委員は、常勤の職員や地方議会議員(議員選任委員を除く)と兼職できません。
また、長や副知事等と「親子・夫婦・兄弟姉妹」の関係にある者は、監査委員になることができません(197条の2)。身内によるなぁなぁの監査を防ぐためです。

(2) 監査委員の職務権限(監査の種類)

監査委員が行う監査には、必ずやらなければならないもの(必要的)と、必要があるときに行うもの(任意的)があります。

① 定例監査(財務監査)〜最重要〜

「財務事務の執行」「経営に係る事業の管理」について行う監査です。

  • 頻度毎会計年度1回以上、期日を定めて行わなければなりません(199条4項)。
  • 対象:お金の使い道や契約などが適正かどうかが中心です。

② 行政監査(事務の執行の監査)

財務に限らず、「事務の執行」全般について行う監査です。

  • 頻度必要があると認めるときに行います(199条2項)。
  • 対象:事務処理が法令に適合しているか、効率的かなどをチェックします。

③ その他の主な監査・審査

  • 決算審査:長から提出された決算書を審査し、意見を付けます(233条2項)。
  • 例月現金出納検査:毎月、現金の出納をチェックします(235条の2)。
  • 住民監査請求監査:住民からの請求に基づいて行います(242条)。
  • 要求・請求監査:議会や長からの要求・請求に基づいて行います。

(3) 監査の手続き

監査委員は、監査のために必要があるときは、関係人の出頭を求めたり、帳簿の提出を求めたりする調査権を持っています(199条8項)。
そして、監査の結果は、議会や長に報告するとともに、「公表」しなければなりません(199条9項)。

💡 合議制と独任制

監査委員は、原則として各委員が独立して権限を行使する「独任制」の機関です。
ただし、監査の結果報告や意見決定などは「合議(話し合い)」で行うこととされています。

2. 外部監査制度(プロによるチェック)

平成9年の改正で導入された制度です。監査委員(内部の人や議員)だけではチェック機能が甘くなりがちなので、外部の専門家(公認会計士、弁護士など)と契約して監査してもらう仕組みです。

(1) 外部監査人の資格

誰でもなれるわけではありません。以下の資格を持つ者と契約します(252条の28)。

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 税理士(※普通地方公共団体が必要と認める場合に限る)
  • 国の会計検査業務経験者など(政令指定)

※議員や職員、その親族などは外部監査人になれません(独立性の確保)。

(2) 包括外部監査契約(ほうかつがいぶかんさ)

「年間を通じて、あなたのプロの視点で自由に監査してください」という契約です。

  • 義務付け対象都道府県、指定都市、中核市
    ※これらの大規模自治体は、必ず包括外部監査契約を結ばなければなりません。
  • その他の市町村条例で定めれば導入できます(任意)。
  • 契約手続き:長が、議会の議決を経て契約します。
  • 内容:特定のテーマに限らず、監査人が必要と認める事項を監査します。

(3) 個別外部監査契約(こべつがいぶかんさ)

「この件について、監査委員ではなく外部のプロに監査してほしい」という場合に、ピンポイントで契約するものです。

  • 要件条例で「個別外部監査ができる」と定めていること。
  • 対象となる請求
    • 事務監査請求(直接請求)
    • 議会・長からの監査請求
    • 住民監査請求
💡 住民監査請求との関係

住民監査請求をする際、住民は「監査委員ではなく、外部監査人に監査してほしい」と求めることができます(個別外部監査)。
ただし、それが認められるには、その自治体に「個別外部監査契約に基づく監査を行うことができる」旨の条例があることが前提です。

3. 監査委員と外部監査人の比較まとめ

試験ではここが狙われます。違いを整理しておきましょう。

項目 監査委員 外部監査人
地位 地方公共団体の執行機関
(特別職の公務員)
自治体と契約を結んだ私人の専門家
設置・契約 全自治体に必置 都道府県・指定都市・中核市は包括外部監査が義務
他は条例で導入。
選任方法 長が議会の同意を得て選任 長が議会の議決を経て契約
定例監査 毎会計年度1回以上行う(義務) (包括外部監査として行う)
関係性 相互に連携し、監査に支障を来さないよう配慮する義務がある。

4. 実戦問題で確認!

問1:監査委員の選任と定数
監査委員に関する次の記述のうち、地方自治法の規定に照らし正しいものはどれか。
1. 監査委員は、普通地方公共団体の長が選任するが、その選任にあたっては、議会の同意を得る必要はない。
2. 監査委員の定数は、都道府県および政令指定都市にあっては4人、その他の市町村にあっては2人と法定されており、条例でこれを変更することはできない。
3. 監査委員は、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(識見選任委員)から選任しなければならず、議員から選任することは認められていない。
4. 識見を有する者のうちから選任される監査委員の任期は4年であるが、議員のうちから選任される監査委員の任期は議員の任期による。
5. 監査委員は、非常勤の特別職であるため、当該普通地方公共団体の常勤の職員と兼職することが認められている。
正解・解説を見る

正解 4

解説:

1. 誤り。長が議会の同意を得て選任します(196条1項)。

2. 誤り。定数は条例で増加することができます(195条2項)。

3. 誤り。原則として議員からも選任します(ただし条例で議員を選任しないことも可)。

4. 正しい。識見委員は4年、議員委員は議員任期によります(197条)。

5. 誤り。常勤職員との兼職は禁止されています(196条3項)。

問2:監査委員の職務
監査委員が行う監査に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1. 監査委員は、毎会計年度少なくとも1回以上期日を定めて、財務に関する事務の執行および経営に係る事業の管理について監査をしなければならない。
2. 監査委員は、必要があると認めるときは、いつでも当該普通地方公共団体の事務の執行について監査することができるが、これは財務に関する事務に限られる。
3. 決算の審査は、監査委員の権限ではなく、議会が選任した外部の公認会計士が行わなければならない。
4. 住民監査請求があった場合、監査委員は直ちに監査を行わなければならず、請求に理由がないと認める場合であっても、監査結果を公表する必要はない。
5. 監査委員は、監査の結果に関する報告を決定し、これを議会および長に提出するが、住民に対して公表する義務まではない。
正解・解説を見る

正解 1

解説:

1. 正しい。これが「定例監査(財務監査)」です(199条4項)。

2. 誤り。必要があると認めるときに行う「随時監査(行政監査)」は、財務に限らず事務の執行全般が対象です(199条2項)。

3. 誤り。決算審査は監査委員の重要な職務です(233条2項)。

4. 誤り。請求に理由がない場合(棄却)でも、その旨を通知し公表しなければなりません(242条5項)。

5. 誤り。監査結果は公表しなければなりません(199条9項)。

問3:包括外部監査と個別外部監査
外部監査制度に関する次の記述のうち、地方自治法の規定に照らし妥当でないものはどれか。
1. 包括外部監査契約を締結しなければならないのは、都道府県、指定都市および中核市であり、その他の市町村は条例で定めることにより締結することができる。
2. 外部監査契約を締結できる者は、弁護士、公認会計士、税理士などに限られ、当該地方公共団体の職員であった者はなることができない。
3. 個別外部監査契約に基づく監査は、住民監査請求や直接請求による事務監査請求など、特定の請求があった場合に、監査委員の監査に代えて行われるものである。
4. 包括外部監査人は、毎会計年度、当該地方公共団体の財務管理等の監査を行うが、そのテーマや対象は監査人が自ら決定する。
5. 外部監査人は、監査を実施するにあたっては、監査委員と相互に連絡を図り、監査委員の監査に支障を来さないよう配慮しなければならない。
正解・解説を見る

正解 2

解説:

1. 妥当である。義務付け対象は都道府県・指定都市・中核市です。

2. 妥当でない。外部監査人の資格には、弁護士・公認会計士等のほか、「地方公共団体において監査等の行政事務に従事した者(実務精通者)」も含まれます(252条の28第2項)。元職員が一律に排除されているわけではありません(ただし、直近まで職員だった場合などの兼職禁止規定はあります)。

3. 妥当である。個別外部監査の定義です。

4. 妥当である。包括外部監査は、監査人が独立してテーマを選定します。

5. 妥当である。監査委員との連携・配慮義務が規定されています(252条の30)。

5. まとめと学習のアドバイス

監査制度は、以下のポイントを整理して覚えましょう。

  • 監査委員:必置。定例監査(財務)は年1回以上。結果は公表。
  • 外部監査:都道府県・指定都市・中核市は「包括」が義務。
  • 資格:弁護士・会計士・税理士(条件付き)。

特に「包括外部監査の義務付け対象(中核市まで含む)」は、平成30年頃の改正で中核市が追加された経緯もあり、試験で狙われやすいポイントです。「大きな自治体はプロの目が必要」とイメージしておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 監査委員は「独任制」ですか「合議制」ですか?
原則として「独任制」です。各委員が独立して権限を行使します。ただし、監査結果の報告や意見の決定などは「合議」で決めることになっています。つまり、「調査は一人ひとりで動けるけど、最終的な結論はみんなで話し合って決める」というハイブリッドな仕組みです。
Q2. 税理士は外部監査人になれますか?
なれますが、条件があります。弁護士と公認会計士は無条件でなれますが、税理士は「普通地方公共団体が必要と認める場合に限り」なることができます(252条の28第1項)。この微妙な違いが選択肢で出ることがあるので注意してください。
Q3. 住民監査請求で「個別外部監査」を求めたら必ずやってくれますか?
いいえ、必ずではありません。まず、その自治体に「個別外部監査契約に基づく監査を行うことができる」という条例がなければなりません。条例があっても、監査委員が「外部監査の必要はない(自分たちで十分だ)」と判断すれば、監査委員による監査になります(ただし、その場合は理由を付して通知・公表する必要があります)。

↓行政法の全体像を確認する↓

行政法Webテキスト一覧ページへ戻る
タイトルとURLをコピーしました